大学で覚醒「びっくり」…周囲も驚きの急成長 プロ争奪戦に発展、J内定逸材が狙う「偉業」
来季広島入りが内定、明治大MF中村草太が躍進した背景
サンフレッチェ広島入りが内定している明治大のMF中村草太は、168センチと小柄だが、判断の質が非常に高く、スピード、アジリティー、スキルをハイレベルで併せ持った大学サッカー界きってのアタッカーだ。
ブレイクの時を迎えたのは2年の夏。前橋育英高校時代は2トップの一角だったが、明治大では栗田大輔監督によって左サイドハーフにコンバートされた。
「縦突破とクロスというプレーが加わって、視野が広がったし、自分の武器の新たな出し方を見つけることができた」と、サイドアタッカーとして縦へのスピードあふれるドリブルと、切れ味抜群のカットインを武器に頭角を現した。
さらに昨年はサイドからFW、新たなポジションであるトップ下・インサイドハーフに主戦場を移すと、高校時代とは異なる感覚を覚えた。
「サイドをやっていた時は、自分がボールをもらってから躍動するオンのタイプの選手だと思ったのですが、FWになってゴールから逆算して考えてプレーをすると、だんだん自分はオフのところの動きが武器なんじゃないかと思うようになったんです」
フィニッシャーとチャンスメーカーの両方を経験したことで、再びFWに戻った時に攻撃のアプローチの引き出しが多くなっている自分に気づいた。
スピードを生かして直線的に抜け出してゴールに迫る姿は高校時代と変わらないが、それ一辺倒にならずに相手DFの視野から消える動きや、逆に視野に入り込んでからボールを受けて叩いて背後のスペースに潜り込むなど、オフ・ザ・ボールの動きを工夫することで、より自分がいい状況でボールを受けたり、効率良くシュートポイントに辿り着いたりすることができる。その動きを警戒して相手が距離を置いてきたら、シンプルに足もとでボールを受けてドリブル突破を仕掛けて一気にゴールを陥れる。
その変幻自在なプレーによって、彼は「分かっていても止められない存在」へと化していった。
「オフという長所に気づけたことが本当に自分にとってのターニングポイントでした」
2年連続となる得点&アシスト王「ダブル受賞」の可能性も
この手応えは結果にも如実に現れた。昨年度の関東大学リーグ1部において、中村は16ゴール12アシストをマーク。現行方式になってから史上初となる得点王とアシスト王をダブル受賞するという快挙を成し遂げた。
「自分自身が一番びっくりしています」と語るように、まさに彼は大学2年から3年にかけて周りも驚くような成長曲線を描いた。一気に大学サッカー界を代表する選手になった彼のもとには、当然のように多くのJクラブから誘いの手が伸びた。争奪戦が激化していくなかで、今年5月に発表されたのはサンフレッチェ広島への加入内定だった。
「サンフレッチェはチームの雰囲気もサッカー面でもスッと入ることができたのが決め手でした。3-4-2-1のインサイドハーフをやらせてもらったのですが、オンでもオフでも力を発揮できるこのポジションと、ほぼオールコートマンツーマンで、奪ったらすぐに前にアクションというスタイルはいつも明治大で積み重ねている部分と変わらないことがスッと入れた理由だと思いました」
進路も決まり、中村は今、明治大の勝利のために全身全霊を尽くしている。リーグ戦では筑波大学と熾烈な優勝争いを繰り広げる。しばらくゴールから遠ざかる期間もあったが、得点ランキング2位タイの11ゴール、アシストランキング1位の8アシストをマーク中だ。
「育ててくれた明治大学のために、圧倒的な結果を出すだけではなく、キャプテンとして後輩に残していく、伝えていくことも大事にしていきたいと思います」
2年連続の「ダブル受賞」という偉業と、関東制覇、その先にあるインカレ制覇に向けて。紫紺の10番は、結果を出しながら、後輩たちに向けて背中で語り抜く。
(FOOTBALL ZONE編集部)