Jリーグ随一のスタイル「すごい厄介」 町田も苦戦「技術高いから本当に取れない」【見解】

J1屈指のポゼッションスタイルを誇る新潟【写真:徳原隆元】
J1屈指のポゼッションスタイルを誇る新潟【写真:徳原隆元】

【専門家の目|太田宏介】新潟のパスサッカーは「相手選手からすると本当にもどかしい」

 アルビレックス新潟は、J1リーグクラブ内で「平均ボール支配率」のトップを走る。ポゼッションサッカーを展開するスタイルは新潟の代名詞となっているなか、対戦相手からも「すごく厄介」なチームと評されている。FC町田ゼルビアのクラブアンバサダーを務める元日本代表DF太田宏介氏は「ポゼッションでねじ伏せる完成度の高さはJリーグナンバーワン」だと印象を語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)

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 新潟は今シーズン、ここまで10勝11分15敗の暫定16位。「1試合平均パス数」が590.6回/1位、「平均ボール支配率」が57.3%/1位と、ポゼッションサッカーを展開する数字が顕著に表れている。そんな新潟の真骨頂は、ルヴァンカップの決勝の名古屋グランパス戦でも見られた。

 最終ラインからGKも含めた20本のパス交換で名古屋を翻弄する一部始終を見た太田氏は「相手にしたらすごい厄介ですよね。今は縦に早くてフィジカルや走りを基本とするチームが増えているなかで、かなり面白いチームだと感じています」と、苦笑いを浮かべる。

「もちろんDFラインでのつなぎでミスがあったら失点に直結する側面もあります。でもボランチ、GKを含めてあれだけうしろからリスクもありながら恐れずに自信をもってつなぎきる。ポゼッションでねじ伏せる完成度の高さはJリーグナンバーワンだと思います。次々と中盤が入れ替わって、なおかつ技術が高いから本当に取れない。相手選手からすると本当にもどかしいですよね。どう剥がすかを多分めちゃくちゃ練習していると思うので、その部分では勝てないです」

 2022年、当時J2だった新潟はアルベル・プッチ・オルトネダ前監督を引き継ぐ形で松橋力蔵監督が就任。その年のリーグ優勝を勝ち取り、見事J1昇格を決めた。松橋体制3年目を迎えた2024年シーズン。リーグ戦では厳しい時期も経験したが、ルヴァンカップでは決勝戦まで勝ち進み名古屋とPK戦までもつれた。結果的に初制覇は逃したものの、ポゼッションサッカーのスタイルを貫きトロフィーまであと一歩まで迫った瞬間だった。

「あれほどのポゼッションサッカーって今のJリーグでは新潟ぐらいしかいないですね。まず宮本英治選手や秋山裕紀選手など、両ボランチがいい。センターバック(CB)も足もとでつなげて相手を剥がして持ち出せる選手が重宝されています。トーマス・デン選手も昔と比べてめちゃくちゃ上手くなっていますよね」

 また新潟は夏の移籍市場ではサイドバック(SB)のDF橋本健人を徳島ヴォルティスから獲得しているが、太田氏は「堅実に新潟に合う選手を呼んで集めているイメージがあります」と、補強の面でも一貫しているクラブ全体の印象を語っている。

「チームとして目指すサッカースタイルの土台がしっかりあるので、それに合う選手をしっかりと集められます。そこがぶれない。結果が出ても出なくてもやり方を変えずにやってきたと思います。その成果がカップ戦の準優勝じゃないでしょうか」

 町田も同カップ戦の準々決勝で新潟と激突している。第1戦は大量5失点で町田が完敗。アンバサダーとして外から見ていた太田氏も「町田が本当に何もできなかった」と、新潟のポゼッションに屈した試合を振り返った。

 そんな新潟を率いる松橋監督については「退任の噂もありますよね」と太田氏は今後の去就について注目する。「もし退任となった場合は、この後誰が監督やるかっていうのも、めちゃくちゃ大事だと思います」と、来季の注目ポイントを挙げていた(※編集部注/11月13日取材)。

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太田宏介

太田宏介(おおた・こうすけ)/1987年7月23日生まれ。東京都出身。FC町田―麻布大学附属渕野辺高―横浜FC―清水エスパルス―FC東京―フィテッセ(オランダ)―FC東京―名古屋―パース・グローリー(オーストラリア)―町田。Jリーグ通算348試合11得点、日本代表通算7試合0得点。左足から繰り出す高精度のキックで、攻撃的サイドバックとして活躍した。明るいキャラクターと豊富な経験を生かし、引退後は出身地のJクラブ町田のアンバサダーに就任。全国各地で無償のサッカー教室を開校するなど、現在は事業を通しサッカー界への“恩返し”を行っている。

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