高卒で悩んだ進路…両親から「大学でやるなら応援する」 プロ入り諦め、16戦16発の現在地

阪南大学の10番を背負う金本毅騎(10番)【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
阪南大学の10番を背負う金本毅騎(10番)【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

阪南大2年生タレント金本毅騎、努力を重ねプロ注目の逸材に

 阪南大学は今年の総理大臣杯で12年ぶりの日本一に輝いた。前線にはゴールを量産し続けるプロ注目の2年生タレントがいる。184cmの屈強なフィジカルを誇るFW金本毅騎だ。

 金本の武器はトラップのうまさとシュートの多彩さにある。相手の状況を見て、ボールを前のスペースに出したり、足もとに収めたりしてから、そのボールと足との距離感に適したシュートフォームを選択する。驚くべきはどちらを選んでもコース、スピードが申し分ない強烈なシュートが放たれることだ。

 スペースにボールを置いた時はテイクバックから鞭のように足をしならせてボールをミートし、足もとに置いた時には膝下のシャープなスウィングで捉えて枠に正確に飛ばしていく。総理大臣杯でも豪快なシュートと繊細なシュートを使い分け、大会4ゴールをマーク。そして関西学生サッカーリーグ1部では16試合で16ゴールをマーク。得点ランキングトップを独走する。

「もともとシュートは得意だったのですが、ユースの時はちょっと足の振りが大きかったので、大学に入ってから少しずつ膝下の振りを意識するようになって、普段の練習からそこをトライしていたら、徐々にシャープに振り抜けるようになりました」

 彼は高校時代、セレッソ大阪U-18に所属していたが、そこで中心的存在だったかというとそうではなかった。高校1年生の時はほぼ出番はなく、2年生になりコンスタントに出番を得て高円宮杯プレミアリーグWESTで4ゴールをマークするも、3年生では前年よりも出場機会が減り、わずか1ゴールに終わった。当然、夢だったトップ昇格も果たせなかった。

「高卒プロになる気持ちは本当に強かったし、諦め切れなかった」

 別の道を模索するべく、両親の母国である韓国Kリーグクラブのキャンプにも参加したが、プロ入りは実現せず。ギリギリまで金本のことを待ってくれた阪南大への進学を決めた。

「もちろん最後まで結論は簡単ではありませんでした。JFLも考えたのですが、親も『大学で4年間必死にやるなら応援する』と言って背中を押してくれたので決めました。決めた以上はもうグズグズしていられない。4年と言ってもすぐなので、1日1日を無駄にせずにやりたいと覚悟を決めました」

「今、注目されていますが勘違いはしていない」

 大学に入ってからより自分自身を見つめ直した。

「もともとユースの時に北野颯太(C大阪)など周りの選手がうまかったので、自分はどういうところで違いを見せるのかをずっと考えていたんです。そこでシュートの技術を磨くという発想を持てた。大学に入ってからも本当に周りのレベルが高いと思ったので、これまで以上に自分と周りに目を向けて考えました」

 日頃の練習から常に実戦を想定してシュートまでの動作、打つ感覚を大事にし、自主トレではパスのうまい選手を捕まえて、いろいろなバリエーションのパスを出してもらい、そこで咄嗟の判断でのボールを置く場所と技術、複数のシュートスウィングの活用を徹底して磨いた。

「ちょっとずつ、ほんまに少しずつですけど、コツを掴み始めています」

 今の地位はまさに努力の賜物。当然、ここで満足をするような人間ではない。

「今、注目されていますが勘違いはしていない。僕の中で事実として変わらないのは、自分は大した選手じゃないということ。今まで華々しい成績を残してきたわけではない。僕が心の中で決めているのは、ハングリー精神を忘れずに、コツコツ人が見えていないところでやる。そういうところで違いを見せていかないと大学サッカーでもやれないと思うので、そこは大事にしています」

 抜群の素材を持ち、かつまだまだ伸びしろ十分。これだけで十分ロマンを抱かせてくれる選手だ。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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