川崎の名将と“同期”、退任発表で「力が入らない」 監督の言葉に思わず「堪えられなかった」
小林がG大阪で同点弾、鬼木監督への思い溢れる
同点ゴールを挙げたヒーローが口にしたのは、悔しさだった。川崎フロンターレは10月18日のJ1リーグ第34節でガンバ大阪とホームで対戦し、1-1で引き分けた。立ち上がり7分に先制を許した川崎は、後半23分に鬼木達監督が4人を同時に交代して、掴みかけていた流れをしっかりと握ると、後半36分にロングフィードをMF家長昭博がコントロールして、左へパスを出す。これを受けたFW遠野大弥がクロスを入れると、そこで打点の高いヘッドで合わせたのがFW小林悠だった。
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「みんながしっかり運んできてくれて、決めるだけだったので。周りの選手に感謝したいなと思います」と言い、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)の第2節光州FC(韓国)戦(0-1)などでVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定によってゴールが取り消されていたこともあり、「また何か確認していたので、オフサイドかなとかいろいろ考えましたが、今回はゴールになって良かったです」と、続けた。
身長177センチの小林だが、ヘディングシュートの場面では相手DFにしっかりと競り勝った。「アキくん(家長)と大弥が崩してくれていたので、最後は自分が点を取れる場所に入っていこうと思っていました。普通に競ったら勝てないと思ったので、先に飛ぶことを意識して決められました。あの深い位置だったら、フワーっとしたボールが来るなと、経験とかそういうので予想していた通りのボールを大弥もくれたので良かったなと思います」と、同じく途中出場した2人にも感謝した。
16日にクラブに初のタイトルを含む、7タイトルをもたらした鬼木監督が今シーズン限りでの退任を発表。鬼木監督が川崎のコーチとして仕事を始めた2010年からプロのキャリアをスタートさせた小林は、鬼木監督が監督に就任した2017年に得点王と最優秀選手賞を受賞し、チームが初優勝を果たす原動力となった。自身のプロキャリアすべてを間近で見てきた「同期」の発表には、大きな衝撃を受けていたと明かした。
「本当に正直、一昨日、鬼さんの発表があって、何か力が入らないというか…。練習からあんまり自分の中で力が入らない感じで。今日も試合が始まる時に『自分が出て大丈夫かな?』っていうぐらい、力が入らないような感じだったんです。けれども、やっぱりピッチに立つ時にはしっかり勝つところだったりゴール決めるっていうところを意識して入って、試合が始まればある程度やれましたけど、本当にそれぐらい自分にとっては大きい存在だったんで。本当、今日ももう1点取って勝たせられればよかったなと、悔しい思いです。本当に『同期』というか、(小林の)プロ1年目で鬼さんもコーチで(川崎に)入って。監督になる前からお世話になりましたし、自分が本当に悔しい時とか、(試合に)出られない時にも練習に残って一緒にやってくれた。本当に長い月日を一緒に過ごせたので、やっぱり悲しさとかそういうものがありました」
退任を発表した際、鬼木監督は「誰かが責任を取らなきゃいけない」と、コメントしていたが、小林は強い自責の念に駆られていた。「もっと自分が今シーズン、ゴールを決めていれば違う展開になったのかなとか。自分自身がゴール数少なかったので。もっと勝利に貢献していれば、また違う流れになったのかなとか、いろいろ考えました」と明かした。
鬼木監督との最も強い思い出については「やっぱり初優勝(の時)。フロンターレっていうチームにタイトルをもたらしてくれたこともそうですし、僕個人としても得点王などの個人タイトルを取れたのは、やっぱり鬼さんが信頼して使い続けてくれたからだと思うので。鬼さんがいなかったら初優勝も、そういうものもなかったのかなと思います」と、あらためて感謝する。
試合後の記者会見で、鬼木監督は「悠に関しては、こういう時に(決めてくれる)というか。あとはやっぱり、その前の(ルヴァンカップの)新潟戦でもそうですけども、やはり最後、彼が数多くチャンスを作ったりシュートを打っていったりしていました。そういうところでいうと、最後の気持ちの部分なんていうのは、非常に見られる選手でした。本人にも言いましたが、悠がやってくれるかなと思いがあったので、本当に良かったです」と、目を細めた。
試合後、小林は鬼木監督から「やっぱり悠が決めてくれたな」と言葉をかけられたことを明かし、この時には感情が振り切れたという。「ゴールを決めて、試合後は鬼さんが『やっぱり悠が決めてくれたな』って言ってくれて……。これはちょっと堪えられなかったですけど、やっぱりもう1点取って勝たせたかったし、残りの試合、本当に鬼さんとやれる試合をしっかり噛み締めながら、ゴールとかそういう結果で見せられればなと思います」。
残りの試合、苦楽を共にしてきた「同期」と、これ以上の悔しさを残さないためにも、1つでも多くの喜びを共有するためにも、小林はゴールと勝利を目指し続ける。