中国メディアが拍手した森保監督の一言 敵地の洗礼に苦言も…体現する“ノーサイド精神”

日本代表を率いる森保一監督【写真:ロイター】
日本代表を率いる森保一監督【写真:ロイター】

中国戦後の記者会見で、去り際に一言“感謝”を中国メディアへ伝える

 日本代表は現地時間11月19日、2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選中国戦(厦門)に挑み3-1の勝利を飾った。アウェーの試合ではこれまでも“洗礼”が待ち受けてきたなか、それにも動じない指揮官の鋭い目が光った2試合がある。だがその素顔は、柔和な雰囲気をまとっており、試合後会見のラストで中国記者たちに向けた一言が森保監督の人間性を如実に表していた。

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 中国・厦門は、リゾート的な観光地として栄え、街には過ごしやすい大きなスポーツ公園や屋台が並ぶ。15日のインドネシア戦(4-0)を終えジャカルタを出発した森保ジャパンは、17日より厦門でトレーニングを再開。18日の前日練習も含め実質2日間の準備で、中国との一戦に挑むこととになった。

 30度にも満たない穏やかな気候。だが試合当日は雨予報で、4時間前にもかかわらずスタジアム周辺に中国サポーターがごった返していた。旗を振り、太鼓を叩く。厦門市周辺の警察も総動員となった会場は、すでに殺伐としていた。小雨の止んだ少し肌寒い夜8時のキックオフだった。

 スタジアムの大声援と大ブーイングの声量には驚いた。森保監督は「ホームチームで我々にとっては非常に大きな圧力でした」と試合後に振り返っているが「サポーターと一体になって選手と一緒に戦う部分では、いい雰囲気で試合をさせていただきました」と選手たちを後押しした現地サポーターの存在に敬意も払っている。

 そんななか、日本の「国歌斉唱」に対する中国サポーターのブーイングに森保監督は「お互いの尊重ということにおいても、止めていただければありがたい」という言葉を選んだ。さらには日本人選手へ向けた試合中のレーザーポインター照射も明らかとなっており「選手たちの健康を守るためにも、過剰な応援以外のことはやめていただければありがたい」と再び“お願い”を言葉にした。

 決して厳しい非難や主張を好まない森保監督だが、この時の表情は引き締まっており、緊張感が漂っていたのは確かだった。だがこの回答を最後に、会見場をあとにするはずだった日本の指揮官は、出る直前に中国の翻訳スタッフを通して一言「謝謝(シェイシェイ:ありがとうございます)」とにこやかな表情とともに伝えたのだ(現地スタッフより)。直後に拍手が送られたのは、森保監督の思いが通じた結果なのだろう。

 以前、9月のバーレーン戦でも国歌斉唱へのブーイングや、日本選手へのレーザーポインター照射があった。当時も「できるなら止めていただきたい」と会見で森保監督は訴えていたが、その後の対応は中国戦で工夫がなされていたように感じた。対戦した選手、サポーター、国自体を慮る。この意識を常に忘れないのは、日本の選手やスタッフ、サポーターに対しても同じような思いで接している部分も大きいはず。ノーサイドという言葉は、森保監督にこそふさわしいのかもしれない。

(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)



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