日本代表MF「外された理由は全くわからない」 無慈悲な大敗…痛感したスコットランドのレベル【コラム】

セルティックの旗手怜央【写真:Getty Images】
セルティックの旗手怜央【写真:Getty Images】

セルティックはドルトムントに7失点で大敗、MF旗手怜央が感じた力の差

 セルティックは意気揚々と敵地に乗り込んでいた。今季の開幕から自国リーグ、カップ戦、チャンピオンズリーグ(CL)に至るすべての試合で勝利。いまだ無敗のチームは自信を持って、昨季のCLファイナリストであるドルトムントに挑んでいたに違いない。

 しかし、待っていたのは無慈悲な結果だった。立ち上がりから勇敢にプレスをかけていくも、相手の巧みなパスワークによってボールを奪えず。バックラインの押し上げが緩かったこともあり、綺麗な縦パスが通るたびにピンチを迎えた。結局、前半だけで5失点。FW前田大然のゴールで1点を返したとはいえ、相手ゴールに近づく場面は両手で数えられるくらいだった。

 ベンチから戦いを見ていたMF旗手怜央は、ドイツの強豪チームとの確かな力の差を感じていた。

「シンプルに力負け。チームとしてやりたいことが全くできていなかった。自分たちが(狙って)突きたいところを相手は突かせなかった。それにあれだけ前からプレスを掛けているんだったら、後ろも裏を取られてでも前に出ていかないと。結局、全部収められて、タメを作られて、前にいかれている。そこをちゃんとやらないとスコットランドでは通用するけど、こういうところでは通用しない」

 旗手本人は週末の試合に引き続きベンチスタートを強いられていた。ここまでのパフォーマンスが悪かったわけではない。だからこそ「外された理由は全くわからない」とする中で、後半に出番が回ってきた時の考えはシンプルだった。

「出してくれた時間帯からやるしかない。外されるんだったらどうにかして結果を残すしかないと思っていた。自分に何ができるか。そこに自分はフォーカスしていた」

 実際、旗手は後半のセルティックに明らかな変化をもたらした。相手と駆け引きしながらいい立ち位置を取り、自身で作ったスペースにボールを運んでダイナミックな展開をする。タメを作って周りの動きを活性化させる。相手の足が前半より止まっていたのも確かだが、旗手のポジショニングを相手が嫌がっていたのも確かだった。

「外から見ていて中盤の選手たちがボールを受けられない、タメを作れないのが全てだと思っていた。まず自分がボールを触ればテンポは出るなと。そこはしっかりできたし、チャンスメークだったり、シュートも打てていた。結果は求めないといけないが、後半のほうが自分たちが意図したことをやりながらゴールに迫れるシーンがあった。僕はそれが仕事なので、そういう意味では自分の仕事はちゃんとやれていたと思う」

 わかりやすいデータとして、後半に入った旗手は半分の出場で22本のパスを記録している。前半に同ポジションで出場したパウロ・ベルナルドが9本、フル出場したアルネ・エンゲルスが36本だったことを考えると、いかに短い時間でボールに触っていたかを知ることができるだろう。現に会場で試合を見ていても贔屓目なしに唯一、ドルトムントを相手に中盤で戦えている選手だと感じた。

 途中出場の中でも存在感を発揮したパフォーマンスに、旗手も「前半と後半で明らかに(内容が)変わっているのは事実だし、そこをどう感じとってくれるかは向こう(監督)次第。出た時に自分のやるべきことはしっかりやらないといけないと思うし、僕的にはこういう展開の中でもしっかりできたと思う」と手応えを口に。一方で、7失点での大敗を受けて自国リーグと世界のレベルの差もひしひしと受け止めている。

「ドイツのトップ3に入るようなチームにこれだけの大差で負けているのは事実。そこに目を向けてしっかりやらないといけない。自国のリーグだと一本のパスでどうにかなってしまう部分がある中で、こういうところでは一本のパスで決まり切らない。それに自分たちが自国のリーグで速いサッカーをしているから通用するなんてことは思っていないし、このレベルではなかなか通用しないと思っている。

 もちろんカウンターのところなどは通用する部分があると思うけど、それを90分やり通すのは絶対に無理。そういう中で時間を作れる選手がいないといけないと思うし、自分はそこをしっかりやっていかないと。この先のことを考えても絶対に必要になってくると思うので、そういうところができていければいいなと思っています」

 試合後に話を聞いた際にはさっぱりした表情を見せていたが、試合終了のホイッスルを聞いたあと、誰よりも悔しそうな表情を浮かべていたのも彼だった。欧州最高峰の舞台を身を持って体験することで明確になってきた課題。今後、さらなるステップアップを遂げたり、日本代表で主力を務めていくために必要なことにフォーカスする旗手は、手応えと悔しさを同時に持ちながらドイツの地を後にした。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)

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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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