監督がセーブ連発で涙「感動」 長期間ベンチ外は「モヤモヤ」…苦労人GKが最強助っ人陣を“封殺”
京都のGK太田岳志が広島の最強助っ人陣を抑え勝利の立役者に
京都サンガF.C.が優勝争いを繰り広げるサンフレッチェ広島を倒した。11月3日、J1リーグ第35節で対戦して1-0の勝利。公式戦43試合で得点中の広島をシャットアウトし、残留に大きく前進した。立役者は出場停止の守護神ク・ソンユンに代わって今季4試合目のゴールマウスに立った33歳のGK太田岳志だった。曺貴裁監督も腐らずに日々トレーニングに励んでいたベテランの活躍に「感動した」と涙を流した。
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胸を打った。敵地で広島ゴールに立ちはだかった太田の姿は何倍も大きく見えた。まずは前半16分、ペナルティーエリア内から鋭いコースに放たれたMF松本泰志のシュートが飛ぶ。これに太田が好反応でボールに触り、ポストに当たって枠外へ。同31分には相手の助っ人FWゴンサロ・パシエンシアの強烈シュートをセーブしてまたピンチを救った。崩されても最後の砦として守り切った。
後半にチームが先制。この1点を全員が身体を張り、勝ち点3につなげた。前回対戦は0-5で大敗した相手にクリーンシートでの勝利。歓喜の輪に外れて感極まっていたのが曺監督だった。目を真っ赤に腫らして試合後の会見室に入って来た指揮官は、太田について涙をこらえながら話した。
「僕が就任した時から出場機会もそんなに多くなかった。そんな彼が普段のピッチでずっと何をしていたか。感傷的になったというよりかは感動した。心動かされる選手。何歳になっても成長する。少し恥ずかしいですけど、そう感じました」
2020年にJ2だった京都へ加入した太田。だが2年間は公式戦で出番なし。ベンチ外も少なくなかった。22年にカップ戦で初めて出場し、昨年はポジションを掴んだが、夏にク・ソンユンが加入してまたもベンチを温める日が増えた。何度も何度も悩んだ。でも毎日練習場へ行き、チームメイトにシュートを打ってもらって成功体験を積んだ。プロ12年目、「うまくなっているな」を見つけて日々のモチベーションへとつなげていた。
「京都に来てからもメンバー外の期間も長かった。モヤモヤとした気持ちは消化するのが難しいけど、出ている選手がこれだけ頑張っているんだから俺も頑張ろうと」
この日は自信を持ってピッチに立った。「味方がコースをうまく狭めてくれたので僕としてはそこまで難しい対応ではなかった。比較的に心に余裕をもってセーブできていました」と明かしたベテラン。まさに職人。日々の準備が実った瞬間だった。
GKは残酷なポジションでもある。セカンドキーパーは本当に精神力が試される。だが、その姿を見ていない仲間はいない。全員がその背中に勇気づけられ、己を奮い立たせる材料としている。太田のサッカー人生を彩ったこの日の一戦。それはまた、京都の仲間たちにとっても嬉しい試合となったはずだ。