森保監督へ11月に期待したい“大胆采配” 高校生なら最高…今こそ必要な“多少の無理” 【コラム】
10月シリーズ、パリ五輪世代を招集も出番はなし
日本代表は10月のサウジアラビア戦、オーストラリア戦を1勝1分で乗り切った。
日本が所属するグループCのFIFAランク(2024年9月)は、日本が16位、オーストラリアが25位、サウジアラビアは56位、バーレーンは76位、中国が91位、インドネシアは129位。現在の勝点はほぼこのFIFAランク順に並び、日本が「10」、オーストラリア、サウジアラビア、バーレーンが「5」、インドネシアと中国が「3」。日本がグループに君臨し、2位争いが激烈になっているという状況だ。
この2位グループのうち、日本は9月にバーレーン、10月にはサウジアラビアのアウェー戦という難しい戦いを2勝で終わっている。来年3月にはこの2チームとの連戦が待ち受けるが、ともにホームゲーム。つまり10月の大一番まで負けずに乗り切ったことで今後についてはいろいろな試行錯誤ができる余裕が生まれた。
11月のアウェー2連戦、インドネシア戦と中国戦は簡単に楽観視できるようなものではないが、もしも1試合を落としても首位はキープできる。
そう考えると、このアジア最終(3次)予選の残り6試合で日本は多少のリスクがあったとしても現在の課題に取り組んでもいいのではないだろうか。今の日本の課題は起用する選手にある。
10月の2試合で起用された選手を見てみよう。サウジアラビア戦で試合に出場した選手は鈴木彩艶、板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹、遠藤航、守田英正、堂安律、南野拓実、鎌田大地、三笘薫、上田綺世、伊東純也、中村敬斗、前田大然、久保建英、小川航基。オーストラリア戦では、欠場した遠藤航に代わって田中碧が出場し、前田大然が出場しなかった。
つまり2試合で出場したのは17人。非常に固定されたメンバーで戦っていることが分かる。この点についてオーストラリア戦後の森保一監督はこう語っている。
「ゲームプランとして、先行勝ち切りもできれば、我々が理想としていないようなアクシデントが起こって先制されたとしても、後半にしっかりギアを上げて勝ち切る、追いつく、逆転はできなかったですけど逆転をするということを想定してメンバー編成をしました」
「コンディション面で言えば、大幅にターンオーバーすることがもしかしたら正解かもしれません。けれど、トレーニングでまた(選考を)ゼロに戻して、(新たなメンバーで)原則的なところから始めてやることが、勝利の可能性、確率を上げられるかというと、今回これまでの最終予選に関しては、できるだけ選手を変えずにトレーニングし、そして前の試合で経験したことを積み上げとして次の試合に生かしていけるようにということで考えています」
ここまで負けを喫していないということを考えると、この考え方は正解だっただろう。だが、余裕ができた今は別の観点があってもいい。
と言うのも、このメンバーの中にはパリ五輪のメンバーが誰も入っていないのだ。前回のワールドカップ・アジア最終予選では、同じく10月にアウェーのサウジアラビア戦、ホームのオーストラリア戦があった。
そのときのメンバーでは東京五輪のメンバーだった、冨安健洋、中山雄太、田中碧が出場している。また、当時から堂安律や久保建英らは日本代表に選出されていた。もちろん東京五輪とパリ五輪のメンバーには経歴や経験に違いがある。だが、日本の将来を考えるとパリ五輪メンバーあるいは同世代以下の選手たちが、もっと日本代表に入ってこなければいけない。
誰が日本代表に入ってこられるのか、実際の試合で試してみなければならないだろう。また、せっかく2022年カタール・ワールドカップ(W杯)のメンバーに選ばれていた町野修斗や、今年のカタール・アジアカップのメンバー入りしていた細谷真大が10月のメンバーに入ってきていないのは寂しい限りだ。
海外を見れば、今年のEURO(欧州選手権)では22歳のリッカルド・カラフィオーリ(イタリア)、21歳のジュード・ベリンガム(イングランド)、ジャマル・ムシアラ(ドイツ)、シャビ・シモンズ(オランダ)、19歳のアルダ・ギュレル(トルコ)、17歳のラミン・ヤマル(スペイン)らが台頭している。
日本が世界の国々と戦っていくためには、多少無理をしても国際経験を重ねさせることが必要ではないだろうか。そしてそのためには、真剣勝負の場に立たせてみて、何ができるかを試さないといけないだろう。
もしかしたら森保監督も同じように若手を伸ばそうと思い、望月ヘンリー海輝、高井幸大、細谷、関根大輝、藤田譲瑠チマをメンバーに入れて帯同させ、日本代表の雰囲気に慣れさせようとしているのかもしれない。
だとしたら11月は思い切ってそういうメンバーを使うチャンスだろう。すでに経験のある選手たちだけでも2チーム分いる今の日本代表で彼らを使うのなら、多少の無理は必要だ。
1998年4月1日、まだJリーグでフル出場経験がなかった17歳の市川大祐をアウェーの韓国戦という厳しい試合で90分プレーさせた岡田武史監督ではないが、日本の将来を考えるとそれくらいの大胆な采配でもおもしろい。武者震いしながら高校生が出てきたら最高ではないだろうか。
(森雅史 / Masafumi Mori)
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。