清武弘嗣が「めちゃくちゃ好き」 招集→出番なしの欧州組を絶賛、感じた森保J最大の変化【インタビュー】
ザックジャパン時代の日本代表メンバーに選出、タレントひしめいた当時を回想
サガン鳥栖に所属する元日本代表MF清武弘嗣は、日本代表として43試合に出場して5得点を記録している。当時の日本代表の2列目は、MF本田圭佑、MF香川真司、FW岡崎慎司が中心となっており、清武にはなかなか先発としての出場機会が訪れなかった。実力がありながらも出番を掴めない。日本代表でもどかしさを感じていた当時の思いや森保ジャパンに抱く思いを訊いた。(取材・文=河合 拓)
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現在の日本代表は欧州組が大半を占めており、出場機会を得ることは簡単なことではない。たとえ欧州組でもスコットランド王者であるセルティックで主力を務めているMF旗手怜央は、代表ではベンチ入りできるかどうかの瀬戸際にいる。旗手について「プレースタイルが、めちゃくちゃ好き」という清武は、「代表の中盤で見てみたいなっていう気持ちもあります。クラブであれだけ活躍していて代表で使われていないのは、絶対にもどかしい思いもあると思うんですよね。でも、それをやり続けるしかない」と話した。清武も所属クラブで主力として活躍しながらも、日本代表ではプレー機会を得られない時期があったが、そんな時にはどのようにメンタルを保っていたのだろうか。
「僕が入っていた時は、もう相当な選手がいたので。自分がスタメンで出たいし、出ることを想像していましたけど、試合に出るためには(香川)真司くんとか、(本田)圭佑くんとか、岡ちゃんとか、(中村)憲剛さんとか、柏木陽介くんとか、そこを超えないとっていう気持ちがあったので、難しかったですね。その時、自分自身の役割としては途中から出て流れを変えるとか、そっちに結構フォーカスしていましたね。スタメンじゃなくても、試合に出続けることを意識していました」
先発で出場したい気持ちを持ちながらも、サブとして与えられた役割をしっかりこなすことに主眼を置き、ポジティブな気持ちで代表活動に参加していたという清武は「ザック(アルベルト・ザッケローニ監督)さんの時に言われたのが、『常に同じパフォーマンスを出せるようにしてほしい』ということでした。それを聞いた時に、やっていることや考え方は間違っていないなと思いましたし、監督としても計算できる選手が使いやすいんだなと思いました」と語った。自身が代表に入っていた時のスタメンとサブには、力の差があると感じていたという清武だが、「今の代表は昔の代表と、何かちょっと違う」と指摘する。
2010年代の日本代表と現在の日本代表の最大の違いについて、清武は「個々の質じゃないですか」と言う。「普通に海外でやっている選手ばかりなので。海外で経験していることは、日本のなか、Jリーグでやっていることとは、はるかに違うと思います。僕がいた時の日本代表は、海外(組)の選手に引っ張られていたところがあったと思うのですが、今は全員が海外でやっているから、その基準値がある。そこは大きな違いじゃないかなと思います」と続けた。
「能力のアベレージも、サッカーIQも高い」清武が見た森保ジャパン
だからこそ、欧州のクラブで活躍している選手が日本代表でプレーできていない現状には、もどかしさも感じていると話す。
「海外に行っている選手が増えて、ほぼ日本代表もそのメンバーなので、プライドも絶対にある。それこそ旗手選手はJで活躍して、海外に行って、バリバリやっていてスタメンで出ている。そういう選手が毎回試合に出られないというのは、不思議な感覚ですよね。攻撃もできるし、守備もできるし、ボールも捌ける。Jリーグにいた時からめちゃくちゃ良い選手だと思っていました。自分の時は、やっぱり上の選手たちがすごいと思っていたし、実際に力が抜けていたので、そこに食らいつく気持ちでした。でも、今の日本代表は、誰が出場しても普通にできると思うんです。実力はそんなに変わらない。攻撃に突出している選手がいれば、バランスの良い選手もいる。その組み合わせだけだと思うので、そういう意味ではもどかしいのではないかなと思います」
では、日本代表で試合に出られる選手、試合に出られない選手を分けるものは何なのか。
「そこは深いと思うんです。何かものすごく突出したものがあれば別ですが、基本的に今の日本代表選手は結構、トータル的な能力のアベレージも、サッカーIQも高い。だから、これはもうどの世界にもあると思うことなんですが、監督の好き嫌い、求めているもの、やってほしいこと、求めるコンディションになってくると思うんです。だから、森保さんが今選んでいる26、27人のなかで大枠に入っていても、いざ試合に登録する23人を選ぶ時に森保さんの考えもあるだろうし、チームとしてのコンセプトもあるので、力のある選手でも出られない。そこは、外から見ていてももどかしいなと思います。だから、監督も本当に難しいと思いますよ」
日本代表に招集されて活動に参加すれば、必然的に長距離の移動を強いられる。クラブでの活動に専念していれば、コンディション調整などもやりやすい。しかし、清武は日本代表への招集を断ることを考えることはなかったという。
「あの時は楽しかったですからね。試合ができる喜びもそうですし、注目されている喜びもありました。国のために、日本代表のために戦えているっていうのは、自分のなかですごく特別な思いがあったので。疲れとかもあまり気にしなかったです」
先発できない時もチームのために前向きに戦ってきた清武は、U-23日本代表ではロンドン五輪、そして2014年にはブラジル・ワールドカップ(W杯)のメンバー入りも果たした。その経験は「僕にとってはすごい財産でした。自分のサッカー人生が、オリンピックに出て、W杯に出て、自分の名前も覚えていただけましたし、こういう経験を今、年齢を重ねるごとに、次の世代に伝えていけることが、自分にとってプラスだと思います」と、日本代表として立った世界最高峰の舞台の経験が、今後のサッカー人生にも、かけがえのないものだと語った。
[プロフィール]
清武弘嗣(きよたけ・ひろし)/1989年11月12日生まれ、大分県出身。大分トリニータU-18―大分―セレッソ大阪―1.FCニュルンベルク(ドイツ)―ハノーファー96(ドイツ)―セビージャFC(スペイン)―C大阪―サガン鳥栖。卓越したテクニックと攻撃センスを武器に持つ日本屈指のMF。U-23日本代表としてロンドン五輪、日本代表では2014年のブラジル・ワールドカップを経験した。
(河合 拓 / Taku Kawai)