運命のJ2最終節…自動昇格&プレーオフ圏争いが大混戦 長崎の“大逆転”浮上、6クラブが激戦【コラム】
J2は残り1試合、自動昇格の残り1枠&昇格プレーオフ進出4枠の争いが熾烈
2024シーズンのJ2はいよいよ最終節を迎える。すでに清水エスパルスのリーグ優勝とJ1昇格は確定しているが、自動昇格の残り1枠と3位から6位までに与えられる昇格プレーオフ進出の全貌はラスト1試合の結果に委ねられることになった。
自動昇格の可能性があるのは2位横浜FCと3位のV・ファーレン長崎だ。横浜FCは清水とともに自動昇格にリーチをかけながら、ここ3試合で1分2敗と足踏み。その間に、3位の長崎が4連勝を挙げて、ついに勝ち点3差まで迫ってきた。最終節で、もしも横浜FCがレノファ山口FCとのアウェーゲームに敗れて、長崎がホームのピーススタジアムで愛媛FCに勝利すると勝ち点で並ぶが、現在の得失点差が1であるため、長崎が逆転する。
長崎の下平隆宏監督はアウェーで劇的な勝利を飾ったジェフユナイテッド千葉戦の記者会見で「まだ何が起こるか分からないという状況なので、我々は自分たちにフォーカスしてホーム最終戦でしっかりと勝って、まずはリーグを終えたい」と落ち着いている。とにかく愛媛に勝利して、横浜FCの結果がどうなっても、3位としてプレーオフの2試合を新スタジアムで戦うことができ、自力で昇格を決められるアドバンテージがあるからだ。
横浜FCもそれは同じだが、やはり昇格目前で足踏みした事実があり、このままプレーオフに入った場合は内外のプレッシャーと戦わなければいけなくなる。最終節の相手は開幕戦で1-1と引き分けた山口だ。組織的な守備の構築に定評のある志垣良監督の下、堅実な戦いぶりで夏場までプレーオフ圏内にいたが、8月31日のファジアーノ岡山戦からまさかの6連敗で、プレーオフ争いからは脱落してしまったが、最終盤で持ち直してきている。
横浜FCとしては引き分けでも、長崎の結果にかかわらず自動昇格が決まるシチュエーションだが、四方田修平監督がどうマネジメントしていくか。栃木SC戦は出場停止だったFW髙橋利樹は前からの守備に加えて飛び出し、ポストプレーと頼りになるが、8試合ぶりとなるゴールで昇格をもたらせるか。横浜FCは二桁得点の選手こそいないが、7得点のカプリーニ、5得点の櫻川ソロモンなど、前線で決め手のある選手はいる。山口の堅守をいかに崩して、昇格へのゴールをこじ開けていけるか。
長崎にとっては愛媛に勝利することが、逆転昇格への絶対条件。一巡目はアウェーで2-1と勝利しており、10試合勝利のない愛媛に、しっかりと勝利できるか。規格外の突破力を武器に、16得点を叩き出しているマテウス・ジェズスを筆頭に、千葉戦では復帰戦の決勝ゴールを記録したエジガル・ジュニオ、技巧的なチャンスメイクとフィニッシュで10得点8アシストのマルコス・ギリェルメ、長崎の”ファンタジスタ”笠柳翼など、強力なアタッカー陣の得点が鍵を握る。彼らを中盤からサポートする安部大晴もチームの歯車として重要な役割を果たしそうだ。
5位山形と6位千葉によるプレーオフ圏“直接対決”が最終節で実現
横浜FCと長崎のどちらかが自動昇格、それを逃したほうが3位でプレーオフに進むことは決まっている。また4位ファジアーノ岡山も6位以上が決まっており、プレーオフは残り2枠を、モンテディオ山形、千葉、ベガルタ仙台の4チームで争う。岡山としては4位を死守して、プレーオフの準決勝をホームで行いたいので、ここまで13得点の岩渕弘人を筆頭に、勝利のための得点を狙いにいくだろう。
最終戦で大一番となるのは5位の山形と6位の千葉による直接対決だ。前回対戦では山形がアウェーで、激闘の末に3-2で勝利しており、過去5試合でも山形が4勝1分と圧倒的な強さを誇っている。悲願のJ1昇格を目指す千葉にとしては、アウェーの地でもポゼッションをベースとした自分たちのスタイルを信じて戦い抜けるか。千葉のキーマンは23得点のエース小森飛絢だ。長崎戦では勝負を決めるPKを相手GK若原智哉に止められ、終盤の勝ち越しを許す流れにつながってしまった。試合後の取材では淡々と答えていたが、地元記者の「次はヒーローになってください」という声掛けには「はい!」と力強く頷いていた。
逆に山形は渡邉晋監督が構築する組織的な守備で小森を封じながら、鹿島アントラーズから地元に帰ってきた土居聖真を起点に、ディサロ燦シルヴァーノなど前線が決定力を発揮できるか。引き分ければ山形のプレーオフ進出はほぼ決定するが、千葉も山形に勝利して、岡山が鹿児島に敗れた場合は得失点差で4位に浮上できる可能性がある。もし引き分けだった場合、仙台がホームで大分トリニータに勝利すれば千葉を逆転するが、こちらも引き分けなら山形と千葉が勝ち残る。山形は千葉に敗れ、仙台が勝利した場合のみ脱落となるが、千葉は山形に負けた場合、仙台が大分と引き分けても順位が入れ替わってしまう。
おそらく山形も千葉も、まずは目の前の試合で勝利を目指すことになるが、ベンチには仙台の試合経過が伝えられるはずで、70~80分を過ぎてきたところで、その状況を確認しながらの戦いになるかもしれない。自動昇格の2枠目を争う戦い、そしてプレーオフ争いとダブルで目が離せないJ2の最終節で、どんなドラマが待つのか。そしてプレーオフによる昇格3チーム目は12月1日の準決勝、12月の決勝に命運が託される。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。