昌子が藤尾に声を「馬鹿馬鹿しいだろう」 ”追う立場”の町田に必要な「プラスアルファの力」【コラム】

キャプテンの昌子源が巻き返しを誓った【写真:(C) FCMZ】
キャプテンの昌子源が巻き返しを誓った【写真:(C) FCMZ】

町田は停滞気味なのか? 優勝への道は

 J1リーグ第33節で川崎フロンターレに敗れ、直近5試合で1勝2分2敗と町田ゼルビアの勢いはすっかり衰えてしまったように見える。チームは10月8日の練習を急きょ中止し、3日間のオフを選手に与えた。

 9日の練習からはスタートを春先と同じ時間帯に変更し、心機一転巻き返しを狙っている。キャプテンの昌子源が語った。

「もう過去には戻れないですし、連敗したことをしっかり受け止めています。僕たちはもう勝つしか道がないので、しっかり上に食らいついていくつもりです」

 オフを家族と過ごしてリフレッシュしたという昌子の表情は落ち着いていた。この状況を周囲はどう見ているのか。一つは「ここに来て町田は連敗し、緊張の糸が切れてもう浮上できないのではないか」というものだろう。

「そう見られてもおかしくない可能性はありますよね。ここ最近勝ててないし、なかなか点も取れてないというのもあるし。でもそれは、あくまで外野の意見と言いますか。逆にこのタイミングで連敗したからこそ(いい結果が出た)と言えるように、やっていきたいと思います。次の試合でどう転ぶかで、勝ったらこれがちょっといい話になりますから。これで連敗を恐れる必要もなくなったと思って、しっかり次に向けて勝っていきたいと思います」

 一方で、「優勝経験のないチームだから追いかけるほうが楽なのではないか」という見解もあるのではないだろうか。

「僕たちは最初第4節で首位になって、第15節から第28節まで首位を続けていたのですが、そのプレッシャーはずっと感じていましたし、難しさもありましたけれど、でもそれで追われる立場にいたことで成長もできたと思います。今はもう追いかける立場になっているので、次はついていく強さを経験していかないといけないと思います。それにJリーグは最終節で(首位が)ひっくり返ることが何度かありましたよね。それは間違いなく、追いかけているほうの強さがあるということだと思います」

 昌子は「Jリーグあるある、ですけれど」と言いながら「(Jリーグは)順位ほどどこも差がないじゃないですか。それに、それぞれの置かれた立場で出てくる力が違いますし。残留がかかった試合になれば現状で下にいるチームでも本来の強さやプラスアルファの力を出してくる。だから(諦めずに)僕たちも(上位から)離されないためにプラスアルファの力を出していかないといけないと思います」と続けた。

 それから昌子は謙虚にこんな言葉を口にした。

「去年、僕は鹿島で試合に出られなくて、言えば(町田は)そういう集団が集まったチームです。今年ここにそれぞれが強い気持ちを持って集まったわけで、このチームでもう1回自分の存在を示そうとみんな来ていると思います。悔しい思いをして集まっているので、そういうのをしっかりピッチで表現していければと思っています」

 そういうチームだったからこそできなかった部分の成長も感じている。

「最初はJ1のスピードについていけなくて、アフターチェックが多かったのですが、徐々に慣れてきて、球際でファイトできるシーンも増えてきたと思います。最初のころの印象でファウルが多いと見られていますけど」

 実際、Jリーグが公表している「反則ポイント」を見ると町田は11位。また警告数は16位だが、異議・遅延行為はFC東京、サンフレッチェ広島と並んで11位になっている。

 昌子は、黒田剛監督と金明輝コーチが選手に厳しく求めてくる分、キャプテンとして「俺たちはやったらできるよね」と優しく声をかけるようにしていると言う。そして川崎戦で、すぐ謝ったものの相手に肘打ちをしてしまった藤尾翔太に対しては「気をつけろ。あれで累積警告になって出場停止になると馬鹿馬鹿しいだろう」とアドバイスしていたことも明かした。

「落ちることを気にして次の試合を迎えるより、上に食らいついていこうと思って過ごした方が、チームとして間違いなくいいと思います」

 昌子の明るい性格がチームに好影響を与えているのも間違いない。そしてどこまでチームを引っ張っていけるか、昌子にはもう一つの勝負も待っている。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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