森保監督は「安堵したに違いない」 豪州の対策に苦戦…あわや敗戦の原因を英記者指摘「容易ではなかった」【コラム】
同じ3バックのミラー対決は1-1のドロー決着となった
圧倒的な力を持つ日本代表に突如、衝撃が走った。谷口彰悟のらしくないクリアミスによってワールドカップ(W杯)アジア最終予選の素晴らしいスタートが台無しになるところだったが、終盤に投入された中村敬斗の活躍によって、サムライブルーはなんとか勝ち点1を手にした。
◇ ◇ ◇
森保一監督のチームは予選の最初の3試合で非常に魅力的かつ圧倒的な強さを見せてきた。しかし、オーストラリアは気迫にあふれ、日本に大きな試練をもたらした。それは選手個々のクオリティーによるものではなく、彼らの決して崩れない精神力によるものだった。
トニー・ポポヴィッチ監督の就任はサッカルーズに活力を与えた。グラハム・アーノルドが続投していれば、W杯への希望は薄くなっていたかもしれないが、新監督はチームに新しい息吹をもたらした。前監督はすでに燃料とアイディアを使い果たしていた。
そんなアーノルドの代わりにやってきたのは、チームを素早く組み立て、簡単には破られない組織を作り上げることで知られる男だった。ポポヴィッチのチームは決して華やかではないが、非常に組織的でめったに失点することがない。
日本が埼玉スタジアムで直面したのはまさにそのようなチームだった。連勝記録や無失点記録は言うまでもなく、無敗記録まであやうく途絶えるところだった。
4人のミッドフィールダーの後に5人のディフェンダーが並び、前線にはミッチェル・デュークが一人という布陣を敷いたオーストラリアの守備を崩すのは容易ではなかった。スピード、個の力、プレーの切り替えが重要だった。
また、守備での粘り強さや集中力も求められた。もしかすると、集中力の欠如が谷口のオウンゴールを招いた原因であったのかもしれない。
このゴールは危険なものだった。オーストラリアが持つ重要かつ具体的な目標を象徴するものだったからだ。サッカルーズがすでに示していた熱意にさらなる息吹を与えるものだった。
しかし、現在の日本代表の大きな強みは森保監督が持つベンチの選択肢の豊富さだ。誰が先発していたとしても、技術やエネルギーを武器に突破口を切り開くフレッシュな選手を投入することができ、疲労した相手を苦しめることができる。
今回は中村だったが、前田大然や伊東純也、浅野拓磨ら多くの選手がその役割を果たしてきた。フランスでプレーする中村は南野拓実や三笘薫にはなかったトリッキーさをもたらした。
コーナーキックはオーストラリアの0本に対し、9本も獲得するなど日本はボールと陣地を支配したとはいえ、広島でともにプレーしたポポヴィッチ監督との対戦で勝ち点1を手にし、森保監督は安堵していたに違いない。
日本は連勝と無失点記録を以外に失ったものはほとんどなく、依然として首位の座を揺るぎないものとしている。とはいえ、今回の結果により来月の戦いに向けて慢心することはないだろう。
(マイケル・チャーチ/Michael Church)
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。