迷走するJ強豪へ喝「楽しんでやってない」 V争い遠のき…ベテランが響かせた“厳しいエール”

興梠慎三がチームに「ピリピリ感」を求めた【写真:徳原隆元】
興梠慎三がチームに「ピリピリ感」を求めた【写真:徳原隆元】

リーグ優勝争いから遠ざかる浦和、引退する興梠慎三が見た現状

 浦和レッズでは、今季限りでFW興梠慎三とDF宇賀神友弥が現役引退することを表明している。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が率いた当時の主力世代が去っていくなか、興梠は「残り5試合だったら、緊張した練習でピリピリした感じでやるのが優勝を争うチーム」だと来季以降へのエールを送った。

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 現在は北海道コンサドーレ札幌で指揮を執るペトロヴィッチ監督が、サンフレッチェ広島を退任して浦和に就任したのは2012年だった。すでに広島で指導経験のあったMF柏木陽介は10年に浦和へ移籍していたが、DF槙野智章やGK西川周作、DF森脇良太、FW李忠成といった教え子たちも次々に浦和は獲得していった。それだけでなく、鹿島アントラーズから移籍した興梠や、浦和ユースから流通経済大を経て入団の宇賀神、MF梅崎司、ベガルタ仙台から加入のFW武藤雄樹といった主力は、ほとんどが1986年から88年生まれの同世代だった。

 その主力世代の上に81年生まれのMF阿部勇樹やMF鈴木啓太、DF那須大亮が所属し、ベテランのMF平川忠亮らも健在。少し年下にはFW原口元気がいて、若手として関根が14年にトップ昇格し、原口の海外移籍後に五輪世代だった当時のDF遠藤航が移籍加入するような絶妙なバランスは、数年間の黄金期を作った。最終的なタイトルの数の物足りなさが批判を受け評価も高まらないが、この当時を最後に浦和はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権をリーグ戦の成績で得たことがない。毎年、優勝争いに顔を出すのが当たり前だった。

 昨季こそラスト数試合まで数字上で優勝の可能性はあったが、19年は最終節まで残留争いをしていた。今季は2試合を残して10位だが、興梠は「ここ最近は優勝争いができていないので、残り5試合だったら、緊張した練習でピリピリした感じでやるのが優勝を争うチームだし、今は何も懸かってない中でやっている練習だから、気持ちよくシーズンが終われない」と話す。その当時は毎年、夏頃に興梠が「今の時点で一喜一憂するのではく、リーグ戦はラスト5試合が大事なんだ」という話をするのが恒例だった。

 そんな環境だからこそ興梠は「そういうのを感じながらやれるシーズンは楽しいし、今は選手みんなが楽しんでサッカーをやってるようには感じないので、楽しむことを忘れないように、来年からは優勝争いをしてほしい」とエールを送る。

原口元気がチームを引っ張っていく存在に【写真:徳原隆元】
原口元気がチームを引っ張っていく存在に【写真:徳原隆元】

先導者としての期待懸かる原口が決意「僕も手助けをしていかなきゃ」

 もちろん、1つの世代に主力をギュッと固めたこと、同じような移籍ルートの選手が多くなった弊害はあった。それらはペトロヴィッチ監督の在任中から見え隠れしていたが、それでも関根は「その世代がどれだけ凄かったっていうのがより分かるというか、今、自分たちの世代でそういう熱い仲間がいるのかとか、実績を残せているのかって言ったら、まだ足りないと感じる。あの世代の強さ、人の良さも、特別な世代だったなと思う」と話す。

 今夏に10年ぶりの浦和復帰を果たした原口には、そのような優勝争いが当たり前の環境へ戻していく先導者としての期待も掛かる。シーズン終盤のピリッとした空気について「強いチームは、ミシャの時もそうだし、みんなでそういう空気が作れたと思う。僕も手助けはしていくけど、1人1人が優勝する、チームを強くするっていう感覚を持ってやっていかないと、なかなか優勝争いをするチームにはなっていかない。そこはもう一度、ウガや慎三君から選手も感じ取ってもらいたいし、僕もその手助けをしていかなきゃいけない」と話した。

 そして原口は「彼らから学ぶ精神的なものはすごく大きいと思う。ウガにしろ、慎三君にしろ、あと2週間で引退だけど、本当に最後の最後まで選手として非常にフィットした状態だと思うし、おそらくいつ2人にチャンスが来てもハイパフォーマンスを出せると思えるぐらい練習でのパフォーマンスが良かった。そういう準備力であったり、プロフェッショナルさ、そして精神的な強さ。今後、浦和が勝っていく上でもあのような選手たち、メンタリティーが必要だと感じる」とも口にした。

 優勝争いが日常だった浦和を築き上げた同世代の選手たちは、これでほとんどがチームを去り、スパイクを脱いでいく。失われた伝統を取り戻すのは容易ではないが、浦和はその道のりを歩むことができるだろうか。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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