25歳ストライカーが選外 3歳年上“遅咲き”大橋祐紀の抜擢から考える「日本サッカーの活性化」【前園真聖コラム】

初選出となった大橋祐紀【写真:Getty Images】
初選出となった大橋祐紀【写真:Getty Images】

初招集を“テスト”できる余裕も見られる

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)に向けて、かつてないほどの好スタートを見せた日本代表は、グループ内の強豪2チーム、サウジアラビアとオーストラリアとの試合を迎える。2022年カタールW杯のアジア最終予選では、すでに1敗を喫した状態でこの両国と対戦せねばならず、余裕のない戦いが続いた。そのときに比べると「余裕」がある選考だと元日本代表の前園真聖氏は言う。今回の前園氏の注目はどの選手なのか聞いた。(取材・構成=森雅史)

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 10月10日(日本時間11日)に行われるサウジアラビア戦、15日のオーストラリア戦に向けて発表されたメンバーを見て、まず感じたのは「すべてがうまくいっている」ということでした。9月のホーム・中国戦で7-0、アウェーのバーレーン戦で5-0と、これまでにないほどの素晴らしいスタートを切ったおかげで、日本は余裕を持った戦いができます。

 一番の好影響は、今後日本代表に入ってきてほしい、つまり即戦力とは言えないかもしれませんが育ってほしい、あるいは早く経験を積ませたいという選手たちをメンバーに入れられている部分です。

 9月に初招集した望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)、高井幸大(川崎フロンターレ)を再び招集できましたし、その高井が負傷したため代わりに呼んだのが関根大輝(柏レイソル)という、こちらも初めて代表に呼ばれる選手を追加できました。試合に登録できる23人よりも多い27人を招集しているということもあるのですが、もしももっと追い詰められていたら招集される選手は違ってきた可能性があります。

 また今回新たに大橋祐紀(ブラックバーン/イングランド)を呼んだのにも森保一監督の余裕を感じます。現在ヨーロッパで活躍する選手の中で、大橋は28歳と年齢が高いほうです。

 僕はもしかすると25歳の町野修斗(ホルシュタイン・キール/ドイツ)が選ばれるのではないかと思っていました。大橋も町野もともに今季4ゴール。となると、1部リーグでプレーし、若い町野を選ぶという選択でもおかしくなかったはずです。

 ですが、大橋を呼んだことについて森保監督はこんな説明をしていました。

「同じ力を持っているのであれば、若い選手を招集するということも考えられるかもしれません。彼がすでに28歳ということで、W杯を見据えたときに、なかなかこれまでやってきてなかったことかもしれませんが、そうでもないところ(年齢が上の選手)も我々見ているというところをいろんな選手に知っていただければ」

 こうやって間口が広いところを見せることで、日本サッカーはさらに活性化するのではないかと思います。また、大橋が日本代表入りした一番のきっかけは、僕はヨーロッパに行って活躍したからだと思っています。ですから、年齢に関係なくヨーロッパを目指し、そこで活躍することで代表の道が開けるということも国内組は意識したほうがいいでしょう。

 そして今回のメンバーの中で、僕が今回注目しているのは22歳の藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン/ベルギー)です。

パリ五輪で活躍した藤田譲瑠チマ【写真:早草紀子】
パリ五輪で活躍した藤田譲瑠チマ【写真:早草紀子】

 パリ五輪世代ではキャプテンとして活躍しました。ただし、その世代はもう若手ではありません。本当はどんどん代表に入ってきて欲しい年代の選手です。ですが今の日本代表は2チーム分つくれるほど選手層が厚くなっているのでなかなか割り込むのは難しいでしょう。それでも藤田の視野の広さ、戦術眼は今の代表選手にも劣りません。藤田にだけ見えている相手の穴もあります。

 あえて懸念材料を挙げるとすれば、スピードと守備の強度でしょう。藤田は自分がどこまでできるのか、練習からしっかり証明していかなければいけないはずです。

 もしも藤田が出るとしたら想定されるボランチのレギュラー、遠藤航(リバプール/イングランド)、守田英正(スポルディング/ポルトガル)はともに守備でコンビの相手を助けてあげられる選手。どちらかがいれば、中盤に新しい選手を入れるリスクは最小限になります。日本がリードし、点差を広げた場合にはぜひ藤田を投入して日本代表としての国際経験を積ませてあげてほしいと思います。

(前園真聖 / Maezono Masakiyo)

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前園真聖

まえぞの・まさきよ/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。

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