J2タレント「個人昇格」候補ベスト11 争奪戦勃発?…J1未経験ストライカーに海外移籍の予感【コラム】
J1に“個人昇格”しそうなタレントをベスト11形式で選出
J2も残り4節となり、自動昇格とプレーオフも見えてきている。昇格レースが熾烈を極めるなか、今シーズンのパフォーマンスからJ1に“個人昇格”しそうなタレントをベスト11形式で選出した。条件としてJ1未経験、もしくは、主力として定着した経験がない選手を対象とした。(文=河治良幸)
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GKは市川暉記(横浜FC)がナンバーワンだろう。昨シーズンはJ1で4試合に出場したが、後半戦はガンバ大阪に期限付き移籍していた。プロ8年目の今シーズンは開幕スタメンを掴むと、ハイボールの強さをベースに3バックの背後を力強く守ってリーグ最少失点のディフェンスを支える。もちろん首位の横浜FCはチームとして昇格する可能性が極めて高いが、そのままJ1の舞台で守護神を担う資質は十分だろう。
最終ラインは河野貴志(ブラウブリッツ秋田)、安藤智哉(大分トリニータ)、佐々木翔悟 (ジェフユナイテッド千葉)の3バックで構成した。河野は北九州で4シーズン過ごし、昨年から秋田で堅固なディフェンスの中核を務める。対人戦に強く、3得点を挙げているのも魅力だ。安藤はハイスケールな万能型のセンターバックで、サイズを生かした空中戦はもちろん、カバー範囲の広さが素晴らしい。
J1鹿島アントラーズのアカデミー出身である佐々木はいわてグルージャ盛岡を経て、千葉で3シーズン目。序盤戦こそベンチで過ごす時間は長かったが、主力の怪我などもあり、徐々に出番を増やすと夏場から後半戦にかけて、存在感を高めた。基本的な守備能力が高いだけでなく、左足は特筆に値する。セットプレーではキッカーとしても高性能であり、J1でも武器になりそうだ。千葉の選手としてJ1の舞台を踏めれば理想だが、左利きのセンターバックは希少であり、引く手数多になる可能性もある。
サイドハーフは右が豊田歩(ロアッソ熊本)、左は新保海鈴(レノファ山口FC)となった。豊田は左利きだが、中盤ならインサイドでもアウトサイドでもこなせるポリバレントなMFだ。前半戦はボランチがメインだったが、夏場は左サイド、最近は右サイドで起用されて、どのポジションでも高水準のパフォーマンスを見せている。もちろん武器は左足のパスで、彼もCK(コーナーキック)やFK(フリーキック)で相手ディフェンスに脅威を与えられる。
新保は4バックなら左サイドバックが主戦場となるが、攻め上がりのセンスが抜群で、左足クロスでのアシスト能力はJ2で1、2を争う。スピードに乗った状態からのマイナスクロスだけでなく、相手にマークされていても助走なくコンパクトに左足を振り抜き、危険なボールをゴール前のFWに合わせることができる。守備面に課題はあるものの、そろそろJ1の舞台で観たいタレントだ。
得点ランクトップ3に立つ日本人アタッカーたちのポテンシャルは必見
ボランチは小西雄大(モンテディオ山形)と山下優人(いわきFC)のコンビ。小西は中盤でのパスのつなぎが正確で、相手のプレッシャーをあまり苦にせず、周囲で前向きな選手にパスを捌ける。ボールを単独で奪うこともでき、ファーストパスをいきなりディフェンスの背後に通すことも。意外性のあるミドルシュートも魅力だ。
山下は7アシストという数字が物語るとおり、チャンスクエリエイトの能力とゴールに向かう意識が非常に高い。いわきの生え抜きだが、クラブが東北1部だった当初は契約社員としてプレーしていた。サイドバックなどもこなすポリバレントとして稼働しながら、次第に存在感を高めて、現在は押しも押されもせぬ“チームの心臓”にしてキャプテンに。個人昇格の資質は十分あるが、ここからプレーオフに食い込み、チームのJ1昇格を果たせるか。
アタッカーは矢村健(藤枝MYFC)、谷村海那(いわきFC)、小森飛絢(千葉)の3枚を選んだ。シンプルに得点ランキングの1、2、3位で、ストライカーの評価としては妥当だろう。15得点の矢村は小柄ながらパワーがあり、パンチ力のあるシュートでゴールネットを揺らす。絶妙な動き出しも必見だ。谷村はクロスからの決定力が最大の武器で、ゴール前の競り合いはJ1の猛者にも負けないはずだ。
リーグトップの22得点を奪う売り出し中の24歳小森はあらゆる形からゴールを狙える正真正銘のストライカーであり、今後の活躍次第ではJ1から海外リーグに飛躍していってもおかしくない。まずは昇格プレーオフから千葉をJ1に導くヒーローになれるか注目だ。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。