2戦13失点で「このままだとバラバラに」 J名門の危機、OBが守備崩壊の要因指摘【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】2戦合計13失点…「守備の意識が全体的に低くなっている」
横浜F・マリノスは9月17日のAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)のリーグステージ第1節光州FC戦で3-7と敗れると、続く9月22日に行われたJ1リーグ第31節でサンフレッチェ広島戦でも2-6と大敗を喫し、守備は崩壊状態に陥っている。クラブOBである元日本代表DF栗原勇蔵氏は、「この流れのまま行ってしまうと、バラバラになってしまう」と警鐘を鳴らしている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
◇ ◇ ◇
横浜FMは今年から元オーストラリア代表MFハリー・キューウェル氏が監督に就任したが、成績不振により7月15日付けで契約解除。ヘッドコーチのジョン・ハッチンソン氏が内部昇格する形で後任の座に就いた。
8月21日の天皇杯ラウンド16V・ファーレン長崎戦(3-2)、9月4日のルヴァンカップ準々決勝第1戦北海道コンサドーレ札幌戦(6-1)を含め、公式戦6勝1敗と復調したかに思われた。しかし、9月8日のルヴァンカップ準々決勝第2戦に1-3で敗れると、13日のリーグ第30節京都サンガF.C.戦(1-2)、17日のACLEリーグステージ第1節光州FC戦(3-7)、22日のリーグ第31節広島戦(2-6)と公式戦4連敗を喫した。
とりわけ、直近2試合は計13失点と守備が崩壊。現役時代に横浜FM一筋18年でプレーしたOBの元日本代表DF栗原氏は、「キューウェル監督から代わり、以前のアタッキング・フットボールを取り戻そうとするなかで、連勝もして調子は良かったですけど、最低限のことしか準備する時間がなく、継続できるほどの機能はしなかった。攻撃的なフットボールをやることに意識を取られすぎて、守備の意識が全体的に低くなっている気がします。極論を言うと、失点しても取り返せば、というサッカーですけど、とは言っても失点がこれだけ続くとイチから考え直さないといけない」と警鐘を鳴らす。
「サッカーは守備から入ろうという戦い方は定番。ただ、今のマリノスに関しては、上手くいかなかったからこそ攻撃から入ろうとなっているところがある。監督が代わった直後はみんな生き生きして、攻守の切り替えも早かったですけど、インテンシティーの高いサッカーに対して、体力的にもたなくなっている。いい時は圧倒的にポゼッションして攻めて攻めて、相手は守るだけ。『攻撃は最大の防御』みたいな感じでやっていたところが、今はあまりに安い失点が多すぎる」
キャプテンの喜田を中心にチーム内でまとまれるか
栗原氏は、GK陣を含めたチーム全体の連係にも課題があると指摘する。
「ポープ・ウィリアムが怪我などでコンディションが落ちて、飯倉(大樹)に代わったところで、公式戦の調子も上がった。ポープ、飯倉が使えない時に、白坂(楓馬)、寺門(陸)が出たりしましたけど、経験不足もあって上手くいかなかった。そして、今は台所事情的にコンディションが万全ではないポープを使うしかなく、ポープは『自分がやらなきゃ』という責任感からか無駄なつなぎとか連係ミスからピンチを招いてリズムが悪くなっている。チームとしてどういう風に戦おうか、全員が共有できていないように感じる」
監督交代の影響もあり、揺らいでしまった基盤を固め直す必要があると栗原氏は説く。
「(キャプテンの)喜田(拓也)を中心に、(チームの)中でまとまってやらないといけないですけど、統制が取れていない。ずっとチームがいい状態を保つのは難しいので、悪い時なりに何ができるか。中堅、ベテランが話し合ってアジャストしないといけない。ACLはまだ切り替えはできると思うけど、リーグ戦でもこの流れのままずるずる行ってしまうと、いろんなことがバラバラになってしまう。次の試合に向けてコミュニケーションを取ってチームが変わっていくことを期待しています」
9月28日にホームで行われるリーグ第32節FC東京戦、横浜FMは流れを変えるきっかけを掴めるだろうか。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。