Jリーグの大きな転換点 秋春制移行、外資参入…米記者が期待する“黒船”による「革命」【インタビュー】
レッドブルのクラブ買収で期待されるJリーグだけに留まらない効果
1993年のJリーグ開幕を機に目覚ましい進歩を続けてきた日本サッカー界が、今後どのような道へ進み、何が必要とされるのか? 日本のサッカー事情に精通したアメリカ人スポーツジャーナリスト、ダン・オロウィッツ氏が、そのためのヒントを提言する。今回のテーマは、Jリーグへの“外資系企業の参入”について。同氏が期待する波及効果とは?(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全3回の3回目)
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アニメやゲームなど日本の“サブカル”好きが高じて、2006年末に移住してきたオロウィッツ氏。翌年、スタジアムでJリーグを観戦すると、その“応援文化”に魅了された。以来、日本のプロサッカーにハマり、11年から本格的にライターの道へ。日本の英字新聞「ジャパンタイムズ」記者として長く活躍し「サッカーを中心に日本のスポーツを世界へ」というモットーの下、Jリーグに限らず日本代表やWEリーグを含めた“日本サッカー”を海外へ届けてきた。
Jリーグの歴史の半分以上をつぶさに見続けてきたオロウィッツ氏の目に、この国が誇るプロリーグの推移はどのように映っているのだろう。「最近Jリーグのスタジアムに足を運ぶと感じるのですが、2019年頃と比較して同じ勢いがあるかは正直言い難い」。同氏の口から漏れた言葉は、福音とは言い難い少々厳しさのこもったものだった。
オロウィッツ氏の中で5年前には今以上の勢いがあったと考える根拠は、当時、ヴィッセル神戸に所属していた元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタの存在。海外の大物助っ人に支えられたブームがあったとの見方を示す。一方、10月20日時点で今季のJリーグ入場者数が1044万5133人と歴代最多を更新したことに「イニエスタなしでその数字を残したことは評価できます」ともしている。
とはいえ、欧州に流出する代表クラスの日本人選手の代わりとなる大物の参戦は、今後もJリーグが発展を続けていくうえでカギの1つになると考えているようだ。2026年から始まる「秋春制」に触れ、次なる大スターの必要性をこう語る。
「秋春制では、厳冬期でもお客さんを呼べるよう、クラブやリーグにとって何らかの対策が求められるでしょう。その一例として考えられるのが、イニエスタのような、またはそれ以上と言えるビッグネーム獲得。こうしたことをクラブは覚悟できているか……」
そんななかで注目される動きがオーストリアに本社を置く大手飲料メーカー「レッドブル・ゲーエムベーハー/Red Bull GmbH」による大宮アルディージャの買収。Jリーグの歴史で外資系企業が初めて単独オーナーになる。そんな“黒船到来”をオロウィッツ氏は「非常に興味深い」とし、さらに、期待を次のとおり口にした。
「大宮はレッドブルの下でどこまで成長できるのか。海外オーナーのひと味違う視点によって何ができるのか楽しみですし、革命が起きれば面白いと思っています」
ただ、外資参入に寄せる期待はJリーグに対してだけではない。オロウィッツ氏は、コロナ禍の2021年から始まった日本の女子プロリーグにこそもたらされる効果は大きいと考える。
「レッドブルが女子チームの大宮アルディージャVENTUSに対しても何ができるか気になりますし、楽しみです。今までは日テレ・東京ヴェルディベレーザや三菱重工浦和レッズレディース、INAC神戸レオネッサがリーグを牽引してきたと言えるでしょう。ここにもう1チーム加われば、日本の女子サッカー界やWEリーグへの大きな貢献になるはずです」
31年目のJリーグに訪れた大きな転換点。女子サッカー界を含めて今後どのような変化がもたらされるか目が離せない。
[プロフィール]
ダン・オロウィッツ/米ペンシルベニア州フィラデルフィア州出身、スポーツジャーナリスト。2004年に大学生として日本で留学を経験し、卒業後の06年末に再来日。翌年のJリーグ観戦で日本のサッカーに魅了され、11年からサッカーライターの道へ。国内専門メディアを経て、18年から5年半余り英字新聞「ジャパンタイムズ」運動局に勤務。サッカーだけでなく、19年ラグビーワールドカップや22年北京冬季オリンピックなどの取材も行った。現在はフリーランスとして活動している。
(FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi)