豪州は「昔のほうが怖かった」 代表OBが日本の弱点指摘…肉弾戦は「4対6で負ける」【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】フィジカル面は「まだまだオーストラリアのほうが上」
森保一監督率いる日本代表は、10月15日に行われた北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第4節でオーストラリア代表と対戦し、ホームで1-1と引き分けた。フィジカル的に勝ると言われるライバルとの一戦、自身も対戦経験のある日本代表OB栗原勇蔵氏は「体格的にはまだまだオーストラリアのほうが上」との見解を示している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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キャプテンのMF遠藤航が体調不良でベンチ外となった一戦は、MF守田英正がキャプテンマークを巻いた。試合は日本が主導権を握り、両サイドから立て続けに猛攻を仕掛けるも、ゴール前にブロックを築くオーストラリアの牙城を崩し切るには至らない。
0-0で迎えた後半13分、右サイドを駆け上がったオーストラリアDFルイス・ミラーがゴール前に高速クロス。これに反応したDF谷口彰悟が痛恨のクリアミスを犯し、オウンゴールで先制点を献上してしまう。最終予選4試合目で初失点を喫することになったが、後半31分、左サイドをドリブル突破しペナルティーエリア内に侵入したMF中村敬斗の放り込んだクロスが相手DFキャメロン・バージェスのオウンゴールを誘発。同点に追い付くと、そのまま1-1で終了した。
オーストラリアは近年は恵まれた体格を生かしたフィジカル押しのスタイルではなく、技術や連係も取り入れたサッカースタイルになりつつある。それでも、身長2メートルを誇るDFハリー・スーターが日本の攻撃陣の前に立ちはだかり、1トップのFW上田綺世(身長182センチ)とは、その差18センチ。180センチを超える上田が小さく見えるほどで、屈強なプレーも目を引いた。
現役時代に日本代表の一員としてオーストラリア戦に3試合出場し、2012年6月12日に敵地で行われたブラジルW杯アジア最終予選第3戦のオーストラリア戦では先制ゴールも決めたOB栗原氏は「これまではスペースがあるからスピードに乗っちゃった状態で身体に触るところまで来させないで、突破し切る場面が多かった。でも、やっぱり体格的にはまだまだオーストラリアのほうが上。スペースがないなかで身体がぶつかり合うと、4対6くらいで負ける場面が多い。そういう意味ではコンパクトにしてバチバチ肉弾戦をできるようにした戦術が相手はハマった気がします」と、トニー・ポポヴィッチ監督の采配を評価した。
また、栗原氏は自身の経験を基に、「昔は日本とのレベルの差がほぼないなかで、オーストラリアはバンバンボールを蹴ってきて、ラグビーみたいなサッカーをしてきた。自分はそういうスタイルを得意としてきましたけど、それでもやっぱり分が悪いくらい強かった。そういうプレーヤー自体がオーストラリアも少なくはなってきているとは思いますけど、昔と変わらずああいうサッカーをしてきたほうが日本にとって嫌かもしれないですね。怖かったですから」と、2025年6月に予定されているW杯最終予選での再戦に向けても見解を述べている。
「オーストラリアは綺麗なサッカーしようとすると、どうしてもまだまだ日本には及ばないし、世界的に見ても中途半端な存在になってしまう。手堅く、フィジカルを生かしたサッカーをしてくると、日本に対してもいいゲームをするんだなと思いました。今後の対戦で今日みたいなサッカーをされたら、本当に気を付けないとやられてしまう可能性もある気がします」
今回はホームで勝ち点1を拾った森保ジャパンだが、オーストラリアはやはり侮れない相手だと改めて思い知らされるゲームだった。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。