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前橋育英が5度目の正直 山田監督が「今年もここで」と思った直後の同点劇
悲願の初優勝まであと一勝
第93回全国高校サッカー選手権大会は10日、埼スタで準決勝2試合が行われた。第二試合では、初の決勝進出を目指す前橋育英(群馬県)と流通経大柏(千葉県)が対戦し、1-1でPK戦に突入。1人失敗した流通経大柏に対し、5人全員が成功した上州のタイガー軍団が5度目の挑戦で初の決勝進出を果たした。
試合開始から白熱した試合が展開されたが、前橋育英は後半27分に流通経大柏に先制を許した。
刻々と時間が進む中、前橋育英のベンチには「今年もここでやられるのか。何がダメなんだろう」と、頭の中で何度も反すうする指揮官がいた。
前橋育英の山田耕介監督は、83年に赴任して以来、同校を率いてきた。過去には、ヘルタ・ベルリンでプレーするMF細貝萌ら多くのプロ選手を輩出。故・松田直樹氏のDFとしての資質を見抜くなど、高校サッカー界の名将の一人だ。
だが、その名伯楽を持ってしても、越えられない壁があった。過去4度の4強入りを果たしながらも、選手権の決勝だけは遠かった。2年ぶり18回目の出場となる今大会は、U-19日本代表のMF鈴木徳真(3年)と、MF渡辺凌磨(3年)の二枚看板を擁し、悲願の初優勝を目指してきた。
しかし、またもその壁に阻まれるのかと、肩を落としかけた、そのときだった。
試合終了間際の後半45分、主将でもあるMF鈴木がゴール前のこぼれ球を拾うと、右足一閃(いっせん)。土壇場で試合を振り出しに戻すと、ベンチ前には人が集まり、歓喜の抱擁が繰り返された。その同点に追い付いた勢いでその後のPK戦も制した。
普段は「選手に好かれようとは思っていない。選手が伸びてくれれば良い」と語る厳しい指揮官だが、頼れる主将の一振りには「意地を見せてくれた。頼もしい。もう一試合頑張ってほしい」と目を細めた。
前橋育英は12日、新聖地・埼スタのピッチで星稜と激突する。悲願の群馬県勢初の選手権制覇まであと一勝と迫った。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web