指揮官の真横で…中心選手が“苦い表情” 「日本は5点入れて勝て」と国民自虐、サウジが抱える闇

試合勘不足の影響が懸念されているサウジアラビア【写真:岩本太成】
試合勘不足の影響が懸念されているサウジアラビア【写真:岩本太成】

試合勘のなさ露呈、マンチーニ監督「現在は50、60%が試合に出ていない」

 サウジアラビア代表は現地時間10月10日、北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第3節で、日本代表と対戦して0-2で敗れた。ホームのジッダでは過去3戦全勝だったが、前半14分にMF鎌田大地に先制点を許すと、後半36分に追加点を奪われて万事休す。あっけない敗戦には、深刻な事情があるようだ。

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 前日会見での一幕。ロベルト・マンチーニ監督が「何度も言っているが、これは我々が抱えている唯一の問題だ」と報道陣に訴えかけた。「なぜなら、3年前にはサウジアラビア代表の全選手が試合に出場していたが、現在は50、60%が試合に出ていない」。国内リーグでの外国人選手の増加に警鐘を鳴らした。

 この発言を真横で聞き、一瞬だけ苦い表情を見せたのがMFアブドゥレラー・アル=マルキだ。というのも、いわゆる爆買いによって出場機会を失っている張本人だからだ。2022年W杯で2試合に先発出場し、アルゼンチン戦での歴史的な番狂わせにも貢献。広い視野で中盤を支配するサウジアラビアの心臓だった。

 しかし、所属するアル・ヒラルはFWネイマールらを爆買い。セルビア代表MFセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ、ポルトガル代表MFルベン・ネヴェスに定位置を奪われた。7月にアル・イテファクにレンタル移籍したが、今季からリーグの外国人枠を8人から10人に拡大されたことで、先発出場はゼロだ。

 日本戦では巧みなボール捌きで錆びついていないことを示したが、MF南野拓実とやり合うシーンも。イエローを貰っていた南野を退場に追い込もうと大袈裟の倒れる姿からは、焦りのようなものも感じられた。スタメンの中で所属クラブでレギュラーなのは3、4人だけと、終盤の失点に試合勘のなさも露呈した。

 試合後の会見では、マンチーニ監督が「このグループが始まる前から、恐らく日本がトップでオーストラリアと2位を争うと予想していた。そこに向かっていきたい」と発言。日本がアジアの中で頭一つ抜けているのは間違いないと思うが、死に物狂いで勝ち点1でも奪いにいくという覇気も感じられなかった。

 アジアの中でもサッカー熱の高いサウジアラビアでは、街に出ると向こうから声を掛けられることも多い。そこで試合の予想をお願いすると、「サウジアラビアに勝ってほしいけど……」とどこか自信なさげ。しまいには「日本は5点入れて勝て」と言い出すタクシーの運転手まで現れるなど不安が募っていた。

 最終予選は3試合を終えて1勝1敗1分の勝ち点4。オーストラリアと並んでグループCの3位につけている。今大会からアジア枠が4.5から8.5に拡大した影響で3、4位でもプレーオフに進めるが、アジアをリードしてきた強豪にしては物足りない。2034年W杯招致も狙っているが、この問題を解決できるのだろうか。

(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)



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