「何分ある!?」「2分取る」 涙の宇佐美貴史、劇的弾生んだ主審とのやり取り…2Gで「主人公だと」

G大阪の宇佐美貴史【写真:徳原隆元】
G大阪の宇佐美貴史【写真:徳原隆元】

宇佐美は後半ATに2ゴールで逆転勝利に導いた

 ガンバ大阪は10月5日、J1リーグ第33節で北海道コンサドーレ札幌と対戦して2-1で劇的な逆転勝利を飾った。途中出場のFW宇佐美貴史が後半アディショナルタイムに2ゴール。感情を爆発させて、芝生に突っ伏したエースは涙をこらえきれなかった。自らを「主人公だと思います」と称え、チーム10試合ぶりの勝利を嚙みしめた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 これが宇佐美貴史。これがエース。これがG大阪が誇る至宝だ。宇佐美自身がPKを沈めて今季10ゴール目で同点としたのが後半49分。「あと何分ある!?」。背番号7はカタール人のアブドゥルハディ・アルルアイレ主審に問うた。「2分取る」。確信した。まだチャンスはあると。

 MF山田康太からボールを受けた宇佐美が1人をかわしてペナルティーエリアへ。相手DFが来る。「打つか、切り返すか、打つか、切り返すか」。切り返して右足を振り抜いた。G大阪サポーターの思いを突き刺すゴールが決まった。感情があふれ出た。涙も止まらなかった。

「抜くところまでは迷ったけど、打つか、切り返すかと言うせめぎ合いがあった。あの瞬間で5、6回は悩んでいましたし、最後の最後まで見た結果、これスライディングしてくるなというのが分かった。だから絶対に切り替えしかない、と。頭はめちゃくちゃ落ち着いている。でも心はすごく慌てている感じ」

 見極めた結果の選択。冷静だけど冷静でない宇佐美が勝利した瞬間だった。

 蘇った記憶がある。2016年5月13日に行われたジュビロ磐田戦。前半に先制を許したが、同終了間際にFWアデミウソンのゴールで追い付く。そして迎えた後半21分、当時の大黒柱MF遠藤保仁が勝ち越し弾を挙げた。冷静沈着な遠藤が珍しくゴール裏を煽り、昂る感情を抑えられなかった。当時のチームもなかなか白星が挙げられず苦しんでいた。

 もう1試合、2019年5月18日のセレッソ大阪戦、“大阪ダービー”だ。後半10分にMF倉田秋が弾丸右足ミドル弾を決めて勝利に導いた。

「ヤットさんが決めたゴールと秋くんがダービーで決めたゴール、今日自分が決めたゴールというのがすごく重なった。スタジアムの重い空気が弾ける瞬間というのを本当にリアルに肌で感じて。今までで一番感極まったかなと思います」

 5か月ぶりの途中出場。同じく途中からピッチに立った35歳の倉田と、32歳の宇佐美。「おじさん2人で頑張りましたね」と笑う。

 前半にはG大阪アカデミーの後輩である札幌FW白井陽斗が先制弾を挙げていた。

「主人公だったと思います。(白井に)ホンモンというものを見せてやろうと思いましたね。まだまだヒーローにはさせません。(白井も)持っていると思うけど。ただそれ以上に俺が持ち過ぎていたというだけです(笑)」

 可愛がっている後輩の前で先輩の姿を見せつけた。

 チームはこれで10戦ぶりの白星を飾った。長かったトンネルをようやく抜けた。宇佐美自身も今季11ゴールに乗せて、2015年以来9年ぶりの2桁得点を達成した。ただ満足はしない。苦しさの先にあるものを宇佐美はまだまだ探し続ける。

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