「12/31」が示すメンバー固定化の懸念 3バックが激戦区、森保ジャパン「最新序列」考察【コラム】

森保ジャパンの最新序列を考察【画像:FOOTBALL ZONE編集部】
森保ジャパンの最新序列を考察【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

1勝1分のW杯最終予選10月シリーズを経て、各ポジションの序列を考察

 森保一監督率いる日本代表は、北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の4試合を終えて、3勝1分の勝ち点10と順調に勝ち点を伸ばしている。1-1で引き分けたオーストラリア戦もホームで勝ち点3が欲しかったのは間違いないが、スタートダッシュに失敗し、監督交代に踏み切ったライバルに直接対決で勝ち点3を与えなかったことで、大きなアドバンテージを持って折り返しとなる。11月シリーズへと向かう流れは悪くない。

 この間、森保監督は3-4-2-1を継続的に使ってきたなかで、左右のウイングバックと2シャドーに関しては攻撃的なタレントをベースに、数多くの組み合わせにトライしており、この2ポジションの選択肢が広がった。その一方で、ボランチに関してはキャプテンの遠藤航(リバプール)と守田英正(スポルティング)の固定度が強く、遠藤を体調不良で欠いたオーストラリア戦は田中碧(リーズ)がスタメン起用された。しかし、彼の個人としての評価というよりも、新たなシステムのなかで普段組んでいない2人の役割を噛み合わせる難しさが連盟面に出た。

 守田と田中は川崎時代の同僚で、これまで森保ジャパンで何度も一緒にプレーしたことがある。それでも3-4-2-1の中で、守田が遠藤と構築してきたバランス関係が田中とでは違ってくること、そもそも田中がこのシステムに慣れていないことで、5バックのオーストラリアに対して攻撃面の関わりが慎重になってしまった。試合を重ねるほど良くなっていくだろうが、キャプテンの遠藤の体調に問題がなければ予選突破に大きく関わる11月のアウェー2試合も、遠藤と守田がファーストセットになる可能性は高い。ウイングバックと2シャドーと違い、基本90分の出場がベースになるボランチの起用法に関しては出番のなかった藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)も含めて、課題になっていきそうだ。

 また9月と10月で合計31人の選手が招集されているが、実際に試合で起用されたのは19人のみ。2人のGKを含む12人が一度も起用されていない。その中には4試合すべてにベンチ入りしながら出場チャンスがなかった菅原由勢(サウサンプトン)のような選手もいる。さらに長友佑都(FC東京)、望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)、関根大輝(柏レイソル)といった本職サイドバックの選手たちが、攻撃的な3-4-2-1を継続する中で起用されないまま4試合を終えたことは気になるところだ。

3バックは板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹が連続起用された【写真:徳原隆元】
3バックは板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹が連続起用された【写真:徳原隆元】

10月シリーズで左右ウイングバックともバリエーションが増加

 GKは4試合ともに鈴木彩艶(パルマ)がフル出場しており、4大リーグの中でもGKの評価が厳しいセリエAで経験を積む鈴木が、正GKのポジションを確立している状況だ。大迫敬介(サンフレッチェ広島)と谷晃生(FC町田ゼルビア)に関してはどちらが2番手か、現時点で判別はできない。最終予選で招集外となっている前川黛也(ヴィッセル神戸)がほぼ差のない4番手と見られる。Jリーグの終盤戦で優勝を争う3クラブの守護神が、代表のGK枠を争う関係でもあるのは興味深い。

 3バックは4試合とも板倉滉(ボルシアMG)、谷口彰悟(シント=トロイデン)、町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)のセットだった。オーストラリア戦で谷口のオウンゴールによる失点を喫したが、崩された形の失点が一度もなく、攻撃的なウイングバックを生かすシステムの中で、抜群の安定感を見せている。ここに中国戦でA代表デビューしたパリ五輪世代の高井幸大(川崎)も加わっていくポテンシャルは感じさせたが、怪我で10月シリーズは辞退となってしまい、おそらく次のシリーズも難しいのは残念だ。左の候補である中山雄太(FC町田ゼルビア)も離脱しているなかで、3バックの全ポジションをこなせそうな瀬古歩夢(グラスホッパー)にも引き続きアピールを期待したい。

