久保建英の“ドリブル力”はスペイン屈指 ビッグクラブ移籍へのラストピース「もう少し」【現地発コラム】

ジローナ戦の途中出場した久保建英【写真:Getty Images】
ジローナ戦の途中出場した久保建英【写真:Getty Images】

ジローナ戦で途中出場の久保建英、スペインメディアの評価は「大いに苦労」

 公式戦2試合ぶりにベンチスタートとなった久保建英は、勝利したジローナ戦で後半途中から出場し、終了間際に見せ場を作った。

 レアル・ソシエダはインターナショナルブレイク直後の10月19日のラ・リーガ第10節で、ジローナとアウェーで対戦。多くの選手を各国代表に送り出したことからイマノル・アルグアシル監督は、前節アトレティコ・マドリード戦からスタメンを3人変更。ワールドカップ予選で長距離移動を強いられたなか、2試合(サウジアラビア、オーストラリア)に出場した久保はベンチスタートとなった。

 出番が訪れたのは1-0で勝っていた後半20分だった。相手に警戒されたことやチームがミケル・オヤルサバルの先制点を守るため徐々に保守的になっていったことで、時折仕掛ける姿勢を見せるも攻撃に転じる機会が少なく、持ち味を発揮できない時間が続く。

 さらに終盤、ジローナの猛攻を受けたことで、守備に追われる時間が長くなった。それでも終了間際、自陣で巧みにボールを奪うと、勝利を確実なものにするためにゆっくりと時間を使いながらドリブルし、DFをかわしてペナルティーエリアに侵入してシュートを打ったが惜しくもサイドネットへ。今季の通算3点目とはならなかったが、最後の最後で存在感を発揮した。久保のここまでのラ・リーガ成績は、10試合(先発7試合)、658分出場2得点0アシストとなっている。

 決定機の数でジローナを上回ったソシエダは、安定した試合運びで1-0と勝利。今季最高のパフォーマンスと評するメディアがいるほどの出来で、公式戦3試合ぶりに勝ち星を挙げた。ラ・リーガ成績を10試合3勝3分4敗の勝ち点12とし、11位に浮上した。

ソシエダのユニフォームがプリントされたバス【写真:高橋智行】
ソシエダのユニフォームがプリントされたバス【写真:高橋智行】

 ジローナ戦の久保に対するスペインメディアの評価は、出場時間の短さや勝利している状況で投入されたことが影響し、全体的に低いものとなった。

 クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「2人のマークに遭いながらもボールをキープした。シュートを狙うが枠を捉えられなかった」と寸評。オーリ・オスカルソン、ハビ・ロペスと並びチームワーストタイの2点(最高5点)がつけられた。

 もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「右サイドで相手にダメージを与えることに大いに苦労するなど、簡単にはいかなかった。終盤にドリブルを試みたが成功しなかった」と評し、採点なし。全国紙の「マルカ」「AS」はともに1点(最高3点)とした。

カタルーニャ州のラジオ局「RAC1」のミケル・アグット・リエラ記者【写真:高橋智行】
カタルーニャ州のラジオ局「RAC1」のミケル・アグット・リエラ記者【写真:高橋智行】

本調子ではなかった日本人レフティー「ジローナにとって幸運だった」

 カタルーニャ州のラジオ局「RAC1」のミケル・アグット・リエラ記者に試合後、この日の久保のパフォーマンスについて伺うと、本来の姿とは違うと感じていたようだ。

「久保がピッチに入った時、ラ・レアルは快適にプレーしていたが、ジローナが終盤、同点ゴールを目指して最後の力を振り絞り、ペナルティーエリアに近づこうとより積極的にプレスをかけてきたので、思うようなプレーをやらせてもらえなかった」

「普段は非常に爆発力があり俊敏な選手だが、代表戦の疲れがあってかリズムを欠いていたように見えたし、出場時間が30分程度と短かったことも影響しただろう。今日はそれほど切れがなく、スペースを上手く生かせていなかった」

 また、ミケル・アグット記者は「久保が本調子ではなかったことは、ジローナにとって幸運だった」ともコメント。もし久保が本来のパフォーマンスを発揮していた場合、ジローナはより苦しめられたと考えていた。

 さらに久保について伺うと、10年以上前からその存在を認識していたようだ。「私の中で彼は、バルサのカンテラ時代からマジョルカ時代、そして今のラ・レアルに至るまで、ずっと“素晴らしいサッカー選手”のままだ。高いクオリティーを備え、違いを生み出せる魅力的な選手だよ」と高評価した。

 続けて、「先日見たデータで、久保は確かラ・リーガで5番目に多くドリブルを仕掛け、成功率が4番目に高い選手だったと記憶している。ラ・レアルも非常に優秀なクラブだけど、パフォーマンスをもう少し安定できれば、より優れたクラブでプレーできるレベルにあると私は思っている」とビッグクラブ移籍の可能性を示唆した。

 ソシエダはジローナ戦を皮切りに、来月のインターナショナルブレイクまでの23日間で7試合、3日に1試合という過密日程に臨んでいる。今季再び欧州カップ戦の出場権を手に入れるためにも、まずはこの勝利をきっかけに今季初の連勝を成し遂げることが重要だ。そのためには久保の貢献が必要不可欠となる。

 チームは次戦、ベオグラードで24日にマッカビ・テルアビブと対戦し、27日のラ・リーガ第11節でオサスナをホームに迎える。久保が再びチームを勝利に導くようなパフォーマンスを発揮できることを期待したい。

(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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