怪我した宇佐美は“泣いていた” 察知した欠場の瞬間…大黒柱不在で叶わなかった「貴史のために」

G大阪の宇佐美貴史【写真:産経新聞社】
G大阪の宇佐美貴史【写真:産経新聞社】

天皇杯の決勝はエース宇佐美不在…G大阪は神戸に敗れ、準優勝に終わった

 J1ガンバ大阪は11月23日、国立競技場で行われた第104回天皇杯の決勝戦で、ヴィッセル神戸と対戦して0-1で敗れた。9大会ぶりの優勝を逃し、10個目のタイトル獲得ならず。絶対的な存在の主将FW宇佐美貴史が2日前に右ハムストリングの肉離れで離脱となり、欠場が響いた。エースが流した大粒の涙には悔しさが詰まっていた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 無情にも鳴り響いた試合終了のホイッスル。あふれる涙をベンチに座った宇佐美は止めることができなかった。立てなかったピッチ。仲間を信じて思いを託したが、試合巧者の神戸に頂点を譲り渡した。

 試合は前半、G大阪がペースを握るも決め切ることができず。後半19分にMF武藤嘉紀に突破を許して、シュート性のパスからこぼれ球をFW宮代大聖に押し込まれた。最後まで決定機をモノにできなかったG大阪はこの1点を守られて4大会前と同じ準優勝に終わった。

 悪夢は2日前。練習中の出来事だった。宇佐美が右ハムストリングを負傷。チームに伝わった「これはヤバイ」の雰囲気。瞬時に決勝の欠場を感じ取った。怪我した宇佐美は泣いていた。2年前に右アキレス腱断裂の大怪我を負い、昨年は“後遺症”と戦いコンディションを上げられなかった。今シーズン前に約5キロの減量を行い、患部への負担を軽減してパフォーマンスが向上。ここまでの復活を疑っていた人は多かっただろう。だが、本人は諦めていなかった。それが今季の姿。血のにじむような努力を知っていたから、「宇佐美にカップを」がチームの願いだった。

 試合中、スタンドで観戦した宇佐美は声援を送り続けた。DF中谷進之介は「彼が去年苦しんできた分、それが報われる時間を作りたいと思っていたけど、させてあげられなかった」。GK一森純も「絶対貴史のために勝とうと思っていたけど、もっと(気持ちを)伝染させるようにしないといけなかった」と悔やんだ。

 3年前のオフ、宇佐美のもとには川崎フロンターレからオファーが届いた。だが、残留に決めたのは「ガンバの礎になりたい、難しいチャレンジだけど、そういう思いでやった方が自分にとって苦しいと思った」から。サッカー人生「苦しむことが本質。幸せな割合なんて元々少ない」と言う宇佐美。また幸せな瞬間は訪れなかったが、これが終わりではない。自身を責める必要はない。「礎」は見えてきた。来季には10個目の星を――。7番の手で必ず積み上げる。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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