町田が背負った“宿命” 世間批判も「気にせず進んで」…日本代表OBが主張「弱ければ相手にされない」【見解】

快進撃の町田に日本代表OBが見解【写真:(C) FCMZ】
快進撃の町田に日本代表OBが見解【写真:(C) FCMZ】

【専門家の目|栗原勇蔵】J1昇格初年度で優勝争い「勝っているから余計に批判される」

 FC町田ゼルビアは、J1昇格初年度ながら優勝争いを繰り広げる快進撃を見せている。上位の成績はもちろん、ロングスロー多投など独自のスタイルがゆえに矢面に立つことは少なくないが、日本代表OB栗原勇蔵氏は「勝っているから余計に批判される」と、周囲の雑音に惑わされる必要はないとの見解を示している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 昨季J2リーグを制し、クラブ史上初のJ1昇格を果たした町田は、ここまで31試合を消化して勝ち点59(17勝8分6敗)。勝ち点で並ぶサンフレッチェ広島に得失点差で劣るため2位だが、昇格初年度にJ1のリーグタイトルを手にするとなればリーグ史上初の快挙となる。

 町田は、激しい球際やロングスローを駆使する戦術が議論のテーマに挙がることも多い。また、天皇杯2回戦筑波大戦でPK戦の末に敗れ、J1リーグ第18節横浜F・マリノス戦後の記者会見で黒田剛監督が「FC町田ゼルビアは決して悪ではないですし、我々が正義であり、言いたいことは言う、良くないことは良くないと訴える」と語ったことに対しても厳しい目が向けられた。

 その後もFW藤尾翔太がPKの際にボールに水をかけることや、ロングスローの際にタオルでボールを拭く行為も話題となり、それだけ注目度が高いと言える。

“アンチ町田”の傾向は否めないが、日本代表OB栗原氏は、「綺麗なサッカーをして、優等生の発言をして、結果を出せば一番いいのかもしれないですけど、同じものは何1つないわけで、議論が起こるのは当たり前」と前置きしたうえで、「勝っているから余計に批判される。弱ければ誰にも相手にされないわけで、町田は相手にされないといけないくらいの結果を出している」と言葉を続ける。

「度が過ぎた非常識な言葉はもちろんダメ。でも、勝負の世界の中で、リップサービスではないですけど、盛り上がることをするのはそんなに悪いことではない。黒田監督は表に出ている人間。ちゃんと責任を持たないといけない立場で発言している。挑発的な発言にも聞こえますけど、そのフレーズだけ切り取られていることもある。チャレンジャーのつもりで戦っていて、周りの声に負けない気持ちを焚き付けている部分はあるはず。レフェリー批判とかはたまにどうかと思うことも正直ありますけど、それはほかの監督もしているし、それ以外は全く気にならない。ネットは誰だか分からない匿名の人が言っているだけ。もちろん正論の場合もありますけど、海外だったらいくらでもあるし、いちいちそこにフォーカスしていられない」

 現役18年間を横浜F・マリノス一筋で過ごし、現在は古巣のクラブシップ・キャプテンを務める栗原氏は、「人間的にダメな人なら、良くない評判も回ってくるし、監督就任の話も来ない。少なからず自分の周りでは、黒田監督の人間性を批判する声はない」と語る。

「言ってみれば、サッカーもエンタテインメントで、話題になることは人気の証。イメージが一度ついてしまった人は叩かれがち。発言の内容ではなく、好き嫌いで判断してモノを言う人は多い。勝負の世界の中では、勝つためにやっている。まずは結果を出して周りを黙らせ、地盤を固めてから“第2章”として上のサッカーを目指していこうとしているのかもしれない。J1に昇格して、補強も上手くいって、優勝争いをしている。運を含めて人と違うものを持っているというか、黒田監督はそういう星の下に生まれている気がします。気にせず前に進んでいってほしい」

 J1リーグも残り7試合。町田の初優勝の行方から目が離せない。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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