出番がなかった選手たちの本音「誰もできないから」 それでも森保監督が招集する訳

ここ数試合出番のない菅原由勢(写真中央)【写真:徳原隆元】
ここ数試合出番のない菅原由勢(写真中央)【写真:徳原隆元】

菅原や長友らが鼓舞する森保ジャパン

 森保一監督率いる日本代表は10月15日、ホームで行われた北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選オーストラリア戦に臨み、1-1で引き分けた。正念場の10月シリーズを1勝1分で終えた森保ジャパン。過酷なサウジアラビアでの遠征や、長距離移動などタフな代表ウィークを陰で支えたのは出番がなかった選手たち。そこには指揮官の招集の狙いもあった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 ホームのオーストラリア戦をドローで終えて、サウジアラビアのアウェーから始まった10月シリーズが終了した。結果は1勝1分。グループC内では2位オーストラリアと勝ち点5差のままで依然日本が独走状態だ。4戦を終えて無敗なのは最終予選の難しさからして上々だろう。この4戦を終えて悔しい思いをしている選手の1人がDF菅原由勢だ。

 今シーズンからイングランド1部サウサンプトンに移籍して定位置を確保。プレミアリーグの週間ベストイレブンにも選出された。森保ジャパンの第2次政権になってから常連組となり、スタートから5試合連続で先発。ただ、今年のアジアカップではなかなかダイナミックな持ち味を発揮できず、悔しい思いを喫した。6月に3バックをスタートさせてからは1戦目のミャンマー戦こそ先発したものの、その後1分も出場時間を得られていない。

 それでも、ピッチ上で声を出し、場を盛り上げてチームのために前向きな姿を見せ続けている。内心は複雑な胸中なはず。それを見せないのが菅原だ。

「僕がプレミアに行ったから代表に出られるっていう確約ももちろんないし、それがどこのクラブにいようが、そのときのパフォーマンスだったり、選手の調子だったり、もちろん森保監督も戦術がある中で、どういう選手をどう使って、というゲームプランを組み立てていくなかで、もちろん試合に出る、出ないという立場はありますけど、みんな凄くコンディションがいいし、試合に出たときに対するモチベーション、チームに貢献しようという気持ちだったり、自分自身の価値を証明しようという気持ちはもう誰1人も欠けていない。

 出ている、出ていないというところはもちろん悔しさを持ってなきゃ、選手としては駄目だと思いますけど、日本代表としてここに来ているわけだし、試合に出るために……というのもあると思いますけど、まずは日本の選手みんなが一つにならないと簡単じゃないのはわかっているので。本当にみんなが日本の勝利のためにやっていると思います」

長友佑都は練習から選手たちに声をかけ続けていた【写真:徳原隆元】
長友佑都は練習から選手たちに声をかけ続けていた【写真:徳原隆元】

 もう1人DF長友佑都もベンチ外が続いているなかで、精神的支柱となって若手を牽引している。復帰した3月の北朝鮮戦で1度ベンチ入りしただけで、6月以降は6戦連続でベンチ外。だが、選手と首脳陣の間に入り、チームにとっての細かいケアを怠らない。特に9月はDF望月ヘンリー海輝、10月にFW大橋祐紀やDF関根大輝ら初招集組に対して一番に声をかける。1人になる時間がないようにイジってキャラクターを即座に見出し、チームに溶け込ませる。その時間は合流時点でわずか5分にも満たない。長友のおかげで初招集組はたった5分でチームに馴染むことができるのだ。

「まず誰もが(そのような役割を)できないからこそ、僕はここにいると思っていますね。もちろん選手として試合に出たい気持ちも強いし、サウジ戦は自分が本当にピッチに立ったかのように日の丸、君が代を聞いてるときに身震いしたというか、やってやるぞっていう気持ちになったんでね。ピッチに立ちたいという気持ちはもちろん強いですけど、ただ僕の目標は次のワールドカップにある。まずそのためにはチームが勝たなきゃいけないし、ワールドカップに出場しなきゃいけない。このチームを勝たせなきゃいけない。それはどんな役割であっても、と思っているんで、自分の目標や夢を叶えるためにも、今はどんな立場になってもチームのために戦いたいなと思います」 

 その決意はチームに伝染する。「佑都くんがあれだけやっている」という姿勢は、若手に下を向かせる暇もないほど奮い立たせる要因となっている。

 長友の招集は森保監督がアジア杯以前から画策してきたことだった。若手を育てながらアジア杯の敗戦後、絶妙なタイミングでの招集だったと言える。そして、長友がいるからこそ“未来枠”の望月や関根、MF藤田譲瑠チマらパリ五輪世代も招集できる。指揮官自身は就任以降、“二軸”を持つ。「今の日本代表が勝つこと」と、「将来の日本代表が勝つこと」だ。招集メンバー、采配を含め、決断する時にはこの“二軸”を信念として持っているため、未来につながらないことはやらない。

 W杯本番に向けて、大事な“幹”は築きつつある。ここからはさらに積み上げ。全員の力が必要なことは間違いない。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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