突如やってくる「0円提示」 給与の仕組みや契約…元Jリーガーが語る“お金事情”【インタビュー】
J1クラブは「パーティーの規模、宿泊するホテルも違いました」
現役時代にセレッソ大阪、モンテディオ山形など5クラブを渡り歩き、2022年に現役を引退した舩津徹也氏は現在、資産形成コンサルタントとしてセカンドキャリアを歩んでいる。4度の移籍を経験し、J1、J2、J3とJリーグの全カテゴリーでプレーした同氏が語るJリーグの給与や契約などの“お金事情”とは?(取材・文=福谷佑介)
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舩津氏が初めてJ1の舞台に立ったのはセレッソ大阪に期限付き移籍で加入した2012年だった。2009年にJFLからJ2に昇格したカターレ富山でプロとしてのキャリアをスタートさせて4年目のこと。目標にしていたJ1の世界は環境面、待遇面ともに、やはり段違いだった。
「スポンサーパーティーの規模が違ったりとか、宿泊するホテルも違いましたね。セレッソの時はホームゲームのたびに前泊があったんですけど、『こんなところに泊まれるのか』というくらい、いいホテルで驚きました。あとはキャンプですよね。J1のクラブは海外に行くんで、海外のキャンプに行きたいなと思っていました。僕の時は宮崎だけだったので行けませんでしたけど……」
それぞれのカテゴリーではクラブの財政状況も、環境も、当然ながら“お金事情”も異なる。サッカー界は選手の給与は「基本給」と「インセンティブ」に分かれる。金額が決まっている年俸が基本給となり、チームの勝利に応じて支払われる「勝利給」や試合出場の有無で支払われる「出場給」といったインセンティブが、クラブごとに定められている。どのカテゴリー、クラブにもあり、大きな違いになるのが「勝利給」だという。
「J1だと平均して1勝につき4、50万円くらいじゃないですかね。例えば30万円のチームがあったり、90万円のチームがあったり、クラブの予算や規模によって違いますが、平均すると4、50万円ぐらいだと思います。J2だと平均したら10万円くらいだと思います。J2でもJ1にいたチームや上位のチームであれば2、30万円というのはありますが、下位のチームとかはもっと低くて、間を取ると10万円くらい。J3だと、もっと低くなりますね」
J1クラブやJ2でも予算のあるクラブで、試合に絡んでいる選手は基本給に手をつけず、この「勝利給」をはじめとするインセンティブ分で生活することができるという。「クラブによっては出場給や無失点給、契約によっては得点給があったりして、選手の契約内容によって違います」。インセンティブ部分はクラブや、選手個々によって、さまざまな契約がある。
本当にある“0円提示”「どんな話をしてくれたか、正直、覚えていません」
プロの世界は契約社会で、シビアなものでもある。Jリーグの世界では契約満了をクラブから知らされることを、俗に“0円提示”と言う。舩津氏も山形在籍2年目となった2015年シーズンで契約満了となり退団。この時に実際に“0円提示”を受けた。
「本当に『0円』で提示されます」。シーズンが終わりに近づくと、選手たちはクラブの強化担当者に呼ばれ、クラブに来季も契約する意志があるかどうかを示す書類を手渡される。そこには契約延長の意志を示す「A」や、契約満了を示す「C」のローマ字とともに、来季年俸の提示額が記されている。「C」の場合は、この提示額に「0円」と記載されているという。
「初めてのことだったので『えっ?』って感じでした。その年は試合にも出ていましたし、周りの選手にも『お前はクビにはならないだろ』と言われていたので……。クラブの方がどんな話をしてくれたか、正直、覚えていません。数字を見て『これからどうしよう……』となっていました」。予想だにしなかった放出で、舩津氏も実際に“0円提示”を目の当たりにして、頭が真っ白になった。
突如としてやってくる瞬間。今は資産形成コンサルタントとして働く舩津氏は、だからこそいつ来るか分からぬ事態に“備える”必要性を痛感する。「選手の頃っていつまでも稼げる、この先もしばらくは給料は変わらないんじゃないかって思っちゃう。僕自身、山形のあとも現役を続けられて、14年間プレーできましたが、お金の準備をしてこなかったということは後悔しています」。実体験があるからこそ伝えられる。華やかな世界には、こんなシビアな側面もあるのだ。
[プロフィール]
舩津徹也(ふなつ・てつや)/1987年2月9日、大阪府出身。立正大淞南高—びわこ成蹊スポーツ大—カターレ富山—セレッソ大阪—カターレ富山—モンテディオ山形—ザスパクサツ群馬—FC岐阜。Jリーグ通算356試合19得点。2022年で現役を引退。現在は資産形成コンサルタントとして投資信託などを中心に、資産形成のコンサルティングを行っている。