5秒に詰まった受け手と出し手の「完璧な共鳴」 代表OB感銘、日本の絶品プレー「高度な一撃」【解説】
【専門家の目|金田喜稔】三笘と南野の連係「技術や判断、感性が詰まった一撃」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランク15位)は現地時間11月15日、北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第5節のインドネシア戦(同130位)を敵地で迎え、4-0で勝利を収めた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、日本代表のゴールを「完璧な共鳴」と称えている(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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1-0で迎えた前半40分、左サイドを駆け上がったMF三笘薫が相手ペナルティーエリア内に侵入。アウトサイドで絶妙なパスを中央に通すと、守備網を切り裂くように走り込んだMF南野拓実が左足ダイレクトで合わせ、ゴール左隅に流し込んだ。金田氏は「いくつもの優れた技術や判断、感性が詰まった一撃だった」と絶賛する。
「まず三笘のボールの持ち方が素晴らしく、突破するような姿勢で対峙した相手や守備陣をけん制した。ボールを持った瞬間、三笘には3つの選択肢があり、縦へのドリブル突破、中央へのドリブル突破、そしてパス。これで相手は三笘にくぎ付けになっている。そしてドリブルと同じ体勢から、アウトサイドでの絶妙なパスも卓越していた」
「続いて南野だ。映像を見返してもらえれば分かると思うが、三笘にボールが渡った瞬間、1人だけ明らかにギアを入れ替えて全力で動き出している。まるで初めからあそこにパスが来ると分かっていたように、全力で走り出していた。三笘であれば、アウトサイドであのタイミングで、あそこに出すと熟知しているからこそ、南野は信じてピンポイントで飛び込んだ。そして南野の左足シュートも見事。少し回転をかけてポストぎりぎりのところに流し込んだ」
わずか5秒程度のシーンに内包される深遠さを紐解いた金田氏は、「流れるように決まったから簡単に崩したように見えるかもしれないが、2人の技術、判断、感性が詰まった高度な一撃。パスを出す三笘、パスを受ける南野による完璧な共鳴だ。2人が分かり合っているシーンだったし、素晴らしかったと思う」と、以心伝心のゴールを称えた。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。