大学で磨いた技が活き「楽しかった」 プロ練習参加で実感…進路は「湘南に決めました」
筑波大アタッカー田村蒼生、大学4年間で磨いた実力をプロで証明へ
来季から湘南ベルマーレ加入が内定している筑波大のアタッカー田村蒼生が今、躍動を見せている。
関東学生サッカーリーグ1部最終戦の駒澤大戦、0-0で迎えた後半30分にゴール前で弾かれたボールに対し、ゴールを背にしてトラップをすると、左からオーバーラップを仕掛けてきたDF安藤寿岐にパスを出すと見せかけて、鋭く内側に切り返してターン。目の前には3人のDFがいたが、安藤を警戒してプレスに来ていなかったのを確認し、そのまま右足を振り抜いてゴール右隅に突き刺した。
「最初は体勢的に安藤に出そうと思ったのですが、背後でDFがそっちに引きつけられていると感じたので、パスを直前でキャンセルしてターンをしたらコースが空いていた。焦らずに身体を旋回させてパワーをボールに乗せて振り抜いたので、スピードに乗ってゴールに決めることができました」
このゴールシーンこそ、田村が大学に来て習得したものであった。柏レイソルU-18時代は10番を背負い、突破力とパスセンスを売りにしたチャンスメーカーだった。大学に進学してからはドリブルだけではなく、ポジション取りやDFを剥がしてからのアイデアの引き出しを増やしていく中で、ドリブルやゴール前でのシュートのクオリティーに課題を感じていた。ちょうどその時に昨年からチームのテクニカルアドバイザーに就任した中西哲生氏と出会ったのだった。
「今まで気にしていなかったことや、避けていた部分を意識するようになって、より引き出しが増えたというか、考えやプレーが柔軟になっていく感覚でした」
中西氏のメソッドは新たな発見や無意識にやってきたことの確認など、刺激的だった。さらに彼自身の成長への熱量も凄まじかった。ただ話を聞いて実践するだけではなく、自分から積極的に質問に行ったり、トレーニングで自分なりの形に落とし込みながら、トライ&エラーを繰り返したりするなど、熱心にそのメソッドを体得していった。
「あのゴールは判断を決めたあとのキャンセルやコースを見つけて速いボールを通すシュート技術など、哲生さんに教わっていつも練習してきた形が咄嗟に出ました。以前の自分だったら普通に安藤にパスを出していたと思いますし、シュートも相手に当てていたと思います」
このゴールだけではない。湘南に練習参加をした時、自分の中で言語化、思考していたことが周りのプレーや自分のプレーで現れることを体感できた。
「湘南は夏以降にさらにポゼッションがうまくなっていると感じていて、鈴木淳之介選手などうしろの選手があれだけ前を向けて、縦パスを刺せるので、そうなるとあとは受け手の問題になってきます。実際に練習に参加をしても、山口智監督は攻撃のところで細かい指導がたくさんありました。僕はサイドボランチに入ることが多かったのですが、あのポジションは攻守をつなぐリンクマン的な役割を求められていて、僕は積極的に縦パスを受けて前につなぐことと、僕は相手を1人剥がすことが特徴としてあるので、どんどん動いてたくさんボールに関わって連続性を出すことを意識しました。それが楽しかったし、自分のスタイルに合っているなと感じたので湘南に決めました」
強度と素早い切り替えの中で、より前向きなプレーと攻守におけるプレーの連続性が求められる。それを体現するためには賢さと判断のスピード、ボールコントロールだけではなく身体操作などの総合的な技術がより重要になる。それを田村は大学4年間をかけて習得してきただけに、湘南のサッカースタイルと自分がコツコツと積み上げてきたものが完全に合致したのだった。
「僕がもう1つ殻を破って成長できる可能性があるクラブに入る楽しみと、来季は即戦力でやらないといけないという覚悟の両方があります。だからこそ、もう戦いは始まっていると思うので、筑波大で1日1日を大切に過ごして、大学最後のインカレで個の成長とチームの優勝を掴み取りたいです」
大学サッカーの総決算とプロへの助走。どこまでも進化を欲する田村はインカレ決勝が行われる12月28日まで走り抜く。
(FOOTBALL ZONE編集部)