無所属を経てたどり着いた「人生の分岐点」 元日本代表MFに巡ってきたJ3への挑戦権【インタビュー】

長谷川アーリアジャスールが抱く感謝の思いとは【写真:(C) GAINARE TOTTORI】
長谷川アーリアジャスールが抱く感謝の思いとは【写真:(C) GAINARE TOTTORI】

元日本代表MF長谷川は町田退団後、フリーの期間を経て鳥取へ

 元日本代表MF長谷川アーリアジャスールは、J3ガイナーレ鳥取で2シーズンを戦い、2024シーズン限りで現役を引退する。鳥取加入まで約半年間の“無所属”期間もあり、自身で受けたショックも大きかった。欧州移籍も経験した36歳が、改めて感じた鳥取の魅力、そしてクラブへの感謝の思いを明かしてくれている。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 2021年から22年までFC町田ゼルビアでプレーした長谷川。契約満了で次年度のクラブを探すこととなる。しかし、待っていても一向にチームが決まらなかった。「間違いなく自分の人生においての分岐点」と語る約半年間……。東京都社会人サッカーリーグ1部SHIBUYA CITY FCで練習参加させてもらうなど、自らプレーの質を落とさないよう努力した。

「チームがなかった半年間はもちろん厳しい状況でしたけど、今となってはすごく必要な時間だったというのが素直な感想です。改めてサッカーがやれる場所だったり、プロサッカー選手として試合に出られるのが素晴らしいことだなということも感じることができました」

 長谷川はポジティブに捉えて前を向く。苦しい時期を乗り越え、23年4月に鳥取から代理人経由でオファーが届く。「いつかは引退が来ると、この半年間で考えたりもしました。チームが決まらない状況を考えた時に、この先の長い人生を考えた時にやっぱりそういうタイミングが来るわけで……。それに対しての準備期間のような感覚にも陥りました。間違いなく、自分の人生においての分岐点になるのではないかと感じています」と、当時スパイクを脱ぐという決断も頭によぎったことも正直に明かしてくれた。

「今年でプロ18年目。毎年キャンプに行ってシーズン初めに準備してっていうのが続いていたなかで、いきなりサッカーというものがなくなってしまいました。すごく悔しいという思いと、自分自身に何もできなかったもどかしさみたいなものもありましたね」

 そんな苦しい時期を支えてくれたのが、家族やファン・サポーターの声だ。「自分に関わってくれているたくさんの方々。家族や、普段支えてくれているファン・サポーターの皆さんがさまざまなメッセージをくれました。自分のために動いていただいているのを目の当たりにし、もう一度自分がピッチに立ってプレーすることが恩返しになるんだと。サッカーを続けたい一心で、その半年間というのは過ごせました」と、寄せられた応援の言葉を糧にして努力を重ねる。

「当時はめちゃくちゃきつかったですよ。鳥取に加入することが決まった時にもたくさんのメッセージが届いて、1人じゃないんだと。ありがたいなと感じていました」

 そんな長谷川は、同じような厳しい状況に直面した過去があった。2015年夏にセレッソ大阪から渡ったスペイン2部レアル・サラゴサ。初の海外挑戦だったが、約半年で契約解除に。そこから2か月間はクラブのオファーをひたすら待った。こうした経験があったからこそ、再び訪れた試練も乗り越えることができている。

 オファーの声をかけてくれた鳥取には「改めて、すごく感謝しています」と長谷川も素直な気持ちを吐露。「ほとんど行ったこともなかった」初めての土地に単身赴任で乗り込んだが、「僕は加入した当初、正直鳥取砂丘しか知らなかったです。実際に来て、ここは大自然に囲まれているし海も山も近い。星もすごく綺麗に見えます。生きているという感覚をとても感じられる場所ですね」とその魅力を語った。自然豊かな環境に囲まれ、街でもたくさんの出会いを経験。長谷川はラストシーズン、鳥取で充実した日々を送っている。

[プロフィール]
長谷川アーリアジャスール(はせがわ・あーりあ・じゃすーる)/1988年10月29日生まれ、埼玉県出身。横浜FMユース―横浜FM―FC東京―C大阪―レアル・サラゴサ(スペイン)―湘南―大宮―名古屋―町田―鳥取。元日本代表。J1通算251試合17得点、J2通算97試合14得点、J3通算33試合3得点。持ち前のパスとドリブルを駆使しチャンスを演出する。22年シーズンで町田を契約満了となりフリーとなっていたなか、23年4月に鳥取に加入。8月からは副キャプテンに就任し、チームを支えている。

(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)

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