大規模スタジアムは「日本では実現困難」 日本サッカーのさらなる発展へ…米記者が勧める“理想形”【インタビュー】
アメリカの最新鋭スタジアムは日本で可能?
目覚ましい進歩を続けてきた日本サッカー。さらなる発展を遂げるべく、Jリーグをはじめとした国内リーグは今後どのような道へ進み、何が必要とされるのか? 日本のサッカー事情に精通したアメリカ人スポーツジャーナリスト、ダン・オロウィッツ氏に見解を訊いた。今回のテーマは“スタジアム”。母国の状況と照らし合わせて考える、あるべき形とは……。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全3回の2回目)
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2006年末に日本に移住し、翌年、スタジアムで観戦したJリーグに魅了されたオロウィッツ氏。それ以来、この国のサッカーにハマり、11年からは本格的にサッカーライターの道へ。日本の英字新聞「ジャパンタイムズ」記者として長く活躍し「サッカーを中心に日本のスポーツを世界へ」というモットーの下で、Jリーグに限らず日本代表やWEリーグなど、この国のサッカーを海外へと届けてきた。
Jリーグを見続けて17年余り。オロウィッツ氏はその立ち位置について「総合的に世界のトップ10~15の中に入ると考えています」と語る。「競技レベルだけでなく、チーム運営やファンの文化やインフラ面、Jリーグが築き上げた文化は素晴らしい」と、日本サッカー界への称賛の言葉が次々と口をついて出る。
発展を続ける国内プロリーグで、オロウィッツ氏が注目する1つがスタジアムだ。今年2月に開業した「エディオンピースウイング広島」にも足を運んだそうで「欧州にあってもおかしくない素晴らしさ。こうしたスタジアムがもっと増えるといいですね」と未来への期待を口にする。
とはいえ、満足できることばかりではないようだ。オロウィッツ氏は、今年10月初旬にJリーグ主催で行われ、Jクラブ関係者や日本の建築・設計関係者らが参加した「2024年度 北米MLS(メジャーリーグサッカー)スタジアム・トレーニング施設視察会」に話を向けた。
アメリカといえば、来年のクラブワールドカップ(W杯)や2026年の北中米W杯で会場として使用される「メルセデス・ベンツ・スタジアム」(ジョージア州アトランタ=収容7万2000人)を筆頭にスポーツインフラの整備、発展が凄まじい。世界最高のスポーツエンタメ文化に伍することはできずとも、日本でも大規模な最新鋭スタジアム建設を目指すべきなのだろうか。
オロウィッツ氏は「そのような(規模の大きい球技専用)スタジアムを日本で展開するのは実現困難」とキッパリと言い切る。代わって理想例として挙げたのが「オーランド・シティ・スタジアム」(フロリダ州オーランド=収容2万5500人)や「ジェオディス・パーク」(テネシー州ナッシュビル=収容3万109人)。どちらも「エディオンピースウイング広島」(収容2万8520人)と大きく変わらない規模だ。
さらに、こうした規模のスポーツ施設が今後「都心に新設されること」が重要と力説する。
「東京こそ交通の利便性が良い場所で、広島のようなスタジアムがあれば最も好ましい状況だと思えますね。川崎フロンターレの本拠地『等々力陸上競技場』も球技専用スタジアムへの改修が計画されていますが、東京にもそろそろ何か生まれないといけない。日本は世界4位の経済大国で魅力も多い国。この状況をスポーツ界が生かさないといけません」
また、高齢社会が今後も進む観点で考えれば、いかにスタジアムへアクセスしやすいかが重要度を増すのは推して知ることができるだろう。これは東京に限った課題ではない。時代に合わせたスタジアムの最適解へ、日本各地で追求が求められる。
[プロフィール]
ダン・オロウィッツ/米ペンシルベニア州フィラデルフィア州出身、スポーツジャーナリスト。2004年に大学生として日本で留学を経験し、卒業後の06年末に再来日。翌年のJリーグ観戦で日本のサッカーに魅了され、11年からサッカーライターの道へ。国内外専門メディアを経て、18年から5年半余り英字新聞「ジャパンタイムズ」運動局に勤務。サッカーだけでなく、19年ラグビーワールドカップや22北京冬季オリンピックなどの取材も行った。現在はフリーランスとして活動している。
(FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi)