三笘薫も参考に…19歳“逸材”が一皮剥けた J1で奮闘、尊敬する先輩が放った意外な“一言”【インタビュー】

湘南・石井久継【写真:(C)SHONAN BELLMARE】
湘南・石井久継【写真:(C)SHONAN BELLMARE】

普段よく会話を交わす先輩・田中聡へ感謝「すごいいい先輩です」

 湘南ベルマーレの19歳FW石井久継は、注目を集めるJ1期待アタッカーの1人だ。プロ1年目で奮闘する石井には、普段からアドバイスや悩みを聞いてくれる経験豊富なチームメイトがいる。23年には2種登録でトップチームへ参加し、苦い思いも経験した石井が、そんな大切な同僚とのエピソードを明かしてくれた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 石井は湘南U-18在籍時の2022年8月、トップチームへ2種登録。同年は出番がなかったものの、翌23年にはJ1リーグ戦4試合、カップ戦2試合に出場。天皇杯ではファジアーノ岡山戦(2-0)でゴールをマークしている。今季から正式にトップチームへ昇格。怪我もあったが、ここまでリーグ14試合1ゴールの活躍を見せている。中学に上がると同時に湘南のU-15に加入し、ここまで駆け上がってきた。

 湘南では4-4-2の左サイドハーフ、4-3-3の左ウイングなどでプレーを重ねる。7月6日のJ1リーグ第22節浦和レッズ戦(3-2)ではJ1初得点。その際は鋭い仕掛けから豪快に右足を振りぬいた。高い技術を持つ19歳は「自分のプレースタイル的にこれが飛び抜けているというのがあるわけではない」と謙遜するが、突発的に繰り出す攻撃のアイデアや仕掛けはファンを魅了している。だが2種登録でプレーした去年は、自身の課題も感じていたようだ。

「最初のほうは(チームの中で)めちゃくちゃ仲がいい選手がいたわけではないので、気を遣って固まったプレーしちゃったり、自分を出せないという期間はあったかなと思います」

 それでも成長できているのは、温かく迎え入れてくれたチームメイトの存在が大きい。「めっちゃ仲良くならないと、僕はいじっていじられてはできないタイプ」と自身の性格を表す石井だが、近い世代のチームメイトから徐々に交流を深めた。現在はMF田中聡とよく話すようで、22年8月から1年間ベルギー1部コルトレイクへ期限付き移籍も経験した“先輩”との関係性を教えてくれた。

「(元々)そんなに接点はなかったんですけど、コルトレイクから帰ってきてすぐ2人で食事に行って、海外の話だったりをしました。そういう経験のある選手と話すのが僕は好きで、色々な話を聞きましたし、本当に去年は残留争いとか色々ありましたけど、僕にも気を遣って声をかけてくれましたね」

 石井が今季初出場となった4月3日のリーグ第6節、ホームの東京ヴェルディ戦(1-2)では、「自分の良さをあまり出せなくて」と悩んでいたという。その話をした際に田中は「考えすぎなんじゃない? もうちょい楽に考えてやってみれば?」とアドバイス。その後、石井は次のサンフレッチェ広島戦でもピッチに立ち、「今までのトップの試合で、去年も含めて一番手ごたえを感じた」9分間を過ごすことができたようだ。

「ドリブルや、パスだったり全部うまくいって、あのアドバイスからいい意味で何も考えないように、自分の思ったプレーをするようにできて今の自分があります。そういったところは一番の変化かなと思います。(7月の浦和戦では)初ゴールも生まれましたし、聡くんには本当に感謝しています」

 そんな“先輩”田中を、石井は「日本では僕が見ていたなかではずば抜けています。守備でも攻撃でも本当にどのチームでも活躍する選手の1人です」と絶賛。さらに「彼が海外に行って、そんなにうまくいかなかったという感じで帰ってきました。このレベルでめちゃくちゃ活躍できなかったというのは衝撃でしたし、本人が謙遜しているだけかもしれないけど……。いつも僕も頑張ろうと思う言葉をかけてくれるので、すごいいい先輩です」と、尊敬する田中について嬉しそうに語った。

左サイドで戦う石井は三笘のプレーも参考に

 前線を主戦場とする石井は、左サイドでプレーすることが多い。「小さい頃から技術練習はよくしていた」と本人が話すとおり、持ち前のボールタッチは長年の努力の結晶だ。「ゴールに向かうプレーがずっと好き」だと明かす石井は、参考にしているプレーヤーの1人に日本代表MF三笘薫(ブライトン)の名前を挙げる。

「三笘選手のプレーはよく見ています。ほかにも海外の本当に足の速い選手だったりドリブルがうまい選手、ちょっと遊び心のあるドリブルだったりも見て参考にしますね。自分も技術があるほうだと思っているので、そういう映像が自分の頭の中に残っていたほうがパッと(咄嗟にそのプレーが)出てきたりするので。仕掛けた時にスピード乗ったドリブルとかが出るように意識しています」

 今シーズンは怪我で2か月離脱した時期もあり、プロとなった1年目の出場はまだ限られた時間にとどまっている。だが田中の一言で気持ちに余裕が生まれ、自身でもそれを実感。さらに上のレベルでプレーする選手たちからも、盗めるものは盗んでいく。19歳とは思えない落ち着いた受け答えを見せる話す姿が印象的で、メンタル面の成長が伺えた。「試合に選ばれた時には本当に攻撃的にチームの力になれるようにしたい」と改めて気概を示す石井には、さらなる飛躍の未来に期待が懸かる。

[プロフィール]
石井久継(いしい・ひさつぐ)/2005年7月7日生まれ、岡山県出身。福山ローザス・セレソン―湘南U-15―湘南U-18―湘南。幼少期より多彩な技術を持ち、小学生時代から“天才少年”として注目を集める。22年8月より2種登録でトップチームへ。24年から正式に昇格した。U-15から継続的にアンダー世代の日本代表にも選出されている。

(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)

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