中国ファン“愚行”に「申し訳ありません」 “上出来な試合”に水…母国記者が抱いた良心の呵責

リターンマッチに敗戦も内容で改善を見せた中国【写真:Getty Images】
リターンマッチに敗戦も内容で改善を見せた中国【写真:Getty Images】

1-3で敗戦の中国、グループは混戦状態に

 中国・アモイで開催された2026年アメリカ・カナダ・メキシコワールドカップのアジア最終(3次)予選のアウェー・中国戦は、日本が3-1と中国を下した。中国側から見れば、1-3での敗戦ということになる。

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 だが、試合が終わって記者会見場やミックスゾーンにいる中国人メディアは上気しているように見えた。インドネシアが中国と勝点6で並んでいたサウジアラビアを2-0で下したということも、日本に負けたにもかかわらず気を楽にさせていたのかもしれない。

 中国初のUEFAとAFCの公式登録フリーランス・ジャーナリストで、今年のカタールアジアカップを取材しており、現在は北京国安サッカークラブのメディアマネージャーを務める、ザック氏ことザン・チェン氏も朗らかだった。

「昨日言っていたように、日本に点を取ることができました。日本のオーストラリア戦の失点はオウンゴールですよね。だから中国がこの最終予選で初めて日本のゴールを割ることができたということになります」

 さらにザック氏は続けた。

「前回の0-7に比べたらどんな結果でも悪くはないのですが、この1-3というスコアは日本を相手にしたとしてはいいと思います。日本はこのグループの中で力が頭抜けていますから。そういうチームを相手に点を取って2点差で負けたというのは悪くないでしょう。それに日本はホームのバーレーン戦、サウジアラビア戦を残していますよね。きっと日本はその両国相手に7点以上を取って中国を助けてくれると信じています」

 日本以外は大混戦になっているグループCの中で、得失点差は重要な要素になっている。中国は初戦の日本戦で大敗した影響が残っているが、今後は日本が大勝を重ねれば中国が浮上するという算段だ。

中国人の若者が日本語で「日本はやっぱり強いですね」

 ザック氏に「中国は2位以内に入って出場枠を勝ち取ることができるだろうか」と聞くと、即座に「それはないと思う」と返事があった。非常に冷静に状況を分析する彼らしい一面が見える。

「中国の実力的にはプレーオフ圏内を目指すことだと思います。混戦なのでうまくいけば2位になるかもしれませんが、どうかそうなるように一緒に願ってください」

 そう言って微笑んだザック氏と話をしている間にも、ほかの記者から「日本はこれからもどんどん点を取ってくれよ」という励ましをもらう。いつもは辛口で知られている中国人記者も「今日は悪くない。この結果は決して悪いものではない」と笑顔を見せた。初戦のあと、ブランコ・イバンコビッチ監督に対して散々悪態をついていた人物とは思えないほどだった。

 だが、そのときイヤな知らせが入ってきた。日本では国歌のときのブーイングや鈴木彩艶へのレーザーポインターが話題になっているという。

 その話をザック氏にすると、たちまち彼の顔が曇った。

「レーザーポインターは、試合中に肉眼では分かっていませんでした。ですが自宅でテレビを見ていた家族から、鈴木選手の顔にレーザーポインターが当たっているという話をさっき聞いたばかりです。ブーイングの件も含めて、とても申し訳ありません」

 もちろんザック氏のせいではない。愛国者でもあり親日家でもある彼に謝ってもらうのは心苦しかった。

 最初は反日感情がそうさせたのかと思った。だが取材を終えて外に出てくると中国人の若者たちから日本語で「日本はやっぱり強いですね」と声をかけられたことや、アモイで過ごしたこの4日間のことを考えても、日本に対する悪い感情を感じることは決してなかった。

 ブーイングをした人たちやレーザーポインターを使った人物は、何かで見た海外の悪癖を真似てみたのではないだろうか。今後は、そんなことをせずとも強くなってきた日本を真似してほしいものだ。勝ったから、ちょっと上から目線な感じになってますけど。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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