0-7“悪夢”は「過ぎ去ったこと」 3連敗→2連勝、中国人記者が母国代表の“自信”指摘「もう慌てない」
中国は現在最終予選2連勝中で日本と対戦を迎える
今年のアメリカ・カナダ・メキシコワールドカップのアジア3次予選を締めくくる戦いが中国・アモンで開催されようとしている。前日記者会見の場には多くの中国人報道陣も駆けつけた。
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その中には、中国初のUEFAとAFCの公式登録フリーランス・ジャーナリストで、今年のカタールアジアカップを取材しており、現在は北京国安サッカークラブのメディアマネージャーを務める、ザック氏ことザン・チェン氏の姿もあった。
埼玉で行われ、日本が中国に7-0と大勝した試合にもザック氏の姿はあった。試合後、お互いにコメントを交換する予定になっていたが、ザック氏は挨拶をするとすぐにスタジアムを去り、メールがやって来たのは数日後だった。どれほどのショックだったのかは、彼が自分を癒すために必要だった時間が物語っていた。
その後、中国はサウジアラビアにホームで1-2と敗れると、アウェーのオーストラリアにも3-1の敗戦を喫する。サウジアラビアにもオーストラリアにも先制しながら逆転されるというショックの大きな連敗だった。
だが10月のホーム、インドネシア戦で初めて勝利を収めた。前半先制し、ハーフタイムの前に加点すると相手の反撃を1点に抑えて念願の勝点3を挙げた。だが、その時点でも中国はグループ6位。自動昇格どころかプレーオフ圏も遠かった。
しかし11月14日に開催されたアウェーのバーレーン戦で、中国は大きな自信を掴んだ。88分、バーレーンに決勝点を奪われたかに思えたがオフサイドで取り消された。そして後半アディショナルタイム、左サイドを崩すと最後はジャン・ユーニンが中央から綺麗に決めて勝利を手中にする。これで中国は2連勝となり、オーストラリア、サウジアラビアに勝点6で並んだ。
この試合の後、ザック氏に「おめでとう」とメッセージを送ったら、いつも冷静な彼には珍しく、興奮した文面でお礼が来た。どれだけ大きな勝利だったかは彼のすぐ戻ってきたメッセージからもよく分かった。
中国の守備はより激しく、厳しくなった
もっとも、今回の日本戦で大敗でもすればすぐに中国の明るいムードは消し飛んでしまうだろう。アモイ入りして何人もの中国人に話を聞いたが、みんな大敗した試合が心に大きな影を落としている。
だがザック氏はすっかり気を取り直しているようだ。
「ブランコ・イバンコビッチ監督はチームを強く、団結させることを望み、選手もまた彼が望んだものを手に入れたのだと思う。そして今、彼らは強靭な肉体と気迫に満ちたチームになっている」
その自信の源は何か。
「重要なのは、ディフェンスラインが非常に落ち着いていることだ。もう慌てない。確かに、このグループでの最初の3試合は3敗を喫した。そして今、彼らは2連勝しているんだ。確かに埼玉は『悪夢』だった。だがもう過ぎ去ったことになったんだよ」
「彼らはアジアのサッカー界でハイレベルと戦う術を知ったし、いい経験を積んでいると思う。彼らは今すぐにでも成熟し、次に何をすべきかを知るだろう。今、私は彼らの中に自信を見ているよ」
確かに中国代表の守備はより激しく、より厳しくなった。勝つという執念を前に出すようになったと言えるだろう。
そして中国は日本に無理して勝負を仕掛けて大量失点してしまうよりも、日本戦では失点しないようにして、日本が他のチームに大勝してくれれば自分たちが得失点差で上に行けるという目算もありそうだ。
「次の試合のスコア予想は? 0-0になるかな?」
そうザック氏に聞くと、彼は「うーん、0-0はどうかな」と言う。そういう部分で冷静になるのがザック氏らしいと言えるだろう。だが彼は続けてこう話を締めくくった。
「明日は僕のチームにゴールが生まれることを願っているし、前回と同じように、君たちのチームと綺麗な戦いができることを願っているよ」
(森雅史 / Masafumi Mori)
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。