浦和と明暗…J1残留確定「企業秘密」による脅威 意思統一と創造性が共存「期待している」

浦和を苦しめた東京Vの戦術とは?【写真:徳原隆元】
浦和を苦しめた東京Vの戦術とは?【写真:徳原隆元】

東京Vの城福監督がクロスについて明言

 東京ヴェルディは10月19日のJ1リーグ第34節で浦和レッズに2-1の逆転勝利を収めた。前半から浦和を苦しめたのは、サイドからの速いクロスが次々にゴール前へ入ってきたこと。城福浩監督は「ちょっと企業秘密がある」と笑ったが、原則を選手に与えたうえで創造性の発揮を促すやり方が形に現れた。

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 東京Vは4-4-2をベースに守備ブロックを作る浦和に対し、3バックの利点を生かしながら両サイドを広く使った。サイドチェンジから縦に持ち出す形や、あるいは意表を突いたアーリークロスもあったが、際立ったのはボールスピードの速いものが多かったこと。浦和の守備陣が先に触ったとしても、そのコースが変わったボールも含め何かが起こりそうな気配を感じさせた。例を挙げるなら、先日の日本代表とオーストラリア代表の試合で両チームのゴールがいずれも、クロスにより誘発されたオウンゴールだったことだろうか。

 実際にこの攻撃は浦和のセンターバック2人にとって、かなりの圧力になっていたようだ。DF井上黎生人は「クロスの場面を何回も作られたし、コーナーキックも10本以上あった。まずはニアサイドを消して、そこから全員でシュートブロックに行くというのも、少し隙間が空きすぎて後手になってしまった」と話し、DFマリウス・ホイブラーテンはシンプルに「15回ぐらいコーナーキックやクロスが上がってくれば、いつかゴールされてしまう」と、フェイスガードを装着して強行出場した疲労も見せながら話した。

 城福監督は、その中でも一工夫したことを明かした。後半に向けて「クロスに入っていく人数は確認したけど、もう1つは上げるのではなくニアゾーンを徹底的に崩せと。上げそうだけど、もう1回崩せと。そんなに簡単に上げなくていいから、メリハリをつけろといった。1点目もそこからスタートしたと思うし、我々らしくやり続けることができた」と話す。

 実際に、後半14分に右サイドで得たフリーキックを素早く始めたところから1つ切り崩し、中央に入れたボールのこぼれ球をDF綱島悠斗が蹴り込んで同点に追い付いた。後半31分に綱島が再び決めたのはコーナーキックからのヘディングだったが、それを獲得したのは城福監督が強調したニアゾーンへ右サイドから侵入し、ファーサイドに飛ばしたクロスからMF翁長聖が放ったシュートが相手に当たったプレーだった。

 城福監督はクロスのボールスピードについて「我々は最初にどこを狙うか、そうでなければどういうボールでどこを狙うか。ちょっと企業秘密があるのでそういう言い方で申し訳ないですけど」と苦笑いし、記者会見場も笑いに包まれたが、その先にある意思統一と創造性の関係についてこう話している。

「例えば我々がニアゾーンを取って、中を見ないで入れる場合もある。その時にはどういうボールが来るのか、そこは意思統一している。ただ、そこに合うかどうかは相手の質も、ボールの質も、入る人の質もある。クロスを何回も入れて入らなかったとしても、そこは変えない。やり続けることが、次の彼らのアイデアにつながる。その制約の中でアイデアを出してもらうことに期待している」

 勝ち点を51に伸ばした東京Vは、18位のジュビロ磐田に残り試合で逆転される可能性がなくなりJ1残留が決まった。2008年以来のJ1で過ごしたシーズンだが、若手の多いチームはさらなる伸びしろも感じさせながら来季を見据えたシーズン最終盤を戦っていく。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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