J1初年度で躍進も…町田が抱える集客課題 OBが明かす苦労「無料チケットも重要だけど」【インタビュー】

Jリーグが過去最多の入場者数を更新した【写真:徳原隆元】
Jリーグが過去最多の入場者数を更新した【写真:徳原隆元】

【専門家の目|太田宏介】Jリーグの観客動員数が増加、今後の課題を太田宏介氏が考察

 Jリーグは10月20日、今シーズンの入場者数が1044万5133人となりリーグ戦における最多入場者数を更新したことを発表した。今後も日本サッカー界発展のため、集客は継続して大きな課題となるなか、FC町田ゼルビアでクラブアンバサダーを務める元日本代表DF太田宏介氏も「本当に地道な作業」と、その苦労を語っている。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 今季の入場者数は、20日に発表された時点で、2019シーズンのリーグ戦総入場者数1039万7482人を上回った。各クラブで新規集客が行われた結果が表れており、今シーズンJ1に昇格した町田も徐々に入場者数が上がっている。J2リーグを戦っていた2023年シーズンはホーム最多が1万1918人だったのに対し、今季はJ1昇格に伴いホーム最多が1万3506人となった(国立競技場開催を除く)。

 クラブアンバサダーを務める太田氏は「サポーターたちをどうやって増やしていくか。クラブ内で何度も議題として取り組んできました。Jリーグ全体でも観客動員数は伸びていますし、今後さらに伸ばすことは大事ですね。単純に数年で結果が出るものではないので、コツコツと取り組む必要があります。本当に地道な作業です」と、J1初年度で上位に位置する町田も、集客の点では苦労していることを明かした。

「町田も、よりファンの方々に誇りをもってもらえるようなクラブにならなければならないです。既存のサポーターが新たな仲間や知り合いをスタジアムに連れてきてくれるような積み重ねが大事。無料チケットを配ってスタジアムに来てもらうきっかけを作るのもすごく重要ですけど、もっともっとそれぞれのクラブが地域との関係をコツコツ作り上げていくことが一番かなと思います」

 またクラブに関わる太田氏だからこそ、そうした事業面(観客動員など)と現場のサッカーの面での両立が難しいことにも言及する。「例えば、観客数はすごく伸びてチームとしても成長しているなかで、肝心の結果が出ないクラブがあれば、逆に結果は出ても事業面で苦労しているクラブもあります」。町田はその面で、株式会社サイバーエージェントが母体となったことの恩恵を受けている。

「サイバーエージェントさんが入って、劇的にチームの状況が変わりましたね。選手の獲得も含めて、スタジアムや施設の面もそうです。クラブの発展に必ず必要となる要素にはなってくるのかなと思います。地域に応援してもらえるクラブが増えることで、金銭的な面での環境も変わってくるかもしれません。事業で成功された方がスポーツで投資する例がもっと出てきてほしいですね」

太田宏介氏が欧州のスタジアムと日本のスタジアムについて話した【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
太田宏介氏が欧州のスタジアムと日本のスタジアムについて話した【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

 一方で、Jリーグを盛り上げる施策として現在ではSNSの活用やメディアとの関係性も大事になってくる。「今は選手も自己発信できる時代になってきています。それぞれがコンテンツを持っているなかで、アクティブにポジティブな発信し続ける選手、結果を出し続ける選手をよりピックアップしてほしいです。各地域に根付いた発信を拾っていただいたり、メディアの方が取り上げてくれると選手としてもすごく嬉しいですよね」と、時代の変化に対応していく必要性を説く。

「地域に根付いたメディア、新聞社、行政が一体になってクラブを応援する。そんな関係性や発信ができたら、今以上に良い効果が生まれるかもしれません。スター選手の発掘も、選手個人が頑張るのはもちろんですが、メディアの人たちと一緒に作り上げていくものでもある気がします」

 こうしたSNS活用やメディアとの協力体制が強化されれば、さらにJリーグを盛り上げることができる。企業との関わり方も含め、Jリーグも転換期を迎えているのかもしれない。太田氏も「Jリーグは今後、アジアでもっと抜けたリーグにならなきゃいけない」と目標を掲げる。1993年に産声を上げた日本のプロリーグは、今後課題を1つ1つクリアしていくことでまだまだ伸びしろがあるはず。プロ選手、そしてクラブに携わる役員の目線を持つ太田氏も、その様子を見守っている。

(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)

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太田宏介

太田宏介(おおた・こうすけ)/1987年7月23日生まれ。東京都出身。FC町田―麻布大学附属渕野辺高―横浜FC―清水エスパルス―FC東京―フィテッセ(オランダ)―FC東京―名古屋―パース・グローリー(オーストラリア)―町田。Jリーグ通算348試合11得点、日本代表通算7試合0得点。左足から繰り出す高精度のキックで、攻撃的サイドバックとして活躍した。明るいキャラクターと豊富な経験を生かし、引退後は出身地のJクラブ町田のアンバサダーに就任。全国各地で無償のサッカー教室を開校するなど、現在は事業を通しサッカー界への“恩返し”を行っている。

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