J1昇格、スタイル確立…56歳日本人監督の手腕を代表OBが絶賛「すぐにでもオファーを出したい」【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】新潟の松橋監督を教え子の栗原勇蔵氏が絶賛
今シーズンのアルビレックス新潟は、残り2試合となったJ1で16位と残留争いに巻き込まれているが、ルヴァンカップではクラブ史上初の決勝進出を果たした。決勝戦では名古屋グランパスにPK戦の末敗れたが、タイトル獲得にあと一歩のところまで迫った。元日本代表DF栗原勇蔵氏が新潟を率いる指揮官について話した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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初の頂点に迫った新潟だが、同時にその戦いぶりはリーグ戦からも評価されている。決して恵まれた資金力があるわけではないクラブだが、高いポテンシャルを秘めた選手を国内外から獲得して、戦える戦力に育てていく力は以前からも評価されてきた。現在、チームを率いている松橋力蔵監督は、このプロジェクトの中心にいる存在と言っていいだろう。
そんな松橋氏は、現役時代を日産自動車サッカー部(現横浜FM)でプロのキャリアをスタートさせ、京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)、ジャトコを経て指導者に転身。横浜FMのスクールコーチを皮切りに育成部門に携わり、2017シーズンからはトップチームのヘッドコーチなどを務め、2021年から新潟に活躍の場を移した。
横浜FM一筋で活躍した栗原氏も、指導を受けた一人だ。「(松橋氏が)トップチームに昇格してから、コーチと選手の関係でやらせてもらっていた」という栗原氏は、指導者としての松橋氏について「ずっと長くユースの監督をやっていた方なので、若い子たちの気持ちとか、若い子を扱うのにはすごく長けている。うまくベテランも使うし、若い子たちのモチベーション上げるのも上手です。それプラス、昔ながらのスポコン、スポーツ根性みたいなところも持ち合わせていて、上手にやっているんじゃないかなとは思います」と、自身の持っている印象を語った。
また、指導者としては現在、プレミアリーグでも活躍しているオーストラリア人監督の影響を濃く受けたのではないかと指摘する。「基本的にアンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム監督)の時に(横浜FMで)コーチを務めていたので、そういうところを見て、いいところだけ自分で取り入れているのではないでしょうか。あとは日本に合う点、合わない点を冷静に分析して、自分なりにアレンジしている印象はありますね。攻撃的なスタイルはやりつつも、ハイラインすぎずとか。そういうのを冷静にコーチとして見ていて、ポステコグルーのいいところは取り入れつつ、足りないところをアレンジしてやっているのかなと、見ていて感じるところがあります。頭のいい人なので、いいところは取り入れてやっているんだろうなという感じはしますね」と、ポステコグルー監督のスタイルを受けつつも、新潟の選手たちや日本のサッカーにより合う形にして、チームに落とし込んでいると分析した。
また、性格については「気持ちがすごく強くて、肝っ玉は座っている人」と言い「『どうすればいいんだ』とか動揺している様子を選手が感じてしまうと、『この人が言っていること鵜呑みにしていいのか』と、不安になったりします。(でも、松橋監督は)『ダメでもしょうがねえだろ』というくらいのスタンスでやっているので、選手たちもついていきやすいと思いますし、それが結果についてきているから、尚更すごいなと思います。これはサッカーに限らずだと思うんですけど、上に立つ人のメンタリティーはすごく持っているので、それはすごくばっちりハマっているのかなと感じます」と、人心掌握がしっかりできていることを指摘した。
そんな松橋監督には、他のJクラブからのオファーが殺到していると一部では報じられている。現役時代に所属していたことを考えれば、横浜FMに戻ってくることがあっても不思議ではない。横浜FM一筋で現役時代を過ごし、現在もクラブシップ・キャプテンを務めている栗原氏は、そんな日が来るのを待っている一人だ。「もちろん、そうですね。自分が(監督を)決める立場だったら、今日、もうすぐにでもオファーを出したい」と、2014年に退任した樋口靖洋監督以来となる日本人監督の就任を熱望した。
すでにJ1では、川崎フロンターレの鬼木達監督、セレッソ大阪の小菊昭雄監督、アビスパ福岡の長谷部茂利監督の退任が発表されており、今オフは多くの監督が動く可能性もある。新潟を初タイトルまで、あと一歩のところに導いた56歳の指揮官の去就も注目されることとなりそうだ。