日本戦で起きたファン愚行「『やっぱり中国』って言われてしまう」…緊迫ムード壊す悪態に苦言【見解】

中国の選手にとって水を差すような中断時間になった【写真:Getty Images】
中国の選手にとって水を差すような中断時間になった【写真:Getty Images】

【専門家の目|栗原勇蔵】日本戦で中国ファン乱入のハプニング発生

 日本代表は11月19日に行われた北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で中国代表と対戦して3-1で勝利した。勝ち点3を獲得した日本は首位をキープして、8大会連続でのW杯出場に王手をかけたが、この試合では日本の国歌斉唱の際にスタジアムでブーイングが起き、ピッチ幅が狭く設定され、GK鈴木彩艶にレーザービームが向けられるなど、さまざまなハプニングが起きた。

 そのうちの一つが、前半35分ごろに起きた観客の乱入でもあった。中国のゴール裏からファンが乱入して、そのまま日本陣地まで走って行った。侵入者はすぐに警備員に取り押さえられて連行されていったが、試合は約1分間中断した。そして、その直後に日本はMF久保建英のCK(コーナーキック)からFW小川航基が先制ゴールを挙げている。

 元日本代表DF栗原勇蔵氏は、試合中に観客がピッチに入った際の選手の心理について、「ちょっと集中が切れたりはもちろんする」と言い、「海外なんかは熱烈なファンがサインもらいに行ったりするパターンもあると思うんですけど、今日に関しては分からないですけど、良くはないし、見栄えも良くない」と、中国語でメッセージを書いたシャツを着た乱入者について言及した。

 そして、「『日本でああいうことが起きますか?』って言うと起きないし、『やっぱり中国だよね』って言われてしまう。そういうことが1つ原因でもあるので、選手からしたら危険もある。かと言って警備員が悪いわけでもなくて、いきなり入られたら抑えられないところもあると思う。ただ、ああいうことがなくならなければ、もっともっと見づらいようなスタジアムになってしまう可能性もある。本当にごく一部の人、あれだけいる中の1人だったりとかしますけど、選手からしたら『何やってんだ』って感じで考えてますけど、応援するのと熱狂的すぎてというのを履き違えているのかもしれないですね。ちっともかっこよくないし、何を訴えたいのかはちょっと分からないですけど、ああいうのもなくなっていけばいいですね」と、苦言を呈した。

 乱入者が出て試合が中断した直後、日本は先制ゴールを挙げた。乱入者が出たことは、それまで善戦を見せていた中国代表選手たちのメンタルにも影響があったのかもしれない。栗原氏は「中国の選手も割と冷ややかな目で見ていたと思う」と指摘し、「何のために、誰のために、何をやっているのかもよく分からない状況というか、国を背負うような大きい試合でああいう人が入ってきて、流れって本当に少しのこと、きっかけで変わると思うんです。どこかのプレーの1個のパスが数センチずれただけで、試合の展開とか結果とかもすごく変わると思う。そういうものじゃないですか、スポーツって」と、試合が1分以上も止まった大きな出来事の影響に言及した。

 さらに「だから、ああいう人が入ってきたから、日本からしたら点も取れた可能性もある。そのまた逆もあるかもしれないですけど、それだけ影響が出てしまうようなことだから、やっぱり考えてほしいなとは思います。選手は人生懸けてやっているので」と、試合を左右する可能性もある観客のピッチ内への侵入が続かないことを強く願った。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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