森保Jのサウジ戦が「完勝」と言えない理由 アジア杯の課題を一蹴…“ベスト”を捨て“ベター”へ
サウジアラビアに敵地で勝利して最終予選は無傷の3連勝
森保一監督が率いる日本代表(FIFAランキング16位)は10月10日、敵地で行われた2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第3戦でサウジアラビア(同56位)と対戦し、2-0で勝利を収めた。3戦未勝利の敵地で初めての白星。MF鎌田大地と途中出場のFW小川航基がゴールを挙げて、最終予選3連勝となった。第2戦のバーレーン戦(5-0)と同じスタメンを送り込み、“勝利の方程式”で完封勝利。鬼門のアウェーで示した強さはアジアカップの反省を経て急成長を遂げている。それでも、今回のサウジアラビア戦が“完勝”と言えない訳とは――。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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夜9時キックオフでも蒸し暑さが残るジッダ。9月のバーレーン戦に続き猛暑の敵地で森保ジャパンが真価を発揮した。相手は前節まで起用していた3バックではなく、4バックでスタート。それでも、ピッチ上の11人は動じることがなかった。前半14分、MF堂安律から逆サイドのMF三笘薫へ、MF守田英正が頭で落として詰めていたMF鎌田大地のゴールで先制に成功。前半終了間際には相手に押し込まれる時間帯もあったが、両ウイングバック、中盤、シャドーと連係して守り切ってハーフタイムを迎えた。
前半に警告を受けていたMF南野拓実がベンチに下がり、後半の頭からMF伊東純也が右ウイングバック(WB)へ。堂安がシャドーに入り、後半17分に鎌田に代わってMF前田大然が投入されてからは、三笘が左WBから堂安とシャドーのコンビを組んだ。新しいパターンを試して、後半36分には途中出場の伊東のクロスから小川が追加点。クローザーにMF久保建英、MF中村敬斗という豪華な布陣で2-0フィニッシュを迎えた。
特に目立っていたのが先発のシャドー南野とFW上田綺世、守田と鎌田の関係性など……。選手がそれぞれのポジションといい距離感を保ちつつ、連動性を高めていた。それはなぜか。最大の要因はとにかく想定することだ。今回は相手が4バックでアンカーを置く4-3-3システムで来る可能性も考慮して練習していた。そのうえで「この場合だったらどうする?」「こうきた場合は?」と多くの引き出しを用意しておく。準備するために話し合う時間が格段に増えた。
堂安はシャドーの南野と「僕からしたらボール持ったときにやっぱ近くにいてほしいというのは要求しましたし、拓実くんの良さが消えちゃうのもよくないので、そういう意味では僕が(外に)張りすぎずに(板倉)滉くんとの距離感をちょっと近めて、俺と(遠藤)航くんと拓実くんの三角関係をもっと距離感縮めてやらないと。バーレーン戦は左サイドが良かった。(鎌田)大地くん、(三笘)薫くん、モリくん(守田)。そこはやっぱ右サイドがちょっと停滞したんでそこはちょっと、距離感とか(を修正した)」と、かなり綿密にコミュニケーションを図って、課題を潰していった。
アジアカップでは相手にハマらなかった時にズルズルいったことが1つの敗因でもあった。先制後に押し込まれた展開から流れを変えることができなかった。だが、サウジアラビア戦のように相手に保持される時間帯があってもアッサリと先制したり、追加点を奪えるのが今のしたたかさにつながっている。
この日、守田は「もっとプレッシングしてハイプレスでもっと奪えたかもしれない。そこは正直わからなくて、でも気候とか、こういうアウェーの感じだったりとか、全部考慮した中での今日の内容と結果だと思うので、真摯に前向きにいい試合だったと受け止めますけどね。でも、ちょっとわからないです。もっとうまくできたかもしれないし」と、“ベスト”な戦い方ではなかったものの、“ベター”を選択して勝利に導けたその選択肢の多さには手応えを得ていた。そしてこれが、今後の伸びしろでもある。
アジア杯の敗戦があったから成長できた。守田は「僕が(イラン戦後に)言ったこともそうだし、より過去があって今があると思っているので、監督もすごくより話を聞いてくれるようになりましたし、間違いなくあれがあって今があると思う。今後より一層良くなっていくと思いますし、満足はできないというか。ポジション争いも凄いので、それに勝っていけるように頑張りたいなと思います」と話す。森保ジャパンが次のオーストラリア戦では何を見せてくれるのか。期待を抱かせる一戦になった。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)