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豪華現役選手が“異例の直接指導” 「日本をGK大国に」東大サッカー部コーチの挑戦【インタビュー】
東京Vユース→桐蔭横浜大学を経て指導者の道へ…三浦和真氏のキャリアとGKP設立の背景
現在サッカー解説者として活躍する林陵平氏が前監督を務めるなど、先進的な取り組みでたびたび話題を呼ぶ東京大学運動会ア式蹴球部(体育会サッカー部。以下、東大ア式蹴球部)。そんなア式蹴球部で現在GKコーチを務める三浦和真氏が今、日本のGK育成に革新を起こそうとしている。それが「ゴールキーパープロジェクト(以下GKP)」だ。
その特徴はなんといってもプロジェクトメンバーの豪華さで、ポープ・ウィリアム(横浜F・マリノス)、高丘陽平(バンクーバー・ホワイトキャップス)、早川友基(鹿島アントラーズ)など現在もトップレベルで活躍するプロの現役GKが多数コーチとして名を連ね、活動に参加している。
そんな彼らが取り組むGKPとはいったいなんなのか。そしてGKPの代表を務める三浦和真氏がGKPに込める思いとはなんなのか。インタビューを行った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)
◇ ◇ ◇
三浦和真氏は1995年生まれの現在29歳。いとこの影響でサッカーをはじめ、地元のサッカーチームでキャリアをスタートさせた。その後、東京ヴェルディJr.ユースに入団。そのままユースに進み、大学では桐蔭横浜大学でプレーした。卒業後の現在は桐蔭横浜大学の職員を務める傍ら、ア式蹴球部、神奈川県立荏田高校サッカー部、DURO調布SC(小学生)と育成各年代でGKコーチを兼任しながら、GKPの代表も務めている。
GKPの設立は、そういった育成年代への指導を通して得た気づきがきっかけだったという。
「私が選手を引退してからも、同世代のGKたちとは交流があったので、オフシーズンのトレーニングに参加したり、シーズン中は実際に試合を見てアドバイスを行うなど、プロで活躍するGKたちを間近でサポートするというのは行っていました。
初めは今のように外部に広報などもしておらず、仲間内で次のシーズンに向けて黙々とトレーニングをするという感じだったのですが、大学生、高校生、小学生の指導にも関わるなかで、育成年代のうちからプロたちと一緒にプレーできる機会があったら、そしてプロから直接指導を受けられる機会があったらどれほど幸せだろうかということを考えるようになりました。実際に育成年代の子たちからもそういった要望の声は聞いていましたし、育成年代と現役のプロ選手との両方に関わっている自分なら実現できるのではないかと思い、GKPを設立するに至りました。
実はプロが育成年代に直接指導するという企画は、プロ側からも大変好評なんです。プロのみんなは毎日トレーニングして、練習が終わると動画で自分の映像を分析して、と自分のプレーに向き合うことが多く、いわばインプットだけを繰り返している様な状態です。なのでこういった育成年代への指導をできる機会は貴重なアウトプットの場にもなりますし、言語化することで自分自身のプレーも向上できる。しかも現役の今が一番体も動いて思いどおりに指導できる時期なので。まさにWin-Winの関係でした」
そうして設立されたGKPは現在、育成年代向けのゴールキーパークリニックを定期的に開催している。
「2022年に第1回のクリニックを行って、そこから現在まで定期的に開催しています。直近では私が普段GKコーチをしている東大ア式蹴球部と京都大学との定期戦『双青戦』の関連企画として、8月に京都でGKクリニックを開催しました。
私としては子どもたちが少しでも早く、小学生くらいの年齢でプロと接する機会を持つことが重要だと考えているので、小学生を対象にしたクリニックを開催することが多いです。『学ぶ』という言葉はもともと『真似る』という意味であったように、なるべく早い年代のうちに『こんなキーパーになりたい!』『こんなセーブがしたい!』と思ってもらえることが、将来的には日本のGKの底上げにつながると考えています」
「GK向けの練習会が、日本各地で開かれるように」…GKPが目指す姿とは?
そうして徐々に活動の幅を広げているGKPが最終的に目指すものはなんなのか。
「GK向けのスクールというのをもっともっと開催して、育成年代のGKたちがいろいろな選択肢を持てる状態を作りたいです。現状ではサッカースクールといえばフィールドプレーヤー向けのものが多く、GK向けのスクールは不足しています。スクールを開催する側のコーチも少ないので、子どもたちからすると『お手本が選べない』状態です。
たとえプロの選手から教わったとしても、もしかしたら自分には合わないこともあるだろうし、自分に合うコーチを見つけるためにも、GKスクール自体の数を増やしていくことが必要だと考えています。そしてできるだけ多くのプロ選手をコーチとして呼んで、子どもたちが自分に合ったロールモデルを見つけられるような環境を作りたいです。
そのためにも、GKPのメンバー全員、そしてもっともっと多くのプロ選手がGKスクールを開催するためのノウハウを知って、日本全国あちこちでGKスクールが開催されるような状況を作りたいですね。実際、早川選手だったり高丘選手は自分でもスクールを開催したいと言ってくれているので、そういった選手が今後さらに増えていくように、そしてそういった選手たちをサポートできるように、コツコツ頑張っていきたいです」
指導者として日本のGKの底上げに挑む三浦氏の活躍から今後も目を離せない。
(FOOTBALL ZONE編集部)