森保Jに必要な「急所」を突く攻撃 代表OBが求める“決め事の追求”「最低限は必要」【見解】

(左から)板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹で3バックを形成【写真:徳原隆元】
(左から)板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹で3バックを形成【写真:徳原隆元】

【専門家の目|金田喜稔】3バックのバランスも肝「それを生かさない手はない」

 森保一監督が率いる日本代表(FIFAランキング16位)は10月15日、ホームで行われた2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第4戦でオーストラリア(同25位)と対戦し、1-1で引き分けた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、「ビルドアップで最低限の決め事は追求の必要があるだろう」と課題を挙げている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 日本はボールを保持しながらも崩し切れない時間が長く続き、後半13分にはDF谷口彰悟のオウンゴールで最終予選初の失点。その後、MF伊東純也、MF中村敬斗、MF鎌田大地らを続けて投入すると、同31分に途中出場の中村が鋭いクロスからオウンゴールを誘発し、1-1のドローで試合を終えた。

「オーストラリアは割り切った守備で勝ち点を拾おうと、非常に徹底していた。5-4-1と守備重視ながら、それでも引きすぎずコンパクトな陣形を常に意識し、数少ないチャンスをモノするという戦略だったのだろう。そういう意味では、途中まで相手の思惑どおりとも言える展開だった。日本はポゼッション率で圧倒していたし、守備への切り替えも素早く的確で、ピンチらしいピンチもなかった。ミスも重なり不運なオウンゴールで失点したが、劣勢の状況から追い付いたわけで、価値のある引き分けとも言える。もちろん日本側は誰しもが勝ちたかったゲームだとは思うが、こういう展開もあるのがサッカー。崩されたわけでもなく、下を向くようなゲームでは全くない。課題や物足りない部分はあったものの、悪いゲームでもなかったというのがフラットな評価」

 劣勢から巻き返した日本の戦いぶりに一定の評価を与えた金田氏は、課題として縦パスを入れるための“決め事の追求”を挙げている。

「前線のトライアングルを軸に、いかに縦パスを入れるか。それができなければ攻撃はどうしても単調になるし、相手の急所を突けない。それはこの試合で見て分かるとおりだ。もちろん密集していたから簡単ではないが、ビルドアップで最低限の決め事は追求の必要があるだろう。たとえ密集していても、縦パスを入れるための最低限の決め事があれば、より多彩な仕掛けが可能になるし、サイドの突破がより生きてくる」

 一方で3バックのバランスも課題の1つと分析する金田氏は、高いパス能力を備えたDF板倉滉やDF町田浩樹のポジショニングと攻撃参加に期待を寄せる。

「例えば前線やボランチで、ある程度決められた形のボールの受け方や動き方は必要だし、相手の布陣に合わせて3バック左右どちらか1人は積極的に持ち上がったり、高い位置を取るなど臨機応変さも必要だ。3バック左右の板倉か町田が、よりサイド寄りの高い位置にポジションを取って攻撃参加し、相手の陣形に揺さぶりをかければ、相手の陣形が崩れる可能性も高くなる。カウンターを強く警戒していたと思うが、チームの重心がうしろすぎた感は否めない。相手の1トップに対して、後方は2枚残っていれば十分対応できる。そのあたりの攻守バランスは今後の改善点。町田や板倉は、パスやドリブルの優れた能力も備えているだけに、それを生かさない手はない」
 
 さらに「実際の采配で行われたように、中村敬斗を左ウイングバック、三笘薫をシャドーに置いて左サイドを徹底攻略というのも選択肢で見事奏功した。別の変化を加えるならば…」と前置きしつつ、金田氏は続ける。

「3バックから4バックへのシステム変更も選択肢の1つだった。例えば菅原由勢を入れて4バックに変更し、チームの重心をより高く保ってサイドを押し上げ、両サイドを強化するなかで相手の陣形を広げるという戦法もあった」

 相手や状況に応じて臨機応変な“最適スタイル”を求める金田氏はオーストラリア戦を振り返りつつ、さまざまな可能性を考察していた。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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