2度の手術も…勇気貰った一言「俺と比べればまだまだ」 世界を驚かせた13年前の絆【インタビュー】
長崎・秋野央樹が明かした絆、札幌・深井一希は「勇気をくれる存在」
2011年に行われたU-17ワールドカップ(W杯)でベスト8進出を果たした世代は、「94ジャパン」と呼ばれている。そんな世界を驚かせたメンバーの一人だったのが、V・ファーレン長崎のMF秋野央樹だ。2度の手術から復帰し、悲願のJ1昇格を目指している。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全3回の3回目)
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1994、95年生まれが中心となった「94ジャパン」には、FW南野拓実(モナコ)、MF喜田拓也(横浜F・マリノス)ら改めて見ても豪華なメンバーが並んだ。フランス、アルゼンチン、ジャマイカと同居したグループリーグを2勝1分で首位通過。決勝トーナメントでは、ニュージーランドを破って8強入りした。
準々決勝でブラジルに2-3と惜敗してベスト4入りは叶わなかったが、世界を驚かせるには十分だった。一方で「もうなんか今まであまり感じたことのない壁というか、もう何もできなくて。本当に世界との差を感じた」という秋野。柏レイソルでデビューし、湘南ベルマーレを経て2019年7月に長崎に加入した。
世界での経験も糧に、J1昇格のミッションを託されたが、2021年に選手生命の危機に直面する。「1回目は練習中に急に足首に痛みが走って、最初はドクターやトレーナーと話をして、そんなにかからない怪我だねという話だったんです」。しかし、なかなか痛みが取れず、病院を回る日々が半年に渡り続いた。
「復帰までに1年近くかかってしまいました。もうこれ手術しかないなというところまでたどり着いて。手術に至るまでの過程に後悔もないですし、自分の意思でそう言ってやってもらったので、ドクターを責めることも全くないですし。見てもらえたドクターだったりトレーナーには本当に感謝しかないです」
2022年には右足首の怪我から約1年ぶりに復帰を果たしたが、今度は左大腿直筋肉離れで2度目の手術。そんな辛い時期に、連絡をくれたのが北海道コンサドーレ札幌の深井一希だ。「94ジャパン」の主力として活躍したが、左右合わせて5度の膝の手術。そのたびに復帰を果たし、「不屈の男」とも呼ばれる。
「一希から『俺と比べればまだまだだよ』っていう感じの励ましというか。僕も彼とはすごく仲良くさせてもらっていて、一希と比べるものじゃないですけど、彼の怪我からの復帰をもう何度も見てきているので。自分もこのくらいの怪我で下向いてるようじゃダメだなって。勇気をくれる存在ではありました」
同期からの励ましももらった秋野は今季、不動のレギュラーでチームに欠かせない存在になった。自身と同じくキャプテンを務める喜田とは、今でもオフに食事に行く仲。「ああいうキャプテンシーとか、あれだけのビッグクラブでキャプテンで、リーグ優勝もして、すごく刺激をもらっている存在」と明かす。
コロナ禍の2020年には、13人が集まってオンライン同窓会を開催し、ファンの間でも話題になった。「みんながお互いを意識し合っていて。この前で言うと(南野)拓実がああやって日本代表で試合に出て、すごく刺激をもらった。すごい仲間に恵まれたなと思っています」。13年が経った今も絆は変わらない。
[PROFILE]
秋野央樹(あきの・ひろき)/1994年10月8日生まれ、千葉県印西市出身。柏レイソル―湘南ベルマーレ―V・ファーレン長崎。柏のアカデミーで頭角を現し、年代別の日本代表でも活躍した。昨オフには契約満了となり、トライアウトにも参加。しかし、前代未聞の再契約を果たし、今季はキャプテンを務める。
(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)