浦和に漂う“閉塞感”「発想がない」 チームが抱く来季への危機感「できていない」

浦和の攻撃停滞にチームが危機感【写真:徳原隆元】
浦和の攻撃停滞にチームが危機感【写真:徳原隆元】

浦和は福岡に0-1で敗れた

 浦和レッズは11月30日のJ1第37節でアビスパ福岡と対戦し、0-1で敗れた。すでに来季に向けた意味合いが強くなると宣言されている中でのゲームは、選手たちがポジティブな印象を語った一方で、なかなか攻撃の圧力が出ないゲームになった。

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 浦和は今季途中でペア・マティアス・ヘグモ監督から昨季限りで退任していたマチェイ・スコルジャ監督への交代を行ったものの、一時は完全にJ1残留争いに足を踏み入れるなどシーズン全体を通してみれば厳しい成績のシーズンになった。すでにJ1残留は決めたが上位争いにはほど遠く、スコルジャ監督は残り2試合を来季に向けた起用や戦術のテストに使うことを明らかにした。

 そのゲームではMF小泉佳穂が5試合ぶりにスタメン出場し、MF渡邊凌磨をボランチ起用。前橋育英高校での同期コンビは前後に入れ替わりながら相手の目先を変えてプレーし、スコルジャ監督も「小泉が渡邊とローテーションしてボランチの位置に入ることは狙いだった。その時(小泉が降りた場面)には渡邊が背後に抜ける予定だった」と話し、練習通りの部分があったと話す。実際に前半30分くらいまではポジションチェンジの多さによるゴチャつきを感じさせる部分はあっても、前線までボールをつないで攻撃し、奪われても敵陣で奪い返すような流れがあった。

 しかし、福岡がポジションチェンジに対応し始めると、次第に最終ラインからのボール運びは危うさを増した。ボールを持ったセンターバックの前に何人もの選手が下がってきてしまい、パスがつながる本数に対して全体が前に進んでいない状態が多くなった。そして、少しのズレからボールロストが生まれやすくなる展開から前半40分に高い位置で奪われての失点を喫してしまう。後半もまた同様に自陣でボールをつなぐ本数は多かったものの、それほど前向きな勢いは出なかった。

 後半27分にMF原口元気からのクロスをゴール前でFW二田理央が合わせたチャンス、試合終了間際に二田が右から入れたボールをMF本間至恩が合わせた場面が決定機と言えたが、どちらの攻撃も少々アバウトなボールを前に入れて、そこでの競り合いそのものやセカンドボールの奪い合いに勝利したところでのチャンスであり、後方で相手のブロックを前に多くのパスを繰り返したのとは違うところから生まれたものだった。

 小泉はこのような状態について「意図してやっているのか、ボール触らなきゃ、つながらなきゃって落ちちゃっているのかが大きな違いだと思う。相手を集めて、蹴って次の反応の勝負にするような準備ができていると有効に働くけど、今は人が掴まれているから助けに行かなきゃで、どんどん全体の構造を見ることなく落ちてきちゃうし、後ろも一個飛ばしてっていう発想がないというか、切り替えが遅かった。全体の構造を見て、ゲームをどう運ぶのかみたいな切り替えができていなかった。それがすごいもったいなかった」と話した。

 スコルジャ監督も「ビルドアップの形がショートパスのみになってしまった。いい形で背後への供給がなくなってしまった」とも話した。その一方で小泉はトータルして「手応え自体は良かった」と話し、原口もまた「僕は内容はすごくポジティブで、結果だけ本当にネガティブなので、ポジティブな内容をなんとか結果につなげたかった」と話した。確かに前半30分くらいまでの敵陣に相手を追い詰めて支配した状態は、特に前線の選手たちにとっては良い形でゲームに関わる場面も多かっただろう。

 ただし、試合の3分の2にあたる60分間かなりの閉塞感に包まれていたのも事実だ。このゲームでもまた、MFサミュエル・グスタフソンを起用しなかった時に不在であることによる存在感が発揮されてしまう側面もあったが、スコルジャ監督が就任してから川崎フロンターレとの45分再開試合を除くと9試合で6得点、無得点試合が5試合という成績がそこにあり、得点力につながるゲーム運びという点で来季への展望を描くのは難しいままだと言わざるを得ないのが浮き彫りになっている。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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