「明らかに違う」日本とアジア5か国の“決定的な差” 英記者が指摘…如実になった明暗【コラム】

インドネシア戦に出場した日本代表・三笘薫【写真:Getty Images】
インドネシア戦に出場した日本代表・三笘薫【写真:Getty Images】

インドネシアに4発快勝、英記者が戦いぶりを総括

 森保一監督率いる日本代表は11月15日、2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第5戦でインドネシアとアウェーで対戦し4-0の勝利を収めた。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏がこの試合を総括。敵地の熱狂的な雰囲気のなか、難しいピッチコンディションや不慣れな最終ラインの構成にうまく順応を見せた日本代表の経験値の高さを称賛している。

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 雨が止み、晴れ間が見えた頃には、ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアムでの日本代表を取り巻くあらゆる状況が好転し始めた。そして、サムライブルーは次第にインドネシア首都に集まった耳をつんざくような熱狂的な観衆を黙らせ、ワールドカップ(W杯)へまた1つ歩みを進めた。

 北中米W杯アジア最終予選の前半戦5試合ですでに4勝。北米大陸へのチケットは、保証されたと言える。たとえ、大崩れしたとしても本大会行きを逃すことはないだろう。

 5試合を終えて勝ち点7差のリードを得ており、失点も1つしかしていない。それも谷口彰悟のオウンゴールだ。アジア最終予選C組における日本と他5か国の力の差は明確になっている。

 今回の試合も文字どおりの快勝で、日本の基準に満たない相手に4発を叩き込んで打ち負かした。

 しかし、ピッチがぬかるみ、ジャカルタ上空に稲光が何度も走っていた間は、状況がまた違ったものになろうとしていた。

 日本の“急造最終ライン”は、安定していたとは言い難かった。雨が激しく降り続けた影響で足もとは理想的とは言えない状態になり、安定に時間を要した日本の守備陣を不安に陥れるべくホームチームが力の限りを尽くそうとする状況が生まれていたからだ。

 それでも、鈴木彩艶が危険への準備を怠らなかったことで、日本は幸運でいられた。ラファエル・ストライクとヤコブ・サユリが日本のウイングバックの背後にあるスペースを突こうと自分たちのペースを握っていたなか、前半9分に訪れたラグナー・オラットマングーンによるピンチを見事に防いだ。

 序盤戦の激しい攻防の中で、シン・テヨン監督の戦術は功を奏し、大きな落ち着きだけでなくクオリティーをチームにもたらしていた。インドネシアは日本からリードを奪える可能性があったといえ、もしそうなればファンは熱狂の渦に巻き込まれていただろう。

 刺激的で荒々しく、耳をつんざくような喧騒のゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム(GBK)。日本の選手たちでさえ、キャリアでこのような雰囲気を経験することはほとんどないだろう。

 インドネシアの熱狂的なファンは自分たちのチームを信じている。このチームの旅はまだ始まったばかりだが、今回はその片鱗を見せていた。

 それでも、日本の経験値はインドネシアと比べて明らかに違う。中盤と前線で相手よりも大きな落ち着きを保つことができる。それは特にゴールチャンスをものにする様子に表れており、だからこそ森保一監督のチームは勝ち点を積み重ねられている。

 守田英正と遠藤航は雨脚が弱まってピッチコンディションが変化するにつれ中盤を支配し、不安定で確実性に欠けた最終ラインに保険を与えた。

 先月の1-1ドローで終わったオーストラリア戦から1か月。状況への対応力が自分たちの自信となり、複数ゴールを奪い求められていた勝利を手にしたことは、日本の成熟ぶりとクオリティーを証明するものだ。

 クリーンシードでの勝利がまた1つ。サムライブルーは次のW杯へ大きく前進している。

(マイケル・チャーチ/Michael Church)

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マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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