海外代表国の来日遠征に込められた思い「日本の環境見て」 “浦和の縁”がつないだ練習試合

三菱重工浦和レッズレディースとインドネシア女子代表が練習試合を実施【写真:轡田哲朗】
三菱重工浦和レッズレディースとインドネシア女子代表が練習試合を実施【写真:轡田哲朗】

インドネシア女子代表が浦和レッズレディースとトレーニングマッチ実施

 三菱重工浦和レッズレディースは、9月26日にインドネシア女子代表とトレーニングマッチを行った。3月からインドネシア女子代表を率いる望月聡監督は浦和レッズのJリーグ初ゴールを決めた元選手であり、指導者としては長年なでしこジャパンでもコーチを務めた。その縁もあり実現したマッチメイクだったが、望月監督は「ぜひ日本の環境を見て欲しかった」と日本遠征を行った理由を話した。

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 25日に来日したインドネシア女子代表チームは、20歳以下の若い世代の選手たちも帯同して10月半ばまで日本に滞在し、WEリーグを含むさまざまなカテゴリーのチームと合計7試合を実施予定。その後はオランダ、ヨルダンと渡り歩いて代表チームとの親善試合を行う、来月いっぱいまでの海外遠征を行うという。そうした長期遠征を行う理由の1つに、新型コロナウイルスの影響で国内リーグ戦がなくなってしまい、選手たちが日常的にプレーできる環境がないという事情もあるのだという。

 日本とインドネシア両国のサッカー協会に良好な関係があることもあり、3月から指揮を執っている望月監督は「インドネシアの環境を見て、ぜひ日本の環境を見て欲しかった」のだと話した。「日本では小さい頃から男女関係なくサッカーを楽しんでいる。いつでも、どこでも、誰でもサッカーができる環境を見てもらうことで、インドネシアの人たちにも『いいな、こういう環境を作りたいな』と感じてもらって行動を起こしてもらえたら」という思いがあったのだという。

 そして、自身の出身クラブであり同学年でかねてから親交のある楠瀬直木監督や、自身が指導者として関わったことのある田代久美子コーチの在籍する浦和に打診したところ、「電話したら、すぐにOKと」快諾されたという。

 試合自体は浦和が18-1で勝利する大差がついた。望月監督も「いきなり日本で一番強いチームとやって、コテンパンにやられるのは分かっていたけど、いい経験」と話し、「通用することは少なくても、どれだけ自分が通用するか、何が足りないか。戦ってみて分かることがあるから、本気になって、こうしよう、ああしようとのちの行動につながると思う。悔しさや歯がゆさ、何でこんなに点を取られるかという思いとともに良いものを学んでもらったと思う」と、その意義を話した。

新興国との対戦は「サッカーの世界にとっても大事なこと」

 大差がついたなかでも、インドネシア女子代表は懸命にうしろからパスをつないで前進することを試みていた。望月監督は「こちらから押し付けるのではなく、選手たちのやりたいことを聞いて、そのためにはどうやったらうまくできるかと考えさせる。指導者は、上司もそうだと思いますが、良い質問をしてあげることが大事だと思う」として、「やらされずに、自分たちでやることで取り組みも変わる。否定しないで、上手くなるために考えてもらうほうが前に進みやすいと思う」と、選手たちがやりたい方向性をあと押ししていると話した。

 リーグ戦の合間に対戦を受ける形になった浦和の楠瀬監督は「大事なことじゃないですか。まだサッカーが発展途上の国から来て、同級生でもありますけど、求めてくれるならやれることはやってあげなきゃと。自分たちにとっても大事な1週間だけど、選手も全員が大切なことだと理解して一生懸命やってくれた。チームにとっても、サッカーの世界にとっても大事なこと」と話す。

 プレータイムは調整されたが、MF柴田華絵やMF塩越柚歩らの主力もプレーした。一方で、トップ昇格1年目のMF竹内愛未が4得点するなど若手もアピールした。楠瀬監督は「チームで考えれば次の試合のスタメン競争がある。相手がちょっと格下でも好きなことをやるんじゃなく、チームプレーができるかなども見ている。全員が良かったとは言わないけど、手を抜いたりわがままだったりなプレーはなかった。それが相手への礼儀になる。インドネシアのチームにとっての目標になれるのは大事なこと。その役目を担えるのは幸せなことだと思う」と、対戦の意義を話した。

 インドネシアは男子代表がワールドカップ(W杯)アジア最終予選まで残るなど近年は充実を見せている。女子サッカーの環境が良いものになるためにも、望月監督が指揮する女子代表チームにとって未来につながる充実した日本、海外遠征になることが期待される。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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