 ただ、このポジションには本来、冨安健洋(アーセナル)と伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)という欧州有数のビッグクラブに所属するタレントがおり、彼らを怪我で欠く状況であることを忘れるべきではない。彼らが復帰した時に、森保監督がどういう評価をしていくかは分からないが、現在スタメンを張る3人に対する信頼度が高まったことは確かだろう。3バックの中での競争もあるが、個人で守り切れる冨安や伊藤が再び入ることで、最終予選で一度も使われていない4バックが見直される可能性もある。

 左右のウイングバックは三笘薫(ブライトン)と堂安律(フライブルク)がファーストセットになっているが、右サイドに関しては堂安がシンプルに一番手というより、もう1人のレギュラークラスである伊東純也(スタッド・ランス)が後半のブースターとして控える構図となっている。堂安に関しては途中から2シャドーに上がって、伊東と併用することも可能だ。左は三笘が明確なファーストチョイスではあるが、オーストラリア戦では中村敬斗(スタッド・ランス)が同点ゴールを導く仕掛けとクロスなどで評価を上げた。こちらも中村の投入に応じて、三笘を左シャドーに上げるプランが新たなオプションとして加わり、アウェーで勝利したサウジアラビア戦と合わせて、左右ともにバリエーションが増えたことは10月シリーズのポジティブな要素だ。

シャドーで出場した(左から)南野拓実、鎌田大地、久保建英【写真:徳原隆元 & 岩本太成】
シャドーで出場した(左から)南野拓実、鎌田大地、久保建英【写真:徳原隆元 & 岩本太成】

久保&鎌田と柔軟に連係を図れる南野は2シャドーの軸に

 左に関しては前田大然(セルティック)も攻守両面で、三笘や中村とも違った特長を発揮しており、戦力的に充実している第2次森保ジャパンの中でもストロングなセクションになりつつある。2シャドーはウイングバックの起用法にかなりリンクする関係になっているが、4試合スタメンの南野拓実(ASモナコ)を軸に久保建英(レアル・ソシエダ)と鎌田大地(クリスタル・パレス)がスタメン候補となっている。同じシャドーでも久保は10番、鎌田は8番タイプで、万能性の高い南野はどちらと組むかで多少、攻守の役割を変えているのは興味深い。ポジションも久保と組む時は左、鎌田と組む時は右になる。森保監督も南野のそうした能力を買って、2シャドーの軸にしているはずだ。

 ここにウイングバックとのポリバレントで右は堂安、左は三笘や中村がおり、試合の状況に応じて組み合わせを変えていけるのは3-4-2-1のメリットだろう。FWの浅野拓磨(マジョルカ)は怪我で10月シリーズは招集外となったが、ウイングバックとシャドーの関係性も強まっているなかで、今回は出番のなかった大橋祐紀(ブラックバーン)、ボランチの候補でもある旗手怜央(セルティック)など、タイプの異なるタレントを今後どう起用していくのか。10月の2試合で見られた起用法が定着していくと、このポジションでも交代出場を含めて、メンバー固定化がさらに強まっていく可能性もある。

 1トップは上田綺世(フェイエノールト)がスタメンの1番手で、小川航基(NECナイメヘン)がジョーカー的な存在として、評価を高めている。大橋や浅野、10月シリーズでメンバー外だった細谷真大(柏レイソル)は1トップとシャドーの両睨みと考えられるが、最終予選だけでなく世界の戦いに向けて、まだまだ良い意味で競争が求められるポジションだ。上田も前線でのボールキープなど、これまでより力強さが感じられるとはいえ、4試合で得点できたのはアウェーのバーレーン戦のみ。小川はバーレーン戦とサウジアラビア戦でゴールを決めたが、最終予選で未招集の町野修斗(ホルシュタイン・キール)やオナイウ阿道(オセール)など、所属クラブでの結果も含めて、ハイレベルな競争に期待したい。結局このポジションのレベルアップなくして、本大会でベスト8以上に躍進することは難しいだろう。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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