J→海外で勝負できる「日本人ベスト11」 NEXT欧州組候補を厳選…今季ブレイク得点王も有望株【コラム】

今季Jリーグで活躍をした11人をピックアップ【画像:FOOTBALL ZONE編集部】
今季Jリーグで活躍をした11人をピックアップ【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

欧州で飛躍できそうな日本人選手をベストイレブン形式で選出

 現在、多くの日本人選手が欧州5大リーグをはじめ、海外で活躍しているが、ここから飛躍しそうなポテンシャルを持つ選手はまだまだいる。もちろん、そうした選手がJリーグに留まって盛り上げてほしい思いはありつつ、欧州で飛躍できそうな選手をベストイレブン形式で選んでみた。今回は森保ジャパンでも使われている3-4-2-1に当てはめたが、特に組み合わせは重視していない。(文=河治良幸)

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 GKはポテンシャルを評価して、野澤大志ブランドン(FC東京)を推したい。完成度という意味では森保ジャパンに定着している大迫敬介(サンフレッチェ広島)がナンバーワンかもしれないが、身体能力やボール処理のスケール感というところで、野澤はセリエAで活躍中の鈴木彩艶(パルマ)やパリ五輪で守護神を担った小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン)に続けるだけのものがある。

 ディフェンスは山川哲史(ヴィッセル神戸)、高井幸大(川崎フロンターレ)、綱島悠斗(東京ヴェルディ)の3人をチョイスした。山川は対人能力と統率能力の両面で、現在Jリーグ最高レベルのセンターバック(CB)であり、強力なFWが相手となるACL(AFCチャンピオンズリーグ)エリートでも、国際レベルで通用することを示している。おそらく日々のトレーニングから大迫勇也や武藤嘉紀といった欧州の最前線で戦ってきた選手とマッチアップできる環境も、ここまでの成長を裏付けているのだろう。外国人選手も含めれば、その山川とCBコンビを組むマテウス・トゥーレル(ヴィッセル神戸)も1対1で守り切れるディフェンスは欧州の一戦級でも通用しそうだ。

 高井はパリ五輪でバックラインの主力を張り、現在20歳という年齢で、A代表に招集されている。192センチのサイズながら機動力もあり、左右の足で正確にボールを扱えること、相手のプレッシャーを吸収しながら外して、前に運べる技術とビジョンも目を見張る。川崎からもう1人挙げるなら、佐々木旭も代表を含めて、国際的な可能性を伸ばしてきている。大卒でJリーグ入りした当初、攻撃的なサイドバック(SB)として名前を売っていたが、守備面はポテンシャルを持て余しているところがあった。しかし、ここに来てCBでも継続的に起用されるなかで、1対1での耐久力も成長を見せている。SBとしてはもちろん、3バックならセンターでも面白い。

 綱島は188センチというサイズもさることながら、攻守のあらゆるプレーにハイスケールさを感じさせる。後半戦は3バックの右ストッパーに定着しているが、ボランチや空中戦の強さやシュート力を生かす、パワープレー的なFWも務まる。ポリバレントであることも、海外で可能性を広げられる要素だ。攻撃面では長短のパスはもちろん、相手FWのプレスを剥がして前に運ぶなど、ビルドアップが強化されると、日本代表の候補に浮上してくるかもしれない。CBとSBのポリバレントとしては半田陸(ガンバ大阪)や中野就斗(サンフレッチェ広島)も国際レベルでの飛躍が期待できる有力候補だ。

 ウイングバックは東俊希(サンフレッチェ広島)と関根大輝(柏レイソル)の2人を選んだ。東はテクニックが高水準であるうえに、幅広くエリアをカバーできる。一見して細身だがデュエルにも強く、ポテンシャル的にも環境によってさらなる成長が見込める。関根は大学4年生ながらすでにA代表入りするなど、最も今後の飛躍が期待される1人だろう。187センチというサイズと出身校の静岡学園高校で磨いた技術、日本代表でも欧州組の選手たちから得た刺激を日頃の練習に取り入れる向上心、明るいキャラクターも海外向きだ。

小森飛絢がJ2リーグの得点王に【写真:徳原隆元】
小森飛絢がJ2リーグの得点王に【写真:徳原隆元】

J2得点王・小森飛絢の危険性は外国人FWにも負けず劣らず

 中盤は田中聡(湘南ベルマーレ)、川﨑颯太(京都サンガF.C.)、宮代大聖(ヴィッセル神戸)の3人を選んだ。田中に関してはベルギーのコルトレイクに期限付き移籍した実績があり、いわばJリーグ出戻りだが、一度はポジションを取りながら定着できなかった苦い経験をJリーグのプレーに生かしている。精神的にも逞しくなった感があり、再チャレンジも可能だろう。川﨑はハードワークのベースが高く、ボールを奪い能力と鋭い攻め上がりを兼ね備えている。守備的MFとしては小柄だが、攻撃ビジョンを生かしてインサイドハーフなどで起用されたら、タフな欧州の環境でも特長を発揮できそうだ。

 宮代は天皇杯決勝でのゴールが記憶に新しいが、川崎でトップ昇格した当時から“川崎の大砲”と呼ばれていたとおり、シュートの技術は卓越していた。フィジカル面や勝負強さといったところが課題だったが、期限付き移籍を繰り返しながら逞しくなり、新天地の神戸では大迫や武藤といった欧州の第一線で揉まれてきたビッグネームと過ごすことで、決断したプレーをやり切る意識が高まった感がある。で、久保建英や中村敬斗など、海外で活躍する同世代のアタッカーに遅れを取った向きはあるが、焦らずにベースを作り上げてきての今がある。

 2シャドーは多くのタレントがいる中で、小森飛絢(ジェフユナイテッド千葉)と山田新(川崎)を選出した。J2得点王の小森はシュートエリアが広く、ややワイドな角度からでも枠を捉えて、GKの反応を破れる。ボックス内でラストパスを受けた時の危険性は外国人FWにも負けず劣らず。すでにJ1でも二桁を狙える能力が備わっていると見られるが、本人の意向次第では直接海外に挑戦しても面白い。いわゆるターゲットマンではないが、もう少し周りを使うタスクをこなしながら、ゴールを狙えるようになる必要はあるかもしれない。

 大卒2年目にしてリーグ戦16得点とブレイクした山田は持ち前の攻撃センスに加えて、メンタリティーも海外の環境で個を伸ばしていけるポテンシャルはある。175センチとサイズは大きくないが、狭いところでもボールを受けることができ、ペナ幅でこそ決め切る能力を発揮できるだけに、ウイングよりは2トップやシャドーなど、インサイドで起用してもらえる環境を見出していきたいところ。どんどんフィニッシュに磨きをかける姿勢は買いたいが、海外はもちろん日本代表のリストに入っていきたければ、動き出しや守備の継続性はもっと伸ばしてほしい。

 坂本一彩(ガンバ大阪)は“ザ・ストライカー”という表現が似合うタイプで、ワンチャンスでゴールを仕留めるシュートの決定力を備えながら、単騎のドリブル突破など、個人でそのシチュエーションに持ち込むこともできる。大枠としては古橋亨梧に通じるが、チャンスメイクをしながら大事なところでボックス内にいるという意味では、南野拓実にも少し重なる。ファジアーノ岡山での武者修行を経て、G大阪でようやく主力に定着してきた段階であり、天皇杯で準優勝に終わったあと、チームを引っ張る存在になっていきたいと語っておりまだ国内で伸ばせる余地はあるが、どういう道筋を描いていくか興味深い。

 年齢的に高めではあるが今シーズンJ1で得点力を開花させたジャーメイン良(ジュビロ磐田)も良いオファーさえあれば、スピードと決定力を海外でも発揮できるだろう。また日本人選手に限定せずに評価すれば、Jリーグはもちろん韓国代表で高さとパワフルなフィニッシュワークを見せるオ・セフン(FC町田ゼルビア)も、欧州のトップリーグで勝負できるポテンシャルは十分に備わっている。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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