元日本代表も「去年と違う」 J2史上最多5万5598人…因縁の国立で示した“清水の進化”
横浜FCと引き分けで勝ち点1…次節にもJ1昇格が決まる可能性
因縁の地で進化した姿を見せた。J2首位の清水エスパルスは28日、国立競技場で横浜FCと対戦し、1-1のドローに持ち込んだ。勝ち点1を積み重ねて「72」とし、3位・Vファーレン長崎の結果次第で、次節にもJ1昇格が決まることに。昨季、目の前にまで迫っていたJ1昇格をプレーオフで逃した国立の地で、集結したJ2史上最多5万5598人の大観衆に、選手たちは逞しさを示してみせた。
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前半をスコアレスで折り返して迎えた後半、清水は先手を奪われた。開始から主導権を奪われると、11分にFWジョアン・パウロに押し込まれて先制点を献上。追いかける展開となり、劣勢に立たされた。
流れを変えたのは後半23分、一度に3人を入れ替えた選手交代だった。MF矢島慎也、DF北爪健吾、MF宮本航汰を一気に投入すると、横浜FCを押し返すことに成功。同29分にはDF原輝綺が持ち上げると、矢島、途中出場のMFカルリーニョス・ジュニオとつなぎ、走り込んできた原がシュート。GK市川暉記に阻まれたものの、こぼれ球を宮本が押し込んで同点に追いついた。
チーム最年長36歳の元日本代表MF乾貴士は「途中から出てきた選手がスイッチを入れてくれる。今日に関しても(宮本)航汰とか(矢島)慎也とかが入ってスイッチが入ったので、そういう選手が仕事をしてくれるっていうのが助かりますね。去年と違うのは多分そういうところだと思う」と口にした。劣勢に陥ってもそれを跳ね返すことができる“底力”が、昨年までの清水になかったものだ。
秋葉忠宏監督もチームの成長をこう語る。「間違いなく我慢強く、したたかに、勝負強くなったなっていう風に思います。しっかりと強いメンタリティを持って、じれずに、勝負強く、我慢強くやれるようになったっていうのは、去年からの一番の大きな進化だと思います」。我慢強さ、したたかさ、勝負強さ……。指揮官は何度も繰り返して、イレブンの変化を認めた。
昨季は第41節まで自動昇格圏の2位に位置しながら、最終節で水戸ホーリーホックと引き分けに終わり、勝ち点1差で4位に転落してJ1昇格プレーオフに回ることに。プレーオフ準決勝はモンテディオ山形と引き分けて決勝に駒を進めたものの、国立競技場で行われた東京ヴェルディ(東京V)との決勝は1-1の引き分け。リーグ戦3位だった東京VにJ1昇格を奪われて、あと一歩のところで涙を流した。
指揮官は「去年は正直言うとメンタル的に少し弱く、脆い部分があって、自分たちから崩れるゲームが非常に多かったなっていう風に思います」と回顧する。今季は勝負強さをテーマに掲げ、練習量もかなり増やしてきたという。前節までは2試合連続で逆転勝利。「日常で常に手を抜かず100%でやるからこそ、この我慢強さとか、じれずに、勝負どころまで我慢が利くようなところになっている」。秋葉監督は日々の成果だと胸を張る。
昇格決定の可能性のある次節は、なんの因果か、昨季最終節で苦渋を舐めさせられた敵地での水戸戦。華々しくJ1昇格を決めるには、この上ない相手とも言える。「水戸さんどうこうというより、まずは自分たちに矢印を向けて、準備をしたい」と秋葉監督。J1昇格をその手に掴むまで、緩めることなく、突き進んでいく。