日本代表の“贅沢な悩み” 久保、鎌田、南野…豪州戦も組み合わせ自由の最適解【コラム】
シャドーの位置で同選手を起用するかも注目ポイント
2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選4連勝のかかるオーストラリア戦(埼玉)が10月15日に迫ってきた。現地時間10日のサウジアラビア戦(ジッダ)の直後にチャーター便で帰国し、調整を続けていた日本代表。14日に主将MF遠藤航が体調不良で練習を欠席しており、欠場の可能性が高まっている。今回は、遠藤を除く26人で勝負の一戦に挑むことになりそうだ。
森保一監督がここまでの3戦のスタメンで入れ替えているのはシャドーのコンビだけ。9月の初戦・中国戦(埼玉)は南野拓実(ASモナコ)・久保建英(レアル・ソシエダ)で、続くバーレーン戦(リファー)と前回のサウジ戦は南野・鎌田大地(クリスタル・パレス)という組み合わせだった。
それ以外にも、バーレーン戦途中からの「鎌田・久保」「浅野拓磨(マジョルカ)・久保」、サウジ戦途中からの「三笘薫(ブライトン)・堂安律(フライブルク)」「中村敬斗(スタッド・ランス)・久保」という多彩なバリエーションも見られたが、基本的には南野を軸に久保か鎌田を並べるのがベースと考えていい。
そこで今回のオーストラリア戦を考えてみると、前回最終予選の修羅場を経験しており、前後左右と非常にいい連係連動を見せている南野を続けて頭から出したいところ。サウジ戦は45分で下がっており、フィジカル的には全く問題ないだろう。
しかしながら、気になるのは、サウジ戦でイエローカードを1枚もらっている点だ。11月シリーズがインドネシア(ジャカルタ)・中国(厦門)のアウェー2連戦で、実力的には格下であるものの、環境的な難しさを視野に入れると、南野を使えない状態は回避したいところ。今回はベンチに置いて、鎌田・久保で勝負するのもアリかもしれない。そのあたりの判断は指揮官の思惑次第だろう。
仮に鎌田・久保のコンビになった場合は、これまで通り、鎌田が「3人目のボランチ」として守田英正(スポルティング)や、もう一人の中盤(遠藤が欠場濃厚)のサポートに行き、時には鎌田とポジションを入れ替えるような仕事もこなすはず。そのうえで、久保は右ウイングバック(WB)の堂安と近い距離で絡みながらフィニッシュに関与するということになる。
10日のオーストラリア対中国戦を見る限りだと、オーストラリアのトーマス・デン(アルビレックス新潟)、ハリー・スーター(シェフィールド・ユナイテッド)、キー・ロウルズ(ハーツ)の3バックはギャップを突かれた時に脆さを露呈する。そのあたりは久保や堂安にとっては大いに狙いどころだ。
斜めのランを多用すれば、必ずスペースが生まれ、得点を奪えるはずだ。空中戦では相手に分があるのは間違いないが、その術中にハマらないように、日本は確実にボールを保持し、地上戦で敵をかく乱していけばいい。鎌田・久保のコンビなら、そのシナリオ通りのゲーム運びができる。大いに期待して良さそうだ。
南野を先発から出す場合はリスクもあるが…相手にとっては脅威になる
あえてリスクを冒して南野を先発から出す場合は、バーレーンやサウジ戦のいい流れを踏襲すべく、鎌田とスタートする形になるのではないか。この場合も鎌田・久保の時と同じバランスで、南野がフィニッシャーの役割を担うことになる。得点力という部分は3人の中で最も高いため、相手にとっては脅威になるに違いない。
「ギャップが空いた時の動き出しとか、タイミングと言うのは、僕はすごく自信を持っているし、チームメートにもそう伝えている。サウジ戦で(上田)綺世(フェイエノールト)が決定機を迎えた場面も(板倉)滉(ボルシアMG)からいいボールが来て、綺世も感じてくれていたので。ああいうプレーを増やしていければいい」と本人もコメントしていたが、自らがシュートを打つだけでなく、味方のスペースを作れるのも彼の賢さ。オーストラリアはそういった囮の動きに弱いと見られるため、積極的に出してほしいものだ。
もう1つの「南野・久保」のコンビも、いい相乗効果が生まれるのは中国戦ですでに確認済み。オーストラリア守備陣のギャップを突く攻撃という意味では、どちらもフィニッシャーになれるこのコンビが一番効果を発揮するのかもしれない。
南野が左に入れば、三笘といい距離感を探りながらチャンスメークができるし、三笘の局面打開に呼応して南野が得点する形も数多く作れそうだ。右の久保と堂安の関係性は前述の通り、計算できるし、久保と南野がポジションを変えながらプレーしても十分にイケる。流動性と得点への多彩なバリエーションを大いに発揮してくれるだろう。
いずれにしても、今の日本はシャドーが最大の得点源だと考えていい。ここ3試合を振り返っても、南野が2点、鎌田が2点、久保が1点を奪っていて、彼らのところでどれだけゴールチャンスが巡ってくるかが勝負の分かれ目になる。
欧州5大リーグで実績を残している面々が揃う日本
オーストラリアは日本と同じ3-4-2-1で挑んでくる公算が大で、各ポジションでの1対1の場面も多くなる。シャドーにしてみれば、相手のエイデン・オニール(スタンダール・リエージュ)とジャクソン・アーバイン(ザンクトパウリ)の両ボランチを上回れるかも大きなポイントになってくる。
ご存知の通り、南野はリーグ・アン、鎌田がプレミアリーグ、久保がリーガ・エスパニョーラという欧州5大リーグで実績を残している面々。欧州の選手より確実にタレント力があるのは間違いない。そこに堂安や三笘、中村が入っても同じ。今の日本のシャドーは世界の強豪国と比較しても見劣りしない選手層がある。そこは確かに自信を持っていい部分だ。
浮上の兆しを見せつつあるオーストラリア相手とは言え、特別な意識を抱く必要はない。これまで通りの積み重ねを攻守両面で発揮すれば、必ずゴール・アシストという目に見える結果を残せるはず。そういう意味で、今回もシャドーの面々に注目しつつ、オーストラリアとの重要マッチを見極めたいところである。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)
元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。