森保監督が大胆な“シフト変更” 布石は2戦前…振り絞った久保建英の「すみません」が分け目
10月サウジアラビア戦でベンチスタートとなった久保の思い
森保一監督率いる日本代表は11月19日、北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第6節アウェー中国戦で3-1の勝利を飾り、2024年の最終戦を締めくくった。1月1日の親善試合タイ戦から始まり、16戦(北朝鮮戦の不戦勝1試合含む)。13勝1分2敗と大きく飛躍を遂げたチームのターニングポイントを探る。森保監督は中国戦で、最終予選で初めて大幅にスタメンを変更。その布石は2戦前から打ってあった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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負けられない最終予選が始まって3戦目、10月敵地でのサウジアラビア戦のことだった。9月の2試合、森保監督はシャドーを入れ替えるのみでスタメンを大きく変更することはなかった。やはり、最終予選という厳しい戦いの舞台、毎回何が起こるか分からない。新たな攻撃的3バックというトライを積んでいるなかで、まずは固定メンバーで戦術の共通理解を深めた。そこでサウジアラビア戦、スタメンを外れたのがMF久保建英だった。
最終予選・初戦の中国戦でスタメン、2戦目のバーレーン戦ではベンチスタート。チームへの合流が遅かったこともあるが、サウジアラビア戦では続いて先発のピッチに立てなかった。
サウジアラビア戦前の練習から久保の悔しさは滲んでいた。「いざ、チャンスがあったらいつも通りのプレーをすれば問題ないかなと思います」。振り絞った言葉。リードしていた後半終了間際に出場したが、試合後に取材エリアで立ち止まることはなかった。「ちょっと今日はすみません」。久保の思いがひしひしと伝わって来た。
そして、その思いを晴らしてあげるかのように次のオーストラリア戦、久保は後半25分まで出場を果たした。
この久保の起用から11月シリーズに移る。初戦のインドネシア戦で、先発こそ負傷で選外のFW上田綺世とDF谷口彰悟に代わってFW小川航基、DF橋岡大樹が入ったぐらいで大きな変更はなかった。だが交代カードではDF菅原由勢、MF旗手怜央ら最終予選で出場機会のなく、ベンチで悔しい思いをしてきた選手にチャンスを与えた。その訳を指揮官はこう話している。
「最終予選では選手起用において大きな変更というのはなかなか実践しなくて5試合を戦ってきました。インドネシア戦の時に出場機会が少なかった、得られなかった選手たちを起用したのは、つねに招集した選手全員が戦力だということを選手たちには伝えていますし、起用によって選手にとっては全く満足できないような出場時間だとは思いますけど、選手たちへの信頼という意味で選手に伝わればなと思います。まだまだ起用されていない選手にも自分たちにはチャンスがあるということを感じてもらえれば嬉しいなと思っています」
そして付け加えたのが「これは質問と違うかもしれないですけど(菅原)由勢が得点した時にホントに出場機会を得られない選手たちの努力をチーム全体で分かっていて、そこから結果を出したことにみんなで喜ぶというシーンは非常に監督として嬉しいシーンでした」。これまで、起用を巡っては選手もそれぞれ様々な思いを抱えてきた。だが、最終予選も折り返しに差し掛かって、今度は幅広い起用をトライする方向へシフト。選手も発奮するしかない。
これに至るまで、森保監督は細かなコミュニケーションを繰り返してきた。例えば11月シリーズの練習初日には1年ぶりの代表復帰となったFW古橋亨梧を呼んで、1対1で5分以上話し込んでいた。初招集の選手にも1人ずつ日本代表のコンセプトを話す。何を求めているのか、まず示す。起用されなければ悔しい思いはあるが、選手たちにとって「なぜここにいるのか」はブレない。
この先、来年は戦術の軸、選手層の軸、それぞれを広げる作業に入ってくる。そのターニングポイントとなったのがオーストラリア戦の起用だった。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)