川崎の名将へ“鬼木コール”&横断幕「嬉しい」 選手に伝えた思い「特別に頑張るとかはむしろ要らない」

今季限りでの退任が発表された鬼木達監督【写真:徳原隆元】
今季限りでの退任が発表された鬼木達監督【写真:徳原隆元】

退任発表後の最初のゲームに挑んだ鬼木監督

 川崎フロンターレは10月18日のJ1リーグ第34節でガンバ大阪と対戦し1-1で引き分けた。2017年からチームを率いる鬼木達監督が、今季限りの退任を発表してから最初のゲームであり、試合前の選手紹介の最後に鬼木監督の名前が呼ばれると、スタジアムの川崎サポーターからは大きな拍手が沸き起こった。

【注目】白熱するJリーグ、一部の試合を無料ライブ配信! 簡単登録ですぐ視聴できる「DAZN Freemium」はここから

 その後、選手たちが入場して鬼木監督もベンチに入ると、キックオフ直前には「俺たちは最後まで鬼木フロンターレとともに!」「鬼木はフロンターレの宝だ」などと書かれた横断幕が掲げられ、スタジアムは「鬼木フロンターレ」のコールに包まれた。

 試合後、FW小林悠が「本当に正直、一昨日、鬼さんの発表があって、何か力が入らないというか…。練習からあんまり自分の中で力が入らない感じで。今日も試合が始まる時に『自分が出て大丈夫かな?』っていうぐらい、力が入らないような感じだった」と明かしたように、チーム内には間違いなく動揺もあったのだろう。

 そんななかで前半7分には先制ゴールを許してしまう。それでも、後半23分に鬼木監督は動き、4人を同時交代させる。「やっぱり勢いのところ。2人を変えるよりは、一気に(4人変えた方が)メッセージとしては強いものになると思います。そこの活力というか、全員が一気にエネルギーを持てることと、分散せずにクオリティーが上がる。『そういうことなんだろうな』と、選手も把握すると思うので」と、フィールドプレーヤーのほぼ半分を一気に入れ替えた決断を明かした。そして、この時に出場した3人がゴールに絡む。MF家長昭博がロングボールを受けて左に展開。FW遠野大弥が仕掛けてクロスを送り、FW小林悠がヘディングでゴールを揺らして同点に追い付いた。

 記者会見で鬼木監督は「平日ナイター、なおかつ天候が良くないなかで、多くのサポーターの方に集まっていただけたことに本当に感謝しています。そういったなかで今日のゲームはホームでしたし、勝たなければいけないゲームだったと思います。選手にも言いましたが、やはりああいう早い時間帯の失点、一瞬の隙のところですね。そこは数試合続いていますので、そこは自分もそうですけれど、選手の方にもしっかり改善を求めたいと思っています。ただ最後にああいう形で同点にしましたが、彼らの質であれば、逆転までいきたかった。引き分けに納得はしていませんが、スタートの選手を含めて、全員の最後まであきらめない姿勢は伝わってきたので、とにかく次のゲームにつなげなければいけない」と、コメントした。

 試合前の等々力の雰囲気には、感じるものもあったと振り返る。「退任を発表してからこうやって試合前から非常に大きな声で、声援をいただいて、名前をコールしていただいて、非常に感謝しています。本当に個人としては嬉しい思いでピッチを眺めていました」と明かした。

 ただし、選手たちには自分の退任を意識せずに、これまでと変わらずに最高のパフォーマンスを出すことを求めたと、説明した。

「いろんな思いはありますけれども、ただやっぱり自分はもう勝つことに集中することが、もう今までもこれからも変わらない。その姿勢は選手にも伝えています。また今日のゲームにあたってと言いますか、そこに関しては自分の話を絡めたことはしていません。『特別に自分のために頑張るとかそういうものは、むしろ要らない』っていう話をしていて。『とにかく選手1人1人が輝くこと』と、(メンバーを)発表する時には話しています。『結局、みんなが輝くことがチームの結果についてくるから、そういう思いでやってほしい』という形で、今日の試合はいいと思いました」

 そして2017年にコーチから監督に昇格し、クラブに7つのタイトルをもたらしていた指揮官は残りの試合、チームに『常勝』の精神をしっかりと植え付けたい思いを続けた。

「今、勝率が5分なので。勝ち数、負け数、引き分けが(すべて11)なので、そこについて選手には話しています。去年8位で、現時点で10位だと思いますけど、やっぱり中位に甘んじてはいけないですし、負け慣れたり、中位のグループに慣れたりしてはいけない。だから、今日は絶対に勝たなきゃいけないという話はしています。それはクラブとしても、選手1人1人も、そこへのこだわりを持たないと成長しないから頑張ろうと」

 昨季は天皇杯を制したものの今シーズンは2試合ぶりの無冠となった川崎。チームを去ることになる鬼木監督は、勝利にこだわりながら、川崎でのキャリアを全うする。

page1 page2

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